【リグミの解説】
沖縄知事選
沖縄県知事選が告示されました。現職の仲井真弘多知事に対し、翁長雄志・前那覇市長、喜納昌吉・前参院議員、下地幹郎・元郵政改革相の新人3人が立候補しています。最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設問題です。本日の読売、朝日、東京の3紙が沖縄知事選について社説で論じています。特徴的な見解を比較します。
<読売新聞> 沖縄知事選告示 「辺野古」で責任ある論戦を
・ 辺野古移設は、基地負担の軽減と米軍の抑止力維持を両立させるうえで、最も現実的な選択肢だ。実現には大きな意義がある。
・ 辺野古移設に反対する候補は、普天間の危険性を除去する具体的な代替策を示す必要がある。沖縄全体の基地負担の軽減が遅れるリスクについても、県民にしっかり説明しなければならない。
・ 最近は、尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入を繰り返すなど、沖縄県の平和と安全が脅かされている。知事選では、こうした問題も議論することが大切だ。
<朝日新聞> 沖縄知事選―基地を正面から語れ
・ 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題について菅官房長官は「過去の問題」と強調するが、これこそ沖縄の現実の問題であり、知事選の主要な争点である。
・ 知事の承認に至る過程で、やはり県外移設を公約に当選した沖縄県選出の国会議員や自民党県連に、自民党本部が公約放棄を迫り続けたことも、県民に不信感を植え付けた。知事の公約変更に、有権者がどう審判を下すのかが注目される。
・ 普天間を2019年2月までに運用停止にする政権の約束も、米政府が拒否し、空手形だったことが明らかになった。負担軽減は本物か。知事選を通じて、沖縄の有権者はじっと見ている。
<東京新聞> 沖縄県知事選 基地の現実直視したい
・ 沖縄県知事選は、保守と革新が対決する構図が長く続き、保守分裂選挙は今回が初めてだ。在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県に、普天間返還のためとはいえ、さらに米軍基地を新設することへの拒否感が、保守層にも浸透しつつあることを物語る。
・ 菅義偉官房長官は九月の内閣改造で「沖縄基地負担軽減担当相」兼任となったが、県内移設の是非は「もう過去の問題だ」として、県知事選の結果に関係なく、移設作業を進める方針を強調する。しかし、民意を顧みない強硬姿勢で、重い基地負担に苦しむ県民の理解が得られるだろうか。
・ 普天間問題には移設の是非だけでなく、沖縄をめぐる問題が凝縮していると考えるべきだ。日米安全保障体制が日本の平和と安全に不可欠なら、負担は国民が等しく負うべきではないのか、負担の押し付けは沖縄県民に対する差別ではないのか、などだ。本土に住む私たちも、同じ日本国民として、沖縄県民の苦しみから目を背けてはならない。
沖縄の印象
沖縄には何度か、主として観光で訪れています。今夏はちょうど超大型台風が直撃するタイミングとなり、ホテルに缶詰めとなりました。「台風慣れ」した沖縄の人にとっても緊張するほど大型の勢力で、ホテルは特別警戒態勢を敷いていましたが、事なきを得ました。沖縄の人々の強さを感じた数日でした。
那覇をレンタカーで走ると、すぐに米軍基地近くに出ます。沿道を走っていて、なかなかフェンスが途切れない基地の大きさに驚きます。神話の島といわれる久高島に行ったときは、ガイドの方が語る沖縄創世神話と、眩しすぎる太陽と青く深い海が、不思議なリアリティーを醸し出していました。そして、ガイドが語る沖縄の歴史によって、かつて独立王国であった琉球が、中国と日本と等距離外交をしていた時代の様子を知りました。
沖縄の歴史、日本の歴史
沖縄は明治の初めに「琉球処分」によって沖縄県となりますが、この間の琉球と日本政府のやりとりについて私はよく理解できません。端的にいって勉強不足なのですが、「薩摩による琉球侵攻」以降、次第にハードパワーに勝る日本に、いわばねじ伏せられるようにして併合されたように見えます。もし当時の中国(清国)に国力があったら、日本ではなく中国に併合されていた可能性もあったかもしれません。
現代史において太平洋戦争末期の沖縄戦は、その被害の甚大さにおいてもっとも悲劇的な戦場のひとつに数えられます。負けることが必定の戦闘において、本土防衛のために戦わなければならなかった沖縄の人々の思いを推し量ることは、私には困難です。
合理性だけでは理解できない現実
沖縄駐留の米軍海兵隊1万人のうち、すぐに出動できるのは2000人規模だそうです。ではなぜ1万人もいるかというと、「太平洋戦争で海兵隊が苦労して獲得したいわば『戦利品』なので、沖縄を手放したくないのです。米軍も官僚組織。必ずしも合理的に行動するわけではない」と植村秀樹・沖縄経済大学教授は指摘しています(朝日新聞10/29「耕論」)。
私たちはかならずしも合理的な判断をいつもしているわけではありません。合理的であることが正解かどうかも、ほんとうはわかりません。ただ、(今回の私の一文のように)情緒的な語りで何かが解決するわけでもありません。むしろ誤った気分、たとえば「諦め」や「無関心」の醸成に一役買う危険すらあります。
「自己決定権」は私たち自身のテーマ
島袋純・琉球大学教授は、「沖縄に自己決定権はあるのか」と厳しく問うています。独立志向の強いスコットランドを長く研究してきて、「国家予算の一定割合を自動的に渡され、自ら使い道を決められる。内政に関わる権限はほぼ全部手にしている」と指摘。「補助金」などで沖縄の経済が自立できず、「東京の決定に従わざるを得ない」現状を憂慮しています(朝日新聞10/29「耕論」)。
