2014.11.26 wed

2014年11月26日【新聞解説】科目別成績表をつける

2014年11月26日【新聞解説】科目別成績表をつける


【リグミの解説】

自民党の選挙公約が発表されました。読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙が社説で解説しています。自民党は「アベノミクス」を争点にしていますが、経済政策以外で、国論を二分するテーマが実はたくさんあります。それらについて、各紙がどのような指摘をしているか、比較します。
 
<読売新聞> 自民党政権公約 「この道」の具体策が問われる
・ 電力の安定供給には、火力、原子力、再生可能エネルギーなどのバランスが取れた活用が望ましい。自民党は、最適な電源構成に関する議論を主導してもらいたい。重要なのは、平時から有事まで切れ目のない危機対処体制の構築だ。来年の通常国会への関連法案提出に向け、その必要性を国民にきちんと訴える必要がある。憲法改正については、具体的な改正点や手順に言及していないのは、物足りない。自民党は積極的に改正論議を深めるべきだ。
 
<朝日新聞> (衆院選)政権公約・自民―実績ばかり並べても
・ 有権者の賛否が分かれる課題には、簡単に言及しているだけだ。安全保障では「集団的自衛権」の言葉は使わず、「平時から切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備する」と触れた。原発再稼働では、相変わらず原子力規制委員会任せの書きぶりだ。首相は「アベノミクスは成功だった。今後も続けるから、将来のことはみな白紙委任しろ」とでもいうのだろうか。とうてい納得の得られるものではない。
 
<毎日新聞> 自民党公約 300項目列挙で何を問う
・ 経済以外の主要課題の多くは政策集に「全体のひとつ」として扱われた。国の針路を決める憲法改正について政策集は具体的条文にふれず「国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、(中略)憲法改正を目指します」と記した。よもやこの80字程度の記述をもって選挙結果次第で有権者からお墨付きが得られたと主張するわけではあるまい。
 
<日経新聞> 耳に心地よい話が並んだ自民の公約
・ 気になるのが経済政策以外への言及があまりに少ないことだ。自民党の党是ともいうべき憲法改正は末尾に4行だけ。しかも憲法改正案の国会提出について「国民の理解を得つつ」との縛りを付けた。外交・安保に「集団的自衛権」という単語は出てこない。国論を二分するようなテーマを争点にしたくないのだろうが、これは極端なやり方ではないか。
 
<東京新聞> 衆院選 自民党の公約 「この道」しかないのか
・ 争点は経済問題に限らない。原発の「活用」が堂々と記され、「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」という二年前の衆院選公約は、反古(ほご)にされている。集団的自衛権の行使容認に基づく安全保障法制整備も盛り込まれている。原発の再稼働同様、国民の多数が反対する政策だ。景気回復同様、「この道しかない」という硬直的な政治姿勢で、道を誤ることになっては困る。
 
国論を二分するテーマの成績表
「原子力エネルギー政策」「集団的自衛権」「憲法改正」。この3大テーマは、国論を二分する状況が続いています。「特定秘密保護法」にも多くの懸念の声が寄せられていますが、選挙でここを掘り下げ、政策の妥当性を判断していく流れができるでしょうか。
 
選挙は「政権の棚卸し」であり、国民が「成績表」をつける行為ですが、問題は、「科目別の評価」をできないことです。経済政策の「算数」はがんばっているが成長戦略があいまいで成果が出ていないので「3」、原発政策の「理科」は総合エネルギー政策という宿題ができていないので「2」…といった具合に、主要政策ごとに成績表をつけたいというのが、心ある有権者の思いではないでしょうか。
 
しかし、今の政治制度には、そのような込み入ったこと(面倒なこと)をする前提がありません。せいぜい新聞などの世論調査が代替的な役割を果たす程度です。だから政治家は、選挙結果を「オール・オア・ナッシング」でとらえがちです。いわゆる「白紙委任」の発想です。
 
語られないことを読み解く力が大事
マニフェストに項目を詳細に上げ、数値つきで約束をすると、それに縛られてしまう。だからあいまいで耳に心地よいフレーズだけをちりばめよう。もし、各党の選挙公約がそのような発想のものに逆戻りしているのだとしたら、たいへん残念です。
 
私たちがこれからの短い選挙期間ですべきこと。それは、選挙公約に書かれたことではなく、書かれていないことを読み解く読解力を磨くこと。政治家が街頭で訴えるフレーズではなく、政治家が口を濁す本音に耳を澄ますこと。そして、どのような政策を選択する必要があるか、自ら考えること。
 
私たち有権者は、自分たちだけでなく、次の世代と、その次の世代の人々が、しあわせに暮らせる国を作る責務を負っています。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 地方創生特区を創設 自民公約 アベノミクス推進
    http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news1/20141125-OYT1T50113.html
  2. 廃炉費 自由化後も転嫁 電気料 新規参入電力にも 政府検討
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141125-OYT1T50131.html
  3. 党内外に対抗勢力必要 視座14衆院選
    http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20141126-118-OYTPT50162/list_SERIALIZATION

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 受精卵検査 範囲拡大へ 学会倫理委 臨床研究案を了承
    http://www.asahi.com/articles/ASGCT52NDGCTULBJ019.html?ref=rss
  2. 自民「景気回復、地方に」衆院選公約 財政黒字化計画も
    http://www.asahi.com/articles/ASGCT42LBGCTUTFK00G.html
  3. 「女性活躍」本音聞きたい 問う2014衆院選
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11474834.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 経済実績を強調 自民、政権公約発表 296項目 2014衆院選
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20141126ddm001010168000c.html
  2. 日産婦倫理委 着床前検査 実地了承 流産繰り返す女性ら対象
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20141126ddm001040136000c.html
  3. 障害者虐待2280件 施設内が増加傾向 昨年度
    http://sp.mainichi.jp/shimen/news/m20141126ddm001040145000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 産学官、原発廃炉へ人材 東大・東電など協力 国が補助金
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ25HND_V21C14A1MM8000/
  2. アベノミクス継続訴え 自民公約 地方創生特区を創設
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H2Q_V21C14A1MM8000/
  3. 空き家削減、公益と両立 人口病に克つ 地方を創り直す
    http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80045530S4A121C1SHA000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 景気浮揚 敵は増税勢力 政権の是非を問う 衆院選2014
    http://www.sankei.com/politics/news/141126/plt1411260007-n1.html
  2. 国内持ち込み容認 政府、新協定で協力加速 豪軍 武器や装備
    http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20141126101.html
  3. 黒人射殺の警官不起訴 米ミズーリ州 市内で暴動、80人逮捕
    http://www.sankei.com/world/news/141126/wor1411260011-n1.html

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 3つの岐路 対立軸鮮明 自民「アベノミクス推進」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112602000127.html
  2. 全染色体検査を承認 産科婦人科学会委「命の選別」批判も
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014112501002176.html
  3. 走る化学工場20年かけ変身 時流の先へトヨタの系譜

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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