【リグミの解説】
昨日の各紙の社説は衆院選の「勝者」を取り上げ期待や注文を指摘するものでした。本日は「敗者」を取り上げています。朝日、毎日、産経、東京の4紙が民主党の敗因分析と今後について解説しています。特徴的な主張を比較します。
<朝日新聞> 民主党の再生 存在意義を問い直せ
・ 不意打ちのような解散だったとはいえ、選挙への準備を怠ってきた執行部の責任は重い。党全体が2年という期間を空費してきたとしか言いようがない。295の小選挙区のうち、民主党候補が不在だったのは117選挙区にのぼる。有権者に選択肢すら示せなかったのだ。
・ 信頼を取り戻すには、民主党という政党の確かな立脚点が不可欠だ。たとえば経済政策。富が滴り落ちるのを待つトリクルダウンか、暮らしの底上げをはかるボトムアップか――。民主党は、後者の具体策を着実につくってゆくべきだろう。アベノミクスが行き詰まった時の対案がなければ野党第1党の責任を果たすことにはならない。
<毎日新聞> 連敗・民主党 なすべきことは明白だ
・ 野党第1党の党首が落選するという異例の事態が今回の衆院選結果を象徴していよう。今回、有権者は自民・公明政権を選択したが、この政権が行き詰まった場合には、これに代わって受け皿となり得る別の政党が必要だと考えている国民は依然、少なくないだろう。それは必ずしも民主党でなくても構わない。
・ 今回の大きな敗因は、そもそも定数の半数に満たない200人足らずの候補者しか擁立できず、政権奪回の意欲さえ見せられなかったことだ。前回の衆院選後、何をしていたのか、あきれた人も多かろう。風頼みではなく、地道に候補者を発掘して育成していく活動が必要だ。これもかねて指摘されてきたが、地方組織や一般の市民を巻き込んだサポーター組織の強化も急務だ。
<産経新聞> 海江田代表辞任 後継選ぶ前に政策論議を
・ 単なる「アンチ自民」ではなく、与党と国家観を論じ、建設的な対案を提示する。それができる政党に変貌しなければ、再生は望めまい。政権による「暴走」の一言で片付け、自らは経済成長や安全保障体制を強固にする具体策を示さない。そのような姿勢こそ、受け皿として期待を集められない原因であるという視点が欠けている。
・ 日本を危機に陥れた民主党による3年余の失政を、有権者はまだ許していない。そこには、民主党が変わらないことへの怒りも加わっているのではないか。巨大与党に対抗するには、決め手となる共通の理念、骨太な政策が不可欠だ。力による攻勢を強める中国への対処、憲法改正への明確な方針などを固めるところから再スタートしてもらいたい。
<東京新聞> 海江田民主代表辞任 解党的出直しの機会に
・ 安倍晋三自民党総裁(首相)が「アベノミクス解散」と名付けた今回の衆院選は、有権者には経済政策のみならず二年間の「安倍政治」を問う機会だった。同時に民主党を評価する選挙でもあった。民主党はどこまで政権担当時の「失政」を反省し、党再生に尽力したというのか。
・ 決定的に欠けていることがある。〇九年衆院選マニフェスト(政権公約)に反して消費税増税を決めたことへの反省だ。政権運営の力不足はもちろん、この裏切りが民主党への忌避感を増大させたことは否定し得まい。民意を顧みない増税決定を猛省することこそ、党再生への第一歩ではないか。
現実対応能力の差
自民党と民主党を分けるものは何か。それは「現実対応能力の差」であると思います。
自民党も民主党も、さまざまな考え方や主義主張をもった政治家の寄り合い所帯であることに変わりはありません。指揮命令系統がはっきりし、ピラミッド型の組織運営をする企業と違い、政党は一国一城の主が集うボランタリー・チェーンのようなものです。そこでは、さまざまな意見や利害の対立を調整し、バランスをとり、取引を成立させる「政治力」が問われます。この「政治力」に長けていたから、自民党は長期一党独裁体制を敷けたのだと思います。
それが2009年に民主党に政権を奪われました。自民党の危機感は大きなものがありました。バランス型の党運営をあらため、軸足を「右」に寄せ、党是をより鮮明に打ち出しました。同時に密室で発揮された「政治力」を、ネットを含めた広報マーケティング活動に振り、情報発信力のもっともある政党に生まれ変わりました。「現実対応能力の差」とは、危機にあって自らを構造改革できる能力であり、それはそのまま「政治力の差」につながります。民主党が決定的に弱い点です。
体育会と同好会
わかりやすく言えば、自民党は体育会系で民主党は同好会系です。体育会は競技に勝つことを至上命題とし、厳しい鍛錬を積み、組織の統制を取ります。いっぽう同好会はスポーツを楽しみたい人たちの寄り合い所帯であり、楽しければ続きますが、いやなことがあれば離れていく場です。同好会は、床屋談義として政治を語るにはふさわしい場所ですが、「政治力」は鍛えられません。
民主党は、国政における最大の同好会(野党第一党)というレベルでいいのか。二大政党制による日本の政治のらせん状の進化発展を生み出す一翼を担う気概はあるのか。民主党に、本気で戦い、本気で競技に勝つ気持ちがあるか否かは、わが国の未来図を左右するテーマです。毎日新聞が示唆するように、野党第一党が民主党でなければならない必然性はありません。大事なのは、自民党一強の構図を変える確固とした勢力を作ることです。
日本の政治力を高める
野党再編はおそらく答えではないでしょう。時間はかかるでしょうが、バランス型政治を捨てた自民党の中で、現政権と距離を置く政治集団が自民党を離脱し、民主党で考えの近い集団と合流するような大きな与野党再編成が必要だと思います。
私たちが必要としているのは、自民党か民主党か(野党第一党か)ではなく、「X」という価値観と「Y」という価値観の「違い」です。「X」と「Y」がスパークスすることで、「Z」を創り出す。そんなダイナミックな政治が必要です。そのためには「空気」に流されない社会の作り方の模索から始めないといけないかもしれません。
ことは民主党の再生という小さなテーマではありません。日本の社会全体が「敗者」とならないために、日本そのものの「政治力」を高める必要があります。力強い野党第一党の復活は、健全な政治環境の基本となるものです。民主党問題を解決することは、創造的な敗者復活のあり方を示す好機でもあります。敗者が立ち上がる時、何を手にしているか。長い道のりの先にあるものを示すのが政治のビジョンです。
(文責:梅本龍夫)
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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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