2015.01.05 mon

2015年1月5日【新聞解説】日本の夢

2015年1月5日【新聞解説】日本の夢


【リグミの解説】

新年のテーマ
あけましておめでとうございます。
 
多くの人にとって仕事はじめとなる今日、新聞6紙が社説で取り上げたテーマを比較します。読売、朝日、産経が「経済」、毎日、日経、東京が「社会」です。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 日本経済再生 アベノミクスの真価問われる
  • 日本企業の内部留保(利益剰余金)は総額300兆円を超えている。経済規模を示す名目国内総生産(GDP)は、20年前と同水準だ。攻めの経営に転じ、「縮小均衡のワナ」を脱しないと、日本産業の競争力は失われかねない。
  • 日本の国債に対する信認が大きく揺らいでいるわけではないが、油断は禁物である。基礎的財政収支の黒字化は、財政健全化の最終目標ではない。膨らみ続ける巨額の債務残高を減少に転じ、財政破綻の危機を回避する。その決意を、首相は明確に示すべきである。
 
<朝日新聞> 日本経済の課題―暮らしを守る脱デフレに
  • 問題なのは、所得の格差が広がったことだ。かつて日本経済を支えた中間層が細り、低所得層が増えた。それが、日本経済のいまの姿である。デフレの悪循環を抜けるには、賃金の底上げによる所得増と、格差の是正が大きな役割を果たすはずだ。
  • これまでに中小企業7千社を訪ねたという法政大大学院の坂本光司教授(中小企業経営論)によると、景気の波にかかわらず黒字を続けている中小企業が1割程度あるという。坂本教授のいう「1割の企業」をいかに増やしていくか。この分野には、まだ取り組むべき課題がある。
 
<毎日新聞> 戦後70年・家族と社会 多様な暮らしの実現を
  • 戦後、個人の自由と平等を尊重する現憲法下で家父長制は廃止された。夫婦平等や長子相続の廃止なども改正民法に盛り込まれた。だが、家族の互助機能や結び付きを重視する権威主義家族の価値観は、今もさまざまな社会制度や日本人の意識に深く染み込んでいる。
  • 戦後70年で家族は大きく変わった。核家族や夫婦共働きが多数派になり、結婚しない生き方を選ぶ人もいる。多様な暮らしを求める時代になったのだ。制度という器に合わせるのではなく、個々の価値観を尊重する柔軟な政策こそが必要だ。
 
<日経新聞> 外国人の受け入れへ一段の工夫を
  • 人口減や少子高齢化が進む中で社会の活力を維持するためには、もっと海外から人に来てもらうことも大事になる。観光、留学、就職などで外国人の力を取り込むためには、企業など民のアイデアや行動力が欠かせない。国や自治体は民の創意工夫を妨げないよう、過剰な規制を緩和すべきだ。
  • 観光、留学、就職などで日本とかかわりを持つ人たちは、買い物などでお金を落としてくれるだけではない。長い目で見て、それぞれの国や地域と日本の懸け橋になる存在だ。大切に育てたい。
 
<産経新聞> 経済再生 日本型成長の再確立急げ 財政再建との両立が基盤だ
  • 足踏みしている景気を早急に回復軌道に戻し、力強く持続的な成長につなげられるか。日本経済は今、その岐路に立っている。消費税の再増税を先送りして得た時間を無駄にせず、確実に経済再生を果たす責務を、安倍晋三政権が負うのは論をまたない。
  • 同時に問われるのは、民間の底力だ。政府に頼るばかりでは、国力の基盤となる「強い経済」の実現は到底望めまい。足元の経済低迷に萎縮せず、長きにわたるデフレで染みついた縮み思考から完全に抜け出すことが肝要だ。日本型の新たな成長モデルを確立すべき時である。官民でその決意を新たにしたい。
 
