【リグミの解説】
「日本の手漉(てすき)和紙技術」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。本日の東京新聞が社説で解説をしています。
<東京新聞> 手漉き和紙 途切れぬ文化遺産に
・ 製紙は大陸伝来の技術とされ、日本書紀には、7世紀初頭、製法を知る僧侶が朝鮮半島から来たとの記録が残る。日本最古の紙とされるのは、奈良・正倉院に残る702年の美濃、筑前、豊前の戸籍用紙。つまり、1300年の歳月に耐えてきたのである。
・ 大陸から伝わった「溜(た)め漉き」技法から、やがて、独自の「流し漉き」が考案された。原料のコウゾ、ミツマタなどの長い繊維を均一に絡み合わせるため、ネリと呼ばれる植物性粘液を加えた紙材液を流し動かして漉き上げる技法である。熟練した手さばきを要するが、流し漉きにより、ごく薄く、しかも、非常に丈夫な和紙が作れるようになった。
・ 和紙は、文字や絵を伝える媒体としてばかりでなく、障子となり扇となって、日本の暮らしや文化の中に息づいてきた。薬品を使うことなく真っ白な紙を漉くためには、清らかな水が欠かせない。和紙の伝統は、日本の風土と深く結び付いてもいる。
・ 天然素材の手漉き和紙は、手間がかかる。効率が求められる産業の論理とは相いれないだろう。でも、文化の考え方は違う。
・ 他に類を見ない質の高さが認められたのである。その手漉きの伝統が途切れぬよう、人類の宝として守っていきたい。
人類史と紙
人類史を俯瞰すると、何が人間に変革をもたらしたかに自然に注目するようになります。
どうして人間は直立二足歩行に移行したのか。なぜ人類はアフリカの地を旅立ち、世界のすみずみまで広まっていったのか。言葉はいつ、どのようにして生まれたのか。火を使い始めたのはいつか。祭事はだれとの交信だったのか。歌、踊り、絵、彫刻が広まった背景は。そして、文字が発明され普及していくプロセス。
こうしたことはすべて、私たち人間の「集合的な魂の遍歴」とも呼ぶべき事柄ばかりです。そうした中で、「紙」の発明と普及は、決定的に重要な役割を果たしたと思います。
文字や絵を簡単に書き記せる「紙」。軽く丈夫で、持ち運びが楽で、保存も効く。紙は私たちの内面にあるもの、意識し、感じ、表現したいと欲するものを、外面化させてくれました。紙によって、人間の身体と一体化していた「魂」が、自由に浮遊できるようになったともいえます。芸術や哲学や思想などの文化も、技術と科学の進歩といった文明の諸相も、「紙」なしでは今日のように発展することはなかったでしょう。
日本の風土が生んだ和紙
その「紙」の中でも、「和紙」は、東京新聞の社説にあるように、独特の存在です。長い伝統があり、繊細な技術に基づき、また日本の気候風土を活かしたものでもあります。和紙は、文字や絵図を書き記すだけのものでなく、障子や襖(ふすま)など日本の建物のたいせつな部材にもなっています。和紙は近年、イタリアのフレスコ画などの修復にも役立てられているそうです(参照:朝日新聞DIGITAL:
人間を飛躍させる発明
人類史の俯瞰という意味では、「紙」の発明以上のインパクトがあったのが「印刷技術」です。手書きの段階では、人間の内面にあるものを外部化しても、その影響範囲は限定されていました。同じ文書や絵図を大量に複製できる印刷技術により、人間の内面にあるものは、自在に世界に拡散していけるようになりました。それは、「魂の飛翔」と呼んでも良いものです。
「印刷技術」に比肩できる人類史的なインパクトをもたらす技術革命が、21世紀の世界を席巻するインターネット化です。「紙」が口承(口伝え)を過去のものにし、つぎに「印刷」が手書きを過去のものにし、つづいて「ネット」が紙を過去のものにする。それが文明史的な流れです。しかし、文化の歴史という視点では、過去化されたものは、決してなくなりません。口承は、演劇、ライブ演奏、映画などで生き続け、手書きは絵画や書道やストリートアート(街の落書き)として発信され、紙は、とくに本という形で私たちの記憶を形あるものとして作品化してくれています。
文明と文化が交差する場
「手漉(てすき)和紙」は、ひたすら未来をめざす人類の文明史的な営みに対して、人間の身体性に根ざした魂の営みの繊細な手触りを思い出せてくれます。文化の多様性は、文明化の便利によって駆逐されそうになりながら、しぶとく生き残り、形を変えて発展していきます。「和紙」は、そのような人間の魂の営みの奥行きや広がりを象徴する「メディア」(媒体)であると思います。
一枚の和紙を前に黒い墨をすり、来年への思いを一筆で記す。それは、ひとりの個の小さな営みに過ぎないように見えても、営々として積み上げきた人類史のかけがえのないひとコマでもあります。技術文明が発展するほど、私たちは身体性を喪失していきます。しかし私たちの「魂」の健全性のためには、しっかりと身体に立脚する活動が不可欠です。メディアとしての「和紙」は、文明(人間の身体性の変容)と文化(人間の魂の進化)が交差する場を提供してくれている。そんな気がします。
(文責:梅本龍夫)
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