2014.11.12 wed

2014年11月12日【新聞解説】「政策と政局」のゲーム

2014年11月12日【新聞解説】「政策と政局」のゲーム


【リグミの解説】

衆院解散・総選挙の流れ
政局のテーマとして浮上していた年内衆院解散・総選挙が現実味を帯びてきました。本日の読売、朝日、毎日、日経が解散・総選挙を既定事実とした社説を掲げています。各紙の特徴的な論点を比較します。
 
<読売新聞> 衆院解散検討 課題を掲げて信任を求めよ
・ 早期解散論が高まったのは、小渕優子前経済産業相など女性2閣僚の辞任が引き金だ。臨時国会は閣僚の政治とカネを巡るスキャンダル追及で一色となった。審議が停滞し、行き詰まり感も漂う。安倍内閣の支持率が高いうちに解散を断行して局面を打開し、新たな民意を得るとともに、陣容を一新して政治を前に進めるのは、有力な選択肢と言える。
 
<朝日新聞> 政治と増税―解散に大義はあるか
・ 増税に反対の世論が強い中、これに逆らうことは難しいという政局的な判断が先に立ったのかと疑わざるを得ない。与党幹部から聞こえてくるのはこんな声だ。「原発再稼働や集団的自衛権の関連法整備が控える来年に衆院選を戦うのは厳しい」「野党の選挙準備がととのっていない今が有利だ」まさに党利党略。民主主義はゲームではない。こんな解散に大義があるとは思えない。
 
<毎日新聞> 早期解散論 その発想はあざとい
・ 10%への増税は本来、生活弱者の負担軽減策や、放置されたままの衆院定数削減など「宿題」を片付けて予定通り行うべきものだ。これまで与党がこうした課題の克服に真剣に取り組んできたとは言えまい。与党内で先送り論の根拠とされる景気動向への不安にしてもアベノミクスが想定通りに運ばない反映ではないか。増税を先送りするほど状況が悪いというのであれば、必要なのは経済政策の検証であろう。
 
<日経新聞> 消費再増税をここで延期していいのか
・ わたしたちは、再増税を延期すれば、いずれ金融市場で日本の国債に対する信認が失われ、長期金利が意図しない形で急上昇するリスクがあると指摘してきた。いったん長期金利が急上昇すると国・地方の利払い費が大きく膨らみ、財政破綻のおそれが強まる。そうなれば、日本経済に破滅的な影響を及ぼし、デフレ脱却どころではなくなる。再増税をここで延期するリスクはあまりに大きい。
 
政局と政策
読売と朝日は「政局」を論じています。読売は政局打開の策としての選挙を容認し、朝日はそのような手法に大義なないと否定しています。いっぽう毎日と日経は「政策」を論じています。両紙とも消費税の10%への増税は既定路線として堅持すべきとします。毎日は、「経済状況判断を含め政策推進の仕方を論じるのが政治だ」とする正論を展開。日経は「国債の信認が失われるリスクが顕在化する恐れがある」とピンポイントで突いています。
 
民主主義というゲーム
朝日は「民主主義はゲームではない」と批判しています。確かに国家の方針を決める立場にある人々が、大事な局面で政策判断に集中せず、「選挙だ!」と盛り上がる様子に違和感をもつ人は少なくないと思います。しかし、王政や一党独裁と違い、民主主義の政治体制においては、選挙こそが民意を問う唯一といっていい方法論です。与党の自民党・公明党が、政権を失うリスクをかけて選挙に打って出るというのは、一面においては健全な姿といえます。
 
「一面において」と留保つきでいうのは、民主主義は「ゲーム」の一種だと思うからです。政治家という国家のリーダーになる「ゴール」をめざし、選挙制度という「ルール」に従い、当落という明確な結果が出る「フィードバックシステム」に基づき、候補者も有権者も「自主的に参加する」のが、民主主義のやり方です。まさにゲーム・デザイナーのジェイン・マクゴニガルが定義するゲームの4則そのものです(参照:ジェイン・マクゴニガル著『幸せな未来は「ゲーム」が創る』早川書房)。
 
ゲームに勝利した後
問題は、ゲームに勝利した後です。ゲームの勝者は国家のリーダーとして正しい政治を遂行し、良き社会を創造する責務があります。ゲームの一方の参加者である有権者が勝者に求めるものは、具体的な政策の実現です。ところが、ゲームはあまりに面白く、人間性の根源を刺激するために、ゲーム(選挙に勝つこと)が手段ではなく目的になってしまう可能性が常にあります。
 
二宮尊徳の言葉として伝えられているものに、「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」があります。これを政治に置き換えるとどんな言葉になるでしょうか。「落選した政治家の政策は戯言であり、当選した政治家の政局は犯罪である」。これはあまりに言い過ぎでしょうか。衆議院の「1票の格差」の是正を最高裁に勧告されながら、これを放置したまま総選挙に突入しようとする与党は、法律に反していないのでしょうか。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 「来月14日投開票」準備 衆院選 自公、関係者に指示
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141112-OYT1T50012.html
  2. 自由貿易圏「早期に」APEC 首脳宣言採択、開幕
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20141111-OYT1T50143.html
  3. 株終値1万7000円台回復 7年1か月ぶり 円安進行116円台
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141111-OYT1T50104.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 総選挙準備 各党急ぐ 首相解散検討 消費税めぐり
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11450423.html
  2. 大企業好調 厳しい家計 9月中間純益増 増税や円安響く
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11450421.html
  3. 「米中協力 世界の利益に」オバマ氏、習主席と会談
    http://www.asahi.com/articles/ASGCC51Z5GCCUHBI00W.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 年内総選挙で調整 首相 解散、来週判断 来月14日有力
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20141112ddm001010178000c.html
  2. 「日中対話重ねる」首相会見
    http://mainichi.jp/select/news/20141112k0000m010071000c.html
  3. 赤い雨 闘いの始まり 長崎 生き延びた女性 14秋 ヒバクシャ
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20141112ddm001040134000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 首相「年内の衆院選 選択肢」自民幹部に伝える
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS11H2T_R11C14A1MM8000/
  2. アジアから技術革新 世界経営者会議 開幕
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ11HKU_R11C14A1MM8000/
  3. 消費税10%先送りでも 子育て支援充実 検討
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASDF11H12_R11C14A1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 首相、来月総選挙 決断 消費再増税1年半延期
    http://www.sankei.com/politics/news/141112/plt1411120005-n1.html
  2. 日韓首脳「局長級を前進」APEC夕食会で会話
    http://www.sankei.com/politics/news/141111/plt1411110021-n1.html
  3. 野心と経営感覚 ゴーン氏が評価 番頭の時代 第1部カリスマを支える

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 年内総選挙の流れ 首相、来週解散を検討 与野党が準備加速
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014111202000113.html
  2. 「地元」範囲拡大 強まる声 再稼働同意手続き
  3. 環境カウンセラー研修テーマ「再生エネ」に変更 環境省「原発推進」批判受け
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014111202000112.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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