<東京新聞> 年のはじめに考える 「悲しみ」分かち合う時
  • 社会保障制度は人々の生活の安定を図り、安心をもたらすものです。社会の連帯に基づく「分かち合い」の制度について、あらためて考えてみます。
  • 神野直彦東京大名誉教授は著書「『分かち合い』の経済学」で、スウェーデン語に社会サービスを意味する「オムソーリ」という言葉があるのを紹介しています。オムソーリの原義は「悲しみを分かち合う」ということで、次のように書いています。<人間は悲しみや優しさを「分かち合い」ながら生きてきた動物である。人間は孤独で生きることはできず、共同体を形成してこそ生存が可能となる。「分かち合い」によって、他者の生も可能となり、自己の生も可能となる>
 
日本の問題
社説の主張はそれぞれ違いますが、日本を少しでも良くしたいという思いでは一致しています。年頭にあたり、「日本の問題」がなにか、それぞれの分析や主張がありますので、詳しくは全文をお読みください。それぞれ参考になります。
 
同時に、「日本の可能性」や「日本の夢(ビジョン)」は何なのだろうと思いながら各紙を読み比べていました。経済を良くすることは大事です。おそらくこれがすべての基盤となります。経済が失速すると、あらゆる社会問題が一気に浮上します。だから経済だ。これは理解できます。しかし経済は目的ではありません。経済発展がすべての問題を解消するわけでないことは、日本の経済が一番好調だった高度成長期からバブルにかけての時期を振り返れば一目瞭然です。
 
日本の3大特徴
ヒントは、日本の社会や文化を特徴づけるものにあると思います。第1が「ものづくり」。丁寧な手仕事と最先端のテクノロジーの融合は、日本の最も得意とするところです。第2が「食文化」。これもものづくりに通じますが、手先が器用で舌が繊細な日本人は、旺盛な好奇心とあいまって世界の料理を取り込み、独自のジャンルをつぎつぎと生み出しています。
 
ここまでは定番メニューであり、それほど異論はないと思います。第3の特徴は、ふつうは「思いやり」や「おもてなしの心」が上がりそうです。日本に来た外国人観光客が日本のふつうの人々に接して感じるものも、このあたりだといいます。でもそれは相手を「客人」とみなした時であり、隣人として常時つきあう場合はまた違うのではないでしょうか。
 
世界と交流する日本
「日本の可能性」と「日本の問題」が交差するのは、実はこのあたりではないかと感じます。国を開くという発想。既得権に安住せず、困っている隣人を助ける気持ち。異なった人々、多様な価値観に触れると、好奇心が刺激され、学びと創意工夫が加速し、世間や社会が今よりももっと楽しく充実したところになる。便利にもなる。豊かにもなる。でも一番の報酬は、心が充実し、わくわくすることです。
 
閉じる安心感に対し、開く高揚感。人類が大昔、アフリカの大地を離れた根本理由は、おそらく未知の世界を見たいという好奇心と冒険心を満たすためだったのだと思います。長い長い旅の末、多様な血になった人々が、北から西から南から、日本列島に上陸し、今日の日本民族を形成しました。私たちのDNAの中には多様な価値が流れています。日本人というブレンドされた血が再び、世界へと旅する。また世界のさらに多様な人々が日本を訪れ、定住する人々も増える。
 
そして、豊かな「ものづくり」や「食文化」、そして「思いやりの心」が世界から日本に集まり、日本から世界に広がっていく。そんなダイナミックな「日本の夢」を見たいと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



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    http://www.asahi.com/articles/DA3S11535582.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 父の詔勅聞き「変わられた」 サイパン陥落 日光へ 天皇の島から 戦後70年・序章
    http://www.sankei.com/life/news/150105/lif1501050008-n1.html
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  3. 国保移管 3400億円支援 厚労省改革案 30年度、都道府県に
    http://www.sankei.com/life/news/150104/lif1501040024-n1.html

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 意見公募 遅い結果公表 
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015010590070850.html
  2. 命懸けの張り紙 覆う空気 悪しき平和なし
    http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015010502000065.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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