【リグミの解説】
朝日新聞は本日、香港で続く学生デモについて社説を掲げています。以下、主な論点です。
<朝日新聞> 香港の対話―問われる中国の態度
・ 香港政府が対話に応じたことは前進と評価していい。だが、議論は平行線に終わった。そのやりとりからうかがえるのは、香港政府自身に決定権はなく、背後にいる中国・習近平政権こそが鍵を握っているという厳然たる事実である。
・ 運動の先頭に立つ学生らは政治的に目覚めた世代とされる。一昨年、中国が香港に「愛国教育」を強制しようとしたことに反発し、街頭行動に立ち上がった若者らが中心だ。 彼らの要求は政権転覆ではない。よりよき選挙制度である
・ 学生代表の一人は対話の中で「香港は平等な社会に向かっているのか」と問うた。財界人が多数を占める指名委に選ばれる長官候補者に、低所得者の声は届かないという問題提起だ。格差が広がる社会に向き合って選挙制度を考えようとする姿勢は、香港の内外で共感を呼ぶだろう。
香港デモの背景
朝日の社説は、欧米の論調と基本同一のものと思われます。すなわち、香港(そして背後にいる中国)はもっと民主化されるべきである、というものです。その主張に、理念的には同意できるとして、実態をどう理解するかという視点が同時に必要ではないかと感じます。
日経ビジネスオンラインの記事によると、学生デモに反対し、学生たちを襲撃している「反デモ隊」の若者たちは、デモを続けられる学生たちの恵まれた境遇を憎悪し、いっぽうの学生たちはそうした若者を蔑視する傾向があるようです。
香港の梁振英行政長官は、米紙のインタビューの中で、「全て数の論理に基づくならば、香港市民の半数にあたる月収1800米ドル(約19万円)未満の人々に向かって話しかけることになるのは明らかだ」と語ったそうです。
香港は貧富の格差の大きい地域といわれます。批判を浴びているこの発言は梁長官の「本音」を語ったものとも思われ、民主主義を求める勢力を阻もうとする支配層のメンタリティーには中国政府への配慮だけではなく、民主主義がもつ「数の論理」への恐怖があるようです。
タイとエジプト
政治混乱がつづくタイは、庶民層が中心の「赤シャツ派」と、旧来の勢力を支持する「黄シャツ派」が流血の対立となっています。赤シャツ派は選挙の実施を望み、黄シャツ派は「まずは選挙制度の改革」と主張しています。今のままでは、政権を取れるだけの票が獲得できないからだと言われます(参照:『ナショナルジオグラフィック』2014年9月号「タイ 引き裂かれる王国」P112)。
エジプトは「アラブの春」で民衆はムバラク独裁政権を倒し、民主主義の理念に基づいた普通選挙を実施しました。その結果、多数派のスンニ派が政権を握り、少数派のシーア派を排除したため、混乱が続いているようです。
そしてスコットランド
人類の長い歴史を見れば、支配層は人数においては少数で、多数派の被支配層は次第に力をつけ、革命などを起こし政治体制を逆転させてきました。暴力的な歴史の果てに、よりましな制度としての民主主義が英国を中心に発展し、次第に人類共通のアセットになっていったのだと思います。英国首相だったチャーチルの言葉、「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが」は、含蓄があります(引用:Wikiquote)。
その英国において、スコットランド独立運動が住民投票によって否決されました。民主主義のフェアなプロセスを世界は称賛しました。しかし、英国(イングランドとスコットランド)の民主主義が本当に勝利するかどうかは、これからにかかっています。
多数派が「全部取り」するやり方では、真の問題解決にはなりません。選挙で勝利した側がもっとも重視すべきことは「バランス」です。自陣と対立陣営は、敵味方ではありません。多様性の両極であっても、同胞であり一緒に社会を形成する仲間です。数の論理で支配力を手に入れた者が、少数派や社会的弱者をどう扱うか。ここに民主主義の成熟度を問う視点があります。
フェアな選挙制度は、民主主義の到達点ではなく、あるべき民主主義のスタートラインにすぎません。
(文責:梅本龍夫)
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