【リグミの解説】
安倍晋三首相が衆院を解散することを表明しました。新聞6紙の社説の特徴的な主張を比較します。
<読売新聞> 衆院解散表明 安倍政治の信任が最大争点だ
・ あえて国民の審判を受け、勝利することで、政策遂行の推進力を獲得し、政治を前に進めようとする首相の決断に異論はない。そもそも「伝家の宝刀」と呼ばれる解散の判断は、首相の専権事項である。「常在戦場」の構えを怠り、選挙準備が遅れている野党が「党利党略」と首相を批判しても、説得力を持つまい。
<朝日新聞> 首相の増税先送り―「いきなり解散」の短絡
・ 首相は昨年の特定秘密保護法案の審議や今夏の集団的自衛権の容認をめぐる議論の過程では、国民の審判を仰ぐそぶりすら見せなかった。表現の自由や平和主義という憲法価値の根幹にかかわり、多くの国民が反対した問題であるにもかかわらずだ。国論を二分する争点は素通りし、有権者の耳にやさしい「負担増の先送り」で信を問う。政治には権力闘争の側面があるにせよ、あまりに都合のよい使い分けではないか。
<毎日新聞> 首相 解散を表明 争点は「安倍政治」だ
・ 新たに増税を求めるのならまだしも、すでに確定している増税の先送りを争点にすえるやり方は、増税への国民の忌避感に便乗しようとの思惑が感じられる。成熟した資本主義国の日本にとって、かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない。政治家の役割は、富の配分よりも、負担のあり方について国民的合意を形成する方に比重が移っている。
<日経新聞> アベノミクスに通信簿つける選挙
・ アベノミクスはうまくいっているのか。成否がはっきりしていれば結論を出すのは簡単だ。今回は途中段階での難しい判断になる。「アベノミクスに任せれば大丈夫」の一点張りの与党候補。こうすればよいがない野党候補。そんな政治家に国政は任せられない。多くの課題について安倍首相は野党よりも重い説明責任を負うべきだ。「民主党よりまし」などという安易な戦い方は封印してもらいたい。
<産経新聞> 首相解散表明 「安倍路線」の継続を問え 経済再生へ実りある論戦を
・ 野党は、集団的自衛権の行使容認の決定や秘密保護法の制定などをとらえ、安倍政権が民意を無視した政治を進めているなどと批判してきた。なぜ、それらの問題で解散を求めなかったのか。首相は米軍普天間飛行場の辺野古移設や憲法改正を引き続き目指す姿勢も明確に打ち出したうえで、国民の信任を得るべきだ。
<東京新聞> 衆院21日解散へ 「安倍政治」問う機会に
・ 増税先送りという「解散の大義」は政権側の言い分にすぎない。私たち有権者は大義に惑わされず、二年にわたる安倍政治を冷静に検証し、貴重な一票を投じたい。経営者寄りの政策は企業や富裕層を富ませたが、雇用者の平均年収や正規雇用者数は減り続け、経済格差は拡大している。経済弱者に冷たい雇用、社会保障政策も、消費活動を支える中間層を細らせた。個人消費に支えられる国内総生産(GDP)が落ち込むのは当然だ。
ほんとうの争点は何か
各紙社説の特徴的な引用部分だけでなく、できればリンクを開き、全文をご覧いただきたいと思います。私が引用した部分は、各紙を特徴づける「典型的な」(=ステレオタイプな)主張ともいえます。わかりやすいですが、それだけ見ると、新聞社の主張に「ラベル貼り」をして終わりとなりかねなせん。
各紙の全文を読むと、実は今回の衆院解散はたいへんむつかしい判断を迫られているものであることが実感されてきます。政権は、「アベノミクス」を争点としていますが、少なくとも、わが国には次のような諸問題が山積しています。
・ 「財政再建と社会保障の充実」
・ 「外交による平和と安定と武力を前提とした国家の安全保障の確保」
・ 「特定秘密保護法と情報開示の政策推進」
・ 「エネルギーの全体政策と原発の位置づけ(廃炉と廃棄物の最終処理法を含む)」
・ 「少子高齢化と人口減少問題および地方の衰退・消滅の危機」
・ 「現憲法の位置づけと改正の是非(国家立脚の基本軸の判断)」
どの政党が与党になっても、誰が首相になっても、簡単には解決しない大難問ばかりです。一言でいえば、「持続可能な社会(サステイナビリティー)」が問われています。
衆議院議員をめざす政治家(候補)は、何を実現したいのか。私たち国民一人ひとりは自分たちの国家に何を求めるのか。
政治家を含む国民(大人1億人)のうち、何人が(何割が)本気になり、当事者になれるか。それが問われている選挙なのだと思います。
(文責:梅本龍夫)
- 衆院21日 解散 消費税10%17年春 来月2日公示 14日投開票
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news1/20141118-OYT1T50126.html - 銀幕支えた大スター 次作撮影控え 高倉健さん死去
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20141118-OYT1T50145.html
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
- 21日解散 首相表明 消費増税先送り「信を問う」アベノミクスも争点
http://www.asahi.com/articles/DA3S11462956.html - さらば健さん 不器用な男、一途に
http://www.asahi.com/articles/DA3S11462955.html - 愚直な政治 忘れたのか 特別編集委員 星浩
http://www.asahi.com/articles/DA3S11462957.html
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
- 首相「アベノミクス信問う」21日衆院解散
http://mainichi.jp/select/news/20141119k0000m010152000c.html - 高倉健さん死去 一つの時代終わった
http://mainichi.jp/select/news/m20141119k0000m040174000c.html
(毎日jp http://mainichi.jp/)
- 21日解散 増税延期 消費税10%17年4月 首相「再延期せず」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK18H4L_Y4A111C1000000/ - 「大義」の示せる選挙に 解散を問う
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE18H0O_Y4A111C1MM8000/ - 法人減税、賃上げ一体で 首相単独会見 デフレ心理払拭を
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS18H4R_Y4A111C1MM8000/?n_cid=BPRDS001
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- 衆院21日解散 首相表明 消費再増税29年4月を明言「与党過半数割れば退陣」
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/elex/snk20141119083.html - 高倉健さん死去「網走番外地」「南極物語」83歳
http://www.sankei.com/entertainments/news/141118/ent1411180005-n1.html - サーバー悪用容疑一斉捜索へ 警視庁など 犯罪インフラ壊滅狙う
http://www.sankei.com/affairs/news/141119/afr1411190003-n1.html
(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/)
- 来月14日 衆院選 消費増税17年春に延期 首相、21日解散
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014111902000127.html - 自民公約 次々変質 秘密法 記述なし▲制定 TPP 反対▲参加
- 高倉健さん死去 追悼の黄色いハンカチ
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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