【リグミの解説】
米 キューバと国交正常化交渉開始
アメリカのオバマ大統領は、貿易や渡航の制限を緩和して、国交正常化交渉を開始すると発表しました。1961年に国交を断絶し、半世紀以上継続してきた経済制裁政策を抜本的に転換するものです。本日の朝日、毎日、日経、産経、東京の5紙が社説を掲げています。特徴的な視点を比較します。
<朝日新聞> 米国とキューバ―正常化への流れ加速を
- 冷戦はとっくに過去のものとなり、世界は政治イデオロギーより経済優先の時代に移った。オバマ大統領が「時代遅れの政策を終わらせる」と述べたのは当然だ。国交回復は不可欠だ。むしろ、これまでの遅れを取り戻さなければならない。 双方とも小異にこだわらず、和解と関係正常化のモデルを世界に示してもらいたい。
<毎日新聞> 米・キューバ接近 意義深い発想の転換だ
- 世界にとって久々に明るい話題である。この演説でオバマ大統領はキューバを孤立させる「時代遅れの政策」を終わらせると述べた。「核兵器のない世界」演説を思い出させる、意義深い発想の転換である。両国の交渉にはローマ法王庁(バチカン)やカナダも一役買ったという。交渉を実らせた多国間の連携を評価したい。
<日経新聞> 米・キューバ接近がもたらす力学の変化
- 実現すれば中南米のみならず、世界の政治力学に影響が及ぶ。アジアにどう跳ね返ってくるか、日本としても注視したい。米国の制裁が緩めば、これまで同国でのビジネスに二の足を踏んでいた日本企業も動きやすくなる。気になるのが、オバマ政権の決断がキューバと同じ独裁国家であり、米国と敵対する北朝鮮にどう映るかだ。北朝鮮が「オバマ政権は御しやすい」と思い込めば、米朝関係は一段と泥沼化するおそれがある。
<産経新聞> 米キューバ雪解け 「自由と民主」につなげよ
- 断交から半世紀余り、冷戦構造の崩壊から四半世紀後の歴史的転換点である。節目の交渉を、なお共産党の一党独裁下にあるキューバの民主化、経済の自由化につながるものにしてもらいたい。交渉は、「民主主義や人権」という価値観を、段階的にせよ相手に受け入れさせるものでなくてはなるまい。くれぐれも、共産党体制を利して延命させただけとならないように願いたい。
<東京新聞> 米キューバ関係 正常化への好機逃すな
- 冷戦の「負の遺産」を払拭する意欲は評価される。原油供給でカストロ体制を支援したチャベス・ベネズエラ大統領(故人)やアハマディネジャド・イラン政権はすでにない。グローバル化が進むなか中国、ロシアなどが中南米経済圏をにらみキューバとの関係を強化、中南米諸国からも米制裁への反発が強まっていた。テロの性質も一変した。政策転換はこうした動きに迫られての決断だったろう。
キューバ危機
米国とキューバといえば、世界を揺るがせた1962年のキューバ危機が思い出されます。
キューバ革命で親米であったキューバのバティスタ政権を倒したフィデル・カストロは、経済援助を求めて訪米しました。しかし米国の敵対的な態度に怒ったカストロはソ連に接近。ソ連は核兵器を持ち込みました。まさに米国の喉元に突き刺さる刃(やいば)のように。
当時の緊迫した状況を今理解することはむつかしいものがあります。カストロ首相はソ連のフルシチョフ首相に米国への核攻撃を求めたと言われます。米軍の中にもケネディ大統領に核戦争を進言する者がいました。フルシチョフもケネディも、核戦争は何としても回避したいというのが本音でした。でもお互いの本音を確かめ合う方法はありません。
危機回避
どうやって危機は回避されたのか。真実をつまびらかにするほど私には歴史の知識がありませんが、世に流布する情報では、ケネディが教会に行ったあと緊急テレビ演説をするとの情報を得たフルシチョフがぎりぎりのタイミングで核兵器撤去を先に発表したということです。ケネディがもし最後通牒を発表したら。その恐怖がフルシチョフを動かしたとする説です。いっぽうケネディも、予定されたテレビ演説は海上封鎖の宣言のみで、ぎりぎりのところで踏みとどまろうとしていたと言われます。
米ソ両国は、このあと「ホットライン」(緊急連絡用の直通電話)を設けました。敵対する相手であっても、コミュニケーションを絶たない。憶測や思惑、あるいはプライドとメンツ、さらには議会や世論が好戦的な方向に傾斜していたら、どうなっていたか。あのとき世界中がかたずを飲んで両核大国の動静を見守っていました。核兵器を使用する第三次世界大戦がもし勃発していたら収拾不能な事態になっていたでしょう。
対話をあきらめない
キューバ危機は現代史最大のターニングポイントであったと思います。敵対する相手とも、いや敵対し冷たい関係にあるからこそ、対話を欠かさない。仲が良いからコミュニケーションを欠かさないというのは当たり前のことであり、苦労がありません。意見が合わず、利害が対立する相手だからこそ、尊敬と信頼を醸成する努力を怠らない。それがキューバ危機の教訓であったと思います。
とはいえ、米国とキューバの国交断絶は半世紀に及びました。国交断絶は国家と国家の正常な関係がないということです。片肺で息も絶え絶えになりながら、かろうじて対話を続けていた国同士が、ようやくまともにコミュニケーションを図るのが国交回復です。それは友好関係ではありませんが、核戦争のような「ルーズ・ルーズ」から冷戦時の「ウィン・ルーズ」のつばぜり合いを経て、世界のつながりが強まる中で「ウィン・ウィン」をめざす入口に立ったことを意味します。両国の政治家の見識に期待をします。
(文責:梅本龍夫)
- 米「キューバ孤立化」転換 国務長官、訪問に意欲 国交正常化交渉
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- STAP「存在せず」濃厚 検証、前倒し終了 小保方氏・理研
http://www.asahi.com/articles/DA3S11514570.html - 秘密裏交渉、1年半 米・キューバ ローマ法王が仲介
http://www.asahi.com/articles/DA3S11514562.html - 50年後 1億人を確保するには 出生率「2.07が必須条件」
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- 大学新入試:民間に委託 作問・採点など
http://mainichi.jp/edu/news/20141219k0000m040136000c.html - 「敵対から対話」へ オバマ外交実績作り
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http://mainichi.jp/shimen/news/20141219ddm001040183000c.html
(毎日jp http://mainichi.jp/)
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http://www.nikkei.com/article/DGKKZO81097030Z11C14A2MM8000/ - トヨタ系シート事業統合 米2強に対抗
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC18H0Y_Y4A211C1MM8000/
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- テレワーク、地方に人材移転
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000075-san-bus_all - 米大統領「キューバ孤立化失敗」
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014121990070212.html - 「次善の策」の選択も 一強時代を考える
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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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