2014.12.08 mon

2014年12月08日【新聞解説】フォロワーがけん引する経済

2014年12月08日【新聞解説】フォロワーがけん引する経済


【リグミの解説】

トリクルダウン
衆院選の主要テーマは「経済」とされていますが、その主要命題は、「トリクルダウン仮説」の検証です。朝日の社説は「配分の偏り」を論じ、産経の社説は「東京と地方の偏り」を論じています。トリクルダウンが機能すれば解消する問題であり、機能しなければ構造化する問題です。両社説の特徴的な論点を比較します。
 
<朝日新聞> 衆院選 経済政策 配分の偏りをどうする
・ 安倍首相が強調する通り、雇用は増え、サラリーマン全体が受け取る賃金の総額も上向いた。企業収益は大きく伸び、株価は2倍に迫る。経済全体の「パイ」は確かに大きくなった。しかし、その「配分」は偏っている。大企業と中小企業、製造業とサービス業、輸出型と内需型。都市と地方、高所得者と低所得者……。配分の偏りをならし、より多くの国民に消費を促すことは、成長への原動力にもなる。
 
<産経新聞> 衆院選と地方政策 「東京集中」こそが論点だ
・ 東京圏では今後、高齢者が激増する。切実なのはビジネス優先、若者中心の街づくりをしてきたため、高齢者向けの医療機関や福祉施設が圧倒的に不足することだ。このままでは深刻な社会問題となることが避けられない。対策が後手に回れば、日本経済の牽引(けんいん)役としての「東京」の機能も損なわれかねない。各党は「国家的な危機」との認識を持つ必要がある。
 
トリクルダウン仮説は機能するか
両社説とも「トリクルダウン」という単語は使っていませんが、その是非が主要な前提になっています。朝日は「トリクルダウンは機能していない」という主張であり、産経は「トリクルダウンを機能させるために東京問題を解決せよ」という主張です。
 
国家規模の経済と、一企業のビジネス戦略は、質的にも量的にも大きく異なり、ほんらい比較して論じる意味はあまりないのだと思います。その前提であくまで雑談的なコメントとして、自分のビジネス体験をふりかえると、「トリクルダウン」は機能するケースと機能しないケースがあるというのが実感です。
 
機能した典型的なケースは、高級ブランドのマーケティング戦略でした。東京でもっともファッション感度の高いエリアのさらに一等地に1号店を構え、雑誌などのメディアに有効に露出し、有名人に使用してもらうなど、一連のマーケティング活動を展開。話題となりブランドの認知が高まったタイミングで、順番に地方都市の一等地に店舗展開していく。この一連の作業により、ブランドビジネスの「トリクルダウン」が生まれました。
 
いっぽう機能しなかったケースは、企業組織の人事制度でした。人間の集団はある程度大きくなると、上位1~2割、下位1~2割と、中間層6~8割の3層に分離します。「成果主義」を導入し、上位になれる者を若手などから抜擢し、下位の者を配置転換や降格などの対象とし、中間層のやる気を喚起し、組織全体の活性化を図る。おおざっぱに言うと、こうした組織人事制度を運用しましたが、結果的に効果は限定的で、反作用(副作用)の予想外の大きさに苦しみました。
 
日本のブランド力を高める
今回の衆院選は、いわゆる「アベノミクス」の中間評価という側面があります。「トリクルダウン」はまだ限定的だがこれから本格化する、というのが評価する立場であり、「トリクルダウン」は限定的なだけでなくこれから格差がより本格化する、というのが評価しない立場の主張であると思います。いずれがより「事実」を反映しているのでしょうか。
 
私のビジネス体験に即して言うと、「アベノミクス」は2つの大事な要素が不足ないし欠けています。ひとつは「ブランド力」です。「アベノミクス」というブランド商品(あるいはサービス)に憧れと共感を抱き、地方に進出してくれることを心待ちにする「ファン」があまりいません。ふたつめの問題は、上位1割(大企業や富裕層など)以外の人々(中間層と下位層)を肯定的に巻き込む発想や方法論がありません。
 
安倍政権や与党自民党・公明党に「地方」や「格差」への問題意識がないわけではないと思います。ただ優先順位がそこにないために、「東京」と「大企業」という旧来のブランドを復興し、「台頭する新富裕層」にアピールしようとしているように見えます。
 
経済の明るい未来は、日本に住むすべての人々が日本という国のブランドになることで、達成されるのではないでしょうか。「トリクルダウン」という上下の発想ではなく、地域やさまざまな人々の取り組みや価値観などの属性でセグメンテーションされるグループを、横断的につないでいくネットワークの発想の方が、時代のニーズに合っていると思います。
 
リーダーが上から目線でフォロワーを盲目的に従わせても、経済の力強い再生は期待できません。フォロワー自身が自覚的に再生活動に取組み、それをリーダーがサポートし奉仕する方向に発想を逆転すると、日本の未来の景色は随分と変化するでしょう。国民が主役となる日本ブランドの力強い創造。フォロワー(多数)主体の発想が、結果として経済力という地力をつけさせるのだと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



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(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



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