2014.10.27 mon

2014年10月27日【新聞解説】新しい「創世の物語」

2014年10月27日【新聞解説】新しい「創世の物語」


【リグミの解説】

今日から読書週間です。読売と毎日が社説で読書を推奨しています。主な視点を比較します。
 
<読売新聞> 読書週間 本と出会う場を増やしたい
・ 読売新聞の最近の世論調査によると、自宅から気楽に行ける場所に書店が「あった方がよい」と答えた人は79%に上った。多くの人が本との出会いの場を求めていることがうかがえる。その「街の本屋」が姿を消しつつあるのは、寂しいことだ。全国の書店数は約1万4000店で、2000年の3分の2に減った。
・ 図書館は、地域の人たちの対話や交流の場でもある。読書の輪を広げるには欠かせない。 「マイクロ・ライブラリー」と呼ばれる小さな私設図書館の開設も各地で進む。子供の読書を推進するため、学校図書館の役割は重要である。活字が紡ぎ出す物語の世界に感動し、知識を得る喜びを味わう。読書の楽しさを子供たちに伝えていきたい。
 
<毎日新聞> 読書週間 豊かな世界を楽しもう
・ スマホはとても便利で魅力的な道具だ。それだけに、うまく活用したい。課題もはらんでいる。よく指摘されるのは、ニュース検索などをする時に、興味のある情報だけを得る傾向があることだ。ネットで得られる情報の精度も問題だ。利用者は正しいのかどうかを見きわめる力が求められる。
・ 小中高生の書籍の読書量はこの20年間、概して増加傾向にある。今年は高校生が微減したが、「朝の読書」運動など、学校の読書指導が功を奏しているのだろう。書籍の質を高めたいという声をよく聞く。書籍の質とは何かという議論も必要だ。
 
「紙つなげ!」
佐々涼子著『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(早川書房)という本があります。東日本大震災の大津波で壊滅的打撃を受けた石巻工場。従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にしました。絶望的な状況の中、工場長は半年で復興すると宣言。従業員や周囲の人々の必死の取り組みで、実際に奇跡の復興を遂げました(参照:Amazon)。
 
日本製紙石巻工場は、日本の出版業を支える基幹工場であったため、この工場の被害の現実に、日本の出版界は青くなったといいます。この本を読むと、一冊の紙の本が出来上がるまでに投じられる努力と工夫の質と量に驚かされます。そして、そうした「縁の下の力持ち」ともいうべき製紙工場の人々が、紙の本を復活させるために注ぐ情熱の熱量に頭が下がります。
 
自転車操業の出版界
同時に、冷厳な事実も知ります。「『2014年版 出版指標年報』によると、2000年には書籍と雑誌を合わせた推定販売部数はおよそ41億8000万冊だったのが、2013年は、24億4000万冊にまで落ち込んでいる。出版物の販売数は坂道を転がり落ちるようにして減っている」(前掲書P256)。
 
あまりにも多くの本が出版され、そのほとんどが短命に終わり、消え去っていく。いや、中には本屋に届いた書籍の段ボールが開けられることなく、出版社に返品されるケースもあるといいます。出版不況と言われる状況になり、多くの業界関係者が選択した道は、「自転車操業」ともいうべきものにみえます。
 
本が売れないから、少しでも売れる本をめざしてあれこれと仕込む。数撃てば当たるものもあると期待して。しかし粗製濫造される本は、世の中の泡沫(うたかた)の関心や興味に訴えるものとなり、長く人々の記憶にとどまり、読み継がれるものとはなりません。
 
電子化と部族社会
では、電子書籍、そしてネット空間における情報交換の市場性はどうなっていくのでしょうか。生演奏の音楽がレコードやテープに録音され、それがCDに代わり、やがてオンライン配信されるようになったように、およそあらゆる情報、あらゆるメディアは、ひたすら電子化されていく流れにあり、これは留めることができないと思います。
 
いっぽうで、物事の新しい流れが極端に進んでいくと、突然なつかしいものが復活します。それは昔の姿そのものではなく、新しい革袋に入った懐かしい酒であったりします。ネットの中で、自分の嗜好や思想、価値観に合う情報だけを求め、同好の士のサークルの中に閉じる傾向が強くなっています。これをマーケティングの大家セス・ゴーディアンは「部族社会の復活」ととらえています。
 
