【リグミの解説】
全国学力調査
今年の小中学校の全国学力調査で、学校の教科の平均正答率を市区町村の教育委員会が公表した割合は、2%にとどまりました。全校の成績を公表した都道府県もありませんでした。本日の朝日の社説で、「学校別の数値の公表は各校の序列化につながりかねない」として、教委の慎重な姿勢を支持しています。いっぽう産経新聞は12/18の社説で、「『序列化』につながるなどとして公表をしぶる教委がほとんどだ。競争や評価を嫌い、結果責任をあいまいにする教育界の悪弊の表れである」と批判しています。両紙の特徴的な主張を比較します。
<朝日新聞> 全国学力調査―本来の趣旨を忘れずに
・ この調査の目的は、住民が各校の成績を知ることではない。文科省や教委、学校が学力の実態をつかみ、その向上に役立てることである。そもそも学校の成績が、教員の指導力を直接反映しているとは言い難い。保護者の年収や学歴、塾に通う子の割合などに左右されることは多くの研究で明らかだ。結果を読む側はそこを踏まえておくべきだろう。
・ 「学力向上に家庭や地域の協力を得るため、説明が必要だ」というなら、何も正答率にこだわる必要はない。順位づけを避けながら、各校の結果を伝える方法はないものか。どんな方法をとれば数値が独り歩きせず、しかも学校や保護者、住民に役立つか。自治体は知恵を絞ってほしい。文科省はよい例を集め、各教委が共有できるようにしてもらいたい。
<産経新聞> 学力テスト 競い合う効果に目向けよ
・ 教育現場で成績公表に対し慎重論が根強いが、学力テストは学習指導要領に基づいた授業の成果や課題を知るための基本的な出題であり、序列化や過度の競争を招くような試験ではない。比べてみなくては良さも欠点も分からない。積極的に公表し、授業の改善につなげるべきだ。むしろ大いに競い合って、成績の良い地域や学校に学ぶ効果にもっと目を向けるべきだ。
・ 保護者らからは、学校別の成績公表を求める声は強い。成績不振を保護者に率直に知らせることで、家庭教育と連携を図った学校もある。社会に出れば競争から目を背けてはいられない。教育界には保護者や地域社会の要望とかけ離れた意識や慣行がなお残っている。文科省は、悪平等をなくし意欲ある学校や教師の取り組みを促す施策を進めてもらいたい。
競争の功罪
競争がもたらす功罪が両紙の主張の違いに色濃く表れています。競争のプラス面を主張する産経は、「競争は向上心をもたらし成長を促す」という判断・価値観を前提にしています。いっぽう競争のマイナス面を懸念する朝日は、「(過度の)競争は序列化をもたらし、かえって向上心や成長を疎外する」という判断・価値観です。どちらも一面の真理を突いています。
そもそも競争は目的ではありません。何かを達成する上で、競争が人の動機づけとなり、がんばり創意工夫もするというのが競争の効用です。しかし競争は、それ自体が目的になる側面を常に秘めています。競争はその定義からして「ウィン・ルーズ」です。敗者がいなければ勝者が生まれないのが競争です。
自らの意志で参加する意義
克己心(自分に打ち勝つ心がけ)で勝利するケースと、他者を蹴落として勝つケースを、競争は区分しません。悪質なケースをルールと審判制度で排除することは可能ですが、ライバルの不調や欠場でも勝利は勝利です。「結果がすべて」というのが競争の本質です。敗者に再挑戦のチャンスがあるかどうか、そして勝者になれる可能性があるかも、競争を考える上で、大事なポイントです。
オリンピックの競技で金メダルを取れるのは全世界でひとりだけです。オリンピックに出場できる人も一握りです。その競技に命をかけて取り組んできている残りの大多数のアスリートは入り口で排除されています。競争の過酷さは、選別と序列化があからさまなことです。「それでも良し」とし、自らの意志で競技に参加するとき、競争がもたらす恩恵は絶大です。人はその克己の厳しい道のりで、勝っても負けても、かけがえのない体験をし、多くの学びを得ます。
競争原理を補完する社会の仕組み
いっぽう自らの意志とは関係なく、置かれた環境で強制的に競争を強いられるケースは趣を異にします。義務教育は、全員が学びを得る場です。そこでは「敗者にも学びがある」というロジックでは抜け落ちてしまうものがあります。向上心があり、競争を通して成長できる者が手にする果実と、そもそも何をどう学んでいいかわからず、動機づけされていない者が失うものとのバランスが悪くなる可能性があります。
克己心は人間の本性であり、健全な競争は私たちを成長させます。そこでは良きライバルとの出会いがあります。ライバルは生涯の友にもなりえる存在です。しかし、人生を豊かで奥深いものにするには、競争以外の要素も必要です。義務教育は人間の素養をお互いに学ぶ場です。競争に勝てる力量を持つ優秀な生徒が、正反対の立場の生徒に手を差し伸べるのが、競争原理を裏で支える社会のあり方を学ぶということです。これは学校間や地域間についても同じです。義務教育は、「ウィン・ウィン」を達成する仕掛けや思想が根底にあるべきです。
(文責:梅本龍夫)
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