【リグミの解説】
本日の読売と毎日の社説で、民主党の衆院選向けの公約(マニフェスト)を批判しています。両紙の特徴的な主張を比較します。
<読売新聞> 民主党公約 与党への「対案」として十分か
・ 疑問なのは、「人への投資」の財政政策に、2009年衆院選で訴えた「コンクリートから人へ」の発想が残っていることだ。社会保障では、最低保障年金制度の創設を今回も掲げた。最低保障年金には大幅な増税が不可欠だ。党内に見直し論があるのに、財源問題を棚上げしたまま、看板政策に今なお固執しても、国民の幅広い支持は得られまい。
・ 全保障では、集団的自衛権の行使を限定容認する7月の新たな政府見解について、「立憲主義に反する」と撤回を求めている。だが、政府の新見解は、従来の見解とも一定の整合性を維持した合理的な範囲内の憲法解釈の変更であり、批判は的外れだろう。党公約は従来通り、「行使一般を容認する憲法の解釈変更は許さない」としただけで、行使容認の是非の判断は示さなかった。責任ある対応ではない。
<毎日新聞> 民主党公約 対案の肉付けが乏しい
・ 党勢回復の足がかりが見えない中で選挙を迎えた同党が緊張感のある論戦を挑めるかは選挙全体を左右する。格差是正は一つの対立軸だが、財政再建と成長戦略をどう実現していくかなどの肉付けに乏しい。さらに踏み込んだ説明を求めたい。
・ 集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更は立憲主義に反するとして撤回を求め、特定秘密保護法は施行延期を主張した。「安倍政治」全般を争点とする狙いがあるとみられる。だが、集団的自衛権そのものへの姿勢が「行使一般を容認する憲法解釈変更に反対」というあいまいな見解のままでは議論が深まらない。
公約なのか、口約なのか
毎日新聞は、民主党の政権時代の公約について、「民主党が政権を奪取した2009年衆院選の公約は財源措置の甘さが致命傷となり、実質崩壊した」と完結に記述しています。民主党が掲げた「マニフェスト政治」は時代の脚光を浴びましたが、できないことを記述し、記述していないこと(増税)を実行し、政権を3年で手放すことになりました。
いっぽう自民党もまた、2012年の衆院選に掲げた公約と違うことを実行し(TPPなど)、公約に掲げないことを次々と実行してきました(集団的自衛権、特定秘密保護法、原発再稼働など)。「公約」という言葉が持つ重みは、こと政治においては、「口約」(口約束)程度の響きしか持たないのかもしれません。
民主党の役割
民主党のほんらいの役割は、二大政党制の一翼を担うことにあります。日本の政治が「次」に向かうためには、一党独裁的な古い自民党型政治から、異なる二つの主要な主張・主義が議論を戦わせ、両者の中間点に現実的な落としどころを見つけ出していく対話的な政治への移行が必要であると思います。
民主党の公約について、読売と毎日が等しく批判していることは、「財源の裏付け」です。二大政党制を作り上げるための最低条件として、民主党は政権を再び担えるだけのリアリティーある政策を論じる義務があります。
経済格差と貧困
経済格差と貧困の問題は、日本の社会をじわじわと蝕んでいます。少子高齢化・人口減少社会において、格差と貧困を放置すると、社会の衰退を止められなくなる恐れがあります。民主党が唱える「分厚い中間層」という主張は、理念としては本質的なポイントを突いています。いわゆる「トリクルダウン仮説」では経済の活性化の恩恵が社会全体に浸透するには限界があり、格差と貧困の問題は深刻度を増す可能性があります。
しかし、「分厚い中間層」が地滑り的に消えつつあるのは、世界的傾向であると思います。これは一国の経済政策だけでは解決しないのかもしれません。テクノロジーの進展により、これからますます機械に奪われる仕事が増えると予測する専門家が増えています。それは、きわめて高付加価値な仕事をする一部の人々が「勝ち組」となり、残りの人々が「負け組」になる社会です。
フォロワーのために働くリーダー
ほんとうにそれでいいのか。一部のリーダー的存在がオセロの総取りをするようなゲームは、何かが間違っています。リーダーとはほんらい、フォロワーのために立ち上がり、フォロワーの幸福のために献身する存在です。政治家とは、そのようなリーダーの典型です。
フォロワーである国民の幸福の増大をどう作り出すのか。格差と貧困を放置せず、「風が吹けば桶屋がもうかる」のようなトリクルダウン仮説に依存せず、「分厚い中間層」の再生にどう取り組んでいくのか。「分厚い中間層」は、社会を安定させる要であり、どの政党が政権をとっても、避けて通れないテーマです。二大政党制に値する力量をもつ与野党から、骨太な議論が起きることを期待します。
(文責:梅本龍夫)
- 自民、定数削減を明記 衆院選政策集の骨子 省庁見直しも
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- 立候補予定 大幅減1047人 衆院選 野党間の調整進む
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- 集団的自衛権 争点に 民主、政権手法批判
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- 新車販売、新興国で減速 中・印・ブラジル 景気不安響く
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http://www.nikkei.com/article/DGKKZO80045540S4A121C1MM8000/
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- 世界奔走 折れた習主席 地球儀外交
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- 衆院わずか8.1%「女性議員もっと」市民団体、候補の政策チェック
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112502000135.html - 消えた「脱原発発依存」 安倍政治 2年を問う 岐路12.14衆院選
- 続く余震 復旧急ぐ 長野・白馬
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014112501001160.html
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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