【リグミの解説】
「大阪都構想」頓挫
「大阪都構想」の制度設計案が大阪府・大阪市両議会でいずれも反対多数で否決されました。地域政党・大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長が掲げてきた最大の公約が事実上、頓挫したといえます(以上、毎日新聞の社説引用)。朝日と毎日に社説の中で、特に橋下氏の政治手法を批判する論点を取り上げます。
<朝日新聞> 大阪都案否決 正攻法でやり直そう
・ 議会承認は、法に明記された要件だ。市議会が新たな条例案を通す可能性も低い。民意を直接問いたいという橋下氏の思いは理解できなくもないが、専決処分のような強引な手段では、都構想への住民の支持が失われるリスクもあろう。やり直したいなら、橋下氏はあくまで正攻法で臨むべきだ。
・ 維新は3月の出直し市長選での橋下氏再選を根拠に、反対派府議を協議会から締め出した。市議会の反対派も協議をボイコットし、都構想案は維新議員だけで完成した。民主的な正統性は疑問というしかない。維新以外の各党は、法定協議会に反対派を戻すことを決め、協議の再開を求めている。橋下氏はぜひ応じてもらいたい。
<毎日新聞> 大阪都構想否決 議会の承認は省けない
・ 橋下氏は再提案した議案を議会承認を省略して専決処分し、住民投票に持ち込むことも否定していない。専決処分は地方自治法に規定されているとはいえ、認められるのは議会を招集する時間がない場合などに限られている。政治家の考えを押し通す道具に使うことは権限の乱用であり、許されない。
・ 行き詰まった橋下氏は出直し市長選に打って出た。再選されると、協議会メンバーから反対派野党議員を排除して維新だけで協定書を作成するなど、強引に手続きを進めた。橋下氏の手法は反発を招いて離党者が相次ぎ、両議会とも過半数を割り込んでいる。他のどの政党、会派も背を向けており、このまま「議会敵視」を続けていては、溝は深まるばかりだ。
「選挙は戦」
橋下氏の発言で印象に残っているもののひとつに、「選挙は戦(いくさ)だ」があります。確かに、選挙は有権者が政治の担い手を決める最大の意思決定の場であり、たとえ1票差でも、当選と落選が確定する仕組みです。「1」か「0」、「すべてを得るか」「すべてを失うか」を問うという意味では、確かに命の奪い合いをする戦(いくさ)であるといえます。
戦争を、身も蓋もないゲームの理屈で極端に単純化すると、100人ずつの兵士がいて、敵味方に分かれて戦うとき、両陣営は力が拮抗します。一人ひとりの力量や武器の質・量は同じとします。作戦の良し悪しや時の運、あるいは勝ちたいという思いの強い方が勝利する可能性があります。しかしその勝利とは何か。できるだけ自陣の消耗が少なく、できるだけ敵陣の消耗を多とすること。つまり、どちらの死傷数がより多いかを競うゲームです。
戦争の中身は、常に失うことでしかありません。ルーズ・ルーズのメカニズムです。それでも人間が戦争に駆り立てられるのは、より少なく失った方が、「支配権の総取り」ができるからです。これも見も蓋もない喩えですが、より少ない投資でより大きな利益を得るビジネス判断と似ています。失われる人命と破壊されるものの大きさよりも、得られるものが多いと期待し、人は戦に臨むのかもしれません。
民主主義の手法
さて、選挙に勝利したあと、橋下氏がよく口にする言葉に、「文句があるなら自分で選挙に出て国や行政を変えたらいい」というのがあります。現代の民主的な手続きを経て正々堂々と自分の主義主張を実現せよということです。これは一見正しく聞こえますが、感覚的な違和感が残ります。戦の手法を政治のあらゆる局面に適用する感じがするからです。
橋下氏が得意とし、政治家として際立たせているものは、弁論術です。朝日の社説は、都構想に関する反対会派の態度について、「自民や公明など反対派も責務を果たしたとはいえない。市議会の集中審議には橋下氏を呼ばず、事務方にだけ質問した。弁舌を封じる作戦らしいが、あまりに情けなかった」と批判しています。それだけ橋下氏の弁論が手ごわいということでしょう。
討論と対話
しかし、橋下氏の強みである「戦に勝つ」ことは、政治の壇上に登るには有効でも、政治の舞台で実のある成果を上げる段になると、自分たち自身を傷つける諸刃の剣にもなります。民主主義は、「多数派=リーダー」を決めるメカニズムですが、それは入り口の役割分担を決めるに過ぎません。「少数派」を反対分子や排除すべき異端者とみなすのではなく、自分たちの「フォロワー」に変える必要があります。
それには、「戦に勝つ」ときとは、手法を変えることが有効です。「勝ち負け」を決する討論(ディベート)の手法ではなく、一緒に考え、一緒にベストソリューションを見つけ出す「対話」の手法の方が、たぶん役に立つのではないかと思います。それでは革命的ことは、すぐにはできないかもしれませんが、じわじわと大阪市が体質改善をし、進化していく総力を身につける可能性は十分にあると思います。
「ウィン・ルーズ」が世の中の現実だという意見は多いと思います。「ウィン・ウィン」は理想に過ぎず、空想的だとシニカルに見るのは簡単です。でも、民主主義がほんらいめざす成熟は、「最大多数の最大幸福」であると思います。いろいろと迷い、失敗し、苦労しながらも、「すべての人々が勝者」になれる世界をめざすのが民主主義です。これは人間しかできない営みです。
(文責:梅本龍夫)
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