古代の部族社会には、かならず語り部がいました。部族の「創世の物語」を共有し、共同体をひとつに束ね、未来への道筋を示してくれる物語が、社会を維持し、一人ひとりの人生の指針となったからです。口承(口伝え)であった物語が、文字化されて本となり、やがて印刷革命によって一人ひとりが本を黙読できるようになると、語り部は消滅しました。しかし、物語は形を変えて今も作られ続けています。
 
創世の物語を創発する
「現代の部族社会」に決定的に不足しているのは、「創世の物語」を語れる語り部です。現代の語り部は、ひとりではなく集合的になる可能性が高いので、同じ「創世の物語」が、たくさんのバリエーションに展開する可能性があります。それぞれが魅力的な本となり得る素材です。そして「現代の部族社会」は、古代の部族と違い、他の部族社会と簡単につながれます。互いの「創世の物語」を交換し、新しい、より大きく深い物語を編纂することも可能です。
 
そのようなプロセスで、真に語り継ぎ、共有される財産は、おりおりに紙の本として綺麗に製本されるはずです。人は、宝物を象徴的な形として保持したいと感じるものです。ネット時代の「部族」に働きかけ、真に価値があり、長く受け継がれる財産をいっしょに創り続ける拠点となることが、出版社、書店、図書館の新しいミッションになっていきます。「創世の物語」を創発する。それはなつかしく、同時にまったく新しい本の世界を創造することになるのではないでしょうか。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 福島知事に内堀氏 前副知事「復興に全身全霊」主要各党が支援
    http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20141026-OYT1T50081.html
  2. 住民登録抹消の子940人 昨年度 国の所在確認対象外
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20141026-OYT1T50098.html
  3. 政府代表団きょう平壌入り 拉致問題
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141026-OYT1T50064.html?from=ytop_ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 爆発3回 噴石「軽トラック大」御嶽山噴火1カ月 50人の証言
    http://www.asahi.com/articles/ASGBV52S1GBVUTIL00L.html
  2. 内閣支持 微増49% 2閣僚辞任「イメージ変わらず」52% 本社世論調査
    http://www.asahi.com/articles/ASGBV468ZGBVUZPS001.html
  3. 福島知事に内堀氏 前副知事、県政継承訴え
    http://www.asahi.com/articles/ASGBV5SK6GBVUGTB009.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 御嶽山噴火きょう1カ月 つぶれたカメラ 笑顔 鮮明に
    http://mainichi.jp/shimen/news/20141027ddm001040273000c.html?inb=ra
  2. 福島知事の内堀氏 与野党4党相乗り支援
    http://senkyo.mainichi.jp/news/20141027ddm001010222000c.html
  3. 戦後70年 どう迎える 日米の有識者に聞く これまでこれから戦後70年
    http://mainichi.jp/shimen/news/20141027ddm001040220000c.html?inb=ra

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 国内新車販売、計画届かず 今期500万台割れへ 増税後不振
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ26H1R_W4A021C1MM8000/
  2. 内閣支持率48%に低下 2閣僚辞任「首相に責任」66%
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H0X_W4A021C1MM8000/
  3. 10万人定住へ病院が街作る 団塊、75歳以上に 医出づる国「2025年」に挑む
    http://www.nikkei.com/article/DGKKZO78916180W4A021C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 北の土俵「拉致優先」貫けるか 政府代表団きょう平壌入り 10年ぶり
    http://www.sankei.com/politics/news/141027/plt1410270009-n1.html
  2. 談話急いだ 夏の虫 ずさんな元慰安婦聞き取り 歴史戦 第7部 崩れ始めた壁
  3. 賃上げと雇用慣行見直し 日本の未来を考える

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 第1次大戦 日英同盟で合祀1333人「戦域限定」参戦なし崩し
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014102702000142.html
  2. 各党相乗り 原発論争ならず 福島知事に前副知事
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014102702000129.html
  3. 赤瀬川原平さん死去 77歳「老人力」、前衛芸術
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014102702000134.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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