今の沖縄は独立王国ではありません。米軍基地は重い現実であり、これを大前提に沖縄の経済社会は成り立っています。「基地反対」や「自己決定権」の主張に醒めた目を向ける人々は沖縄にも一定数いるのだと思います。まして東京にいる人々は、沖縄を体感する術がありません。情緒は時に危険ですが、情緒を欠いた潤いのない政治判断もまた、危ういものがあります。
かつて日本と中国の等距離外交の微妙なバランスの上に成り立った沖縄(琉球王国)は今、日本(東京の政府)と米国(米軍)の等距離外交を強いられているように見えます。沖縄知事選は、決して他人事ではないと思います。明日の日本全体の見取図が、沖縄に刻まれているのかもしれません。ぼやっとした気分の奥にあるものを、透徹する眼力が必要です。自戒として。
(文責:梅本龍夫)
- 景気対策3~4兆円規模 政府検討 消費増税に備え
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141031-OYT1T50003.html - 福島第一 核燃料取り出し遅れる 2~5年 カバー解体延期で
http://www.yomiuri.co.jp/science/20141030-OYT1T50119.html - 北「新しい角度で調査」拉致実行機関も徹底的に 訪朝団報告
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141030-OYT1T50127.html
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
- 辺野古移設 違い鮮明「推進」「阻止」4氏論戦 沖縄知事選告示
http://www.asahi.com/articles/DA3S11430953.html - 拉致、安否情報示されず 日朝協議 代表団、首相の報告
http://www.asahi.com/articles/ASGBZ5RH5GBZUTFK00C.html - 与党にも小渕議員辞職論 政府資金問題 元秘書宅など地検捜索
http://www.asahi.com/articles/DA3S11430473.html
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
- 福島原発1号機 燃料取り出し延期 廃炉工程見直し
http://sp.mainichi.jp/shimen/news/m20141031ddm001010191000c.html - 拉致調査 北朝鮮「新しい角度で」政府代表団、首相に報告
http://mainichi.jp/select/news/20141031k0000m010129000c.html - ソフトバンク日本一
http://mainichi.jp/sports/baseball/pro/flash/2014NS5.html
(毎日jp http://mainichi.jp/)
- 心不全の心臓再生 テルモ 実用化へ申請 患者 負担軽く
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ30HI1_Q4A031C1MM8000/ - 国内積35%に下げ 公的年金運用、中長期で 日本株25%
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H3F_Q4A031C1MM8000/ - 医療・介護ロボ 日本技術が道 医出づる国「2025年」に挑む
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO79109340Q4A031C1MM8000/
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- 小渕氏元秘書 違法性認識か 不透明収支「虚偽記載かも」
http://www.sankei.com/affairs/news/141031/afr1410310009-n1.html - 北の対日機関トップ死亡 拉致関与、総連後ろ盾
http://www.sankei.com/world/news/141031/wor1410310013-n1.html - タカ 3年ぶり日本一
http://www.sankei.com/sports/news/141030/spo1410300045-n1.html
(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/)
- 核燃料取り出し遅れ 追認 実体なき「廃炉工程」鮮明
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014103190065724.html - 拉致再調査 新たな安否情報なし 日朝協議 首相に報告
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014103102000125.html - 上野東京ライン 3.14開業 常磐線 品川まで
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014103102000126.html
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