2014.11.07 fri

2014年11月7日【新聞解説】経済成長の心、持続可能な社会の心

2014年11月7日【新聞解説】経済成長の心、持続可能な社会の心


【リグミの解説】

子どものための社説
東京新聞が「子どものための社説」を掲げました。11月10-12日に名古屋市で開催される「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」についてです。珍しい試みですので、以下全文を紹介します。
 
<東京新聞> ユネスコ会議 悪い大人をまねないで
・ 子どもたちへ。今日は皆さんのために書きました。皆さんの未来を語る国際会議が十日、名古屋で始まります。大人たちが地球を壊し続けた過去を振り返り、より良い未来を築くための会議です。
・ ESD。近ごろはやりの三文字英語。AKBならばともかく、わからない、と言われても、仕方ありません。「持続可能な開発のための教育」という日本語に直してみても、よけいに難しくなりそうです。そもそも、「持続可能」とは、「持続可能な開発」とは一体、何でしょう。
・ 簡単に言えば、地球の環境、生態系を壊さないようにしようということです。損するのはもっぱら人類ですから。たとえば森をきりすぎない。ウナギを食べすぎないということです。
・ 二十世紀後半、米国や日本のように今先進国と呼ばれる国々で、工業や商業が急激に発展し、人々の暮らしは豊かになりました。その代わり、空は煙に、川は排水に汚されて、街からごみがあふれ出しました。
・ 森林や田園は多くの生き物の命とともに失われ、温暖化の進行が止まりません。二酸化炭素ガスには熱を逃さない性質があるので、増えれば地球が毛布でくるまれたようになってしまうのです。
・ これ以上地球を壊さずに、世界中が長く暮らし続けていくには、どうすればいいのだろうか。教育なんて偉そうに言う前に、本当は大人たちが率先して、自らを改めなければなりません。
・ そのために、まず十年間、社会全体でその学びを深めてみようと、日本から世界に呼びかけたのが、このややこしいESDだったのです。そして今年が十年目。十年間の学びの結果を振り返り、これから何をしたらいいかを、話し合う会議です。
・ 会議なんて関係ないよ、だって大人たちのせいじゃないかと、恐らく思うことでしょう。そのとおり。目の前のこの危機は、明らかに私たち大人の責任です。目下反省中。そして、先送りはできません。
・ 思い浮かべてみてほしい。皆さんが、ずっと大切にしていたいものは何ですか?未来に残しておきたいものは?考えてみてください。大切なものを失わないために、皆さんは、どうします?未来は、大人じゃなく皆さんのものなんです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014110702000143.html
 
「持続可能」とは
「持続可能な開発のための教育(ESD)」とは、「持続可能な開発を実現するために発想し、行動できる人材を育成する教育」のことです(引用:Wikipedia)。日本からの呼びかけでこのような活動がなされていることを知りませんでした。
 
ESDは、持続可能な開発における3つの主要な問題である「気候変動」「生物多様性」「防災(災害リスク軽減)」に焦点をあてて取り組んできたそうです。ESDは、「持続可能な未来を形作るために必要な知識、技能、生活態度、価値観を学ばせるもので、気候変動や貧困削減などの持続可能な開発に重要な課題を、授業や学習に取り込んでいます。また学習者が、そうした持続可能な開発のために行動を起こせるよう、参加型の授業、学習方法をも促進します」と公式サイトに記されています。
http://www.unesco.org/new/jp/unesco-world-conference-on-esd-2014/about-the-conference/objectives/
 
教育の目的
教育の目的は、次世代を育てることです。しかし教育をする側(大人)の事情として、現世代の秩序に子どもたちを従わせるための「しつけ」という側面がかならずあります。それでは、私たち大人世代がやっていること、形成している社会とはどのようなものでしょうか。それはそもそも「持続可能な社会」なのでしょうか。
 
ESDの前提となる「持続可能な開発(SD)」とは、「現代の世代が、将来の世代の利益や要求を充足する能力を損なわない範囲内で環境を利用し、要求を満たしていこうとする理念」です(引用:Wikipedia)。地球をのみこんで膨張を続けるグローバル経済には、そもそも「持続可能性」という概念がありません。あるのは「マネーの絶えざる増大」という「利益極大化のインセンティブ」だけです。東京新聞の社説が示唆するように、大人たちはESDを子どもたちに行う経験や知見がはたしてあるのか。基本的な疑問です。
 
アンラーニングの必要性
「持続可能な社会」を創造するためには、次世代に教育をすることと同時に、現世代が学び直す必要があります。経営学に「アンラーニング(学習棄却)」というコンセプトがあります。過去の成功体験をいったん捨てないと、新しい知識や知恵を生み出せない局面が、個人にも組織にもやってくる。そのときの対処を指摘したものです。社会もまた「アンラーニング」をすべき時があります。
 
そのヒントをくれる人がいます。グラミン銀行の創始者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスさんです。ユヌスさんは、バングラデシュの貧困層のためにマイクロ・ファイナンスという金融手法を生み出し、施しではなく自活できる社会的基盤を提供するやり方で貧困を解決する道筋をつけています。
 
ユヌスさんは、グラミン銀行のやり方を普遍化した「ソーシャル・ビジネス」を提唱しています。現代の資本主義は、利益極大化を前提にしています。「ソーシャル・ビジネス」は貧困や環境問題などの社会問題をビジネスの手法で解決しますが、利益は取りません。「持続可能な組織(事業)」が前提で、余剰の利益は社会に還元されるか、別の社会的なテーマに投資されます。それは可能なのでしょうか。
 
利己心と利他心
ユヌスさんはたくさんの実例に取組み、「可能だ」と主張しています(参照:ムハマド・ユヌス著『ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム』早川書房)。その大事なヒントは、人間性の中にあります。現代の資本主義は「利己心」(Selfishness)を前提にしています。しかし人間はただ利己的なだけの存在ではありません。社会的存在である私たちの中には、「利他心」(Selflessness)もあります。ユヌスさんは「利他心」を活用することでソーシャル・ビジネスは成功すると言います。
 
ただし、私たち大人がほんとうに「利己心」を極大化するのでなく「利他心」とバランスさせるには、「アンラーニング」が必要な気がします。ESDユネスコ会議が成功し、次世代の子どもたちが本当に「持続可能な社会」を創造できるためには、まず私たち現世代がそのことに真剣に取り組み、範を示す必要があります。「利他心」の対象をどれだけ無理なく広げられるか。私たちの度量が試されています。
 

(文責:梅本龍夫)



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    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014110601001758.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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