【リグミの解説】
本日の朝日新聞の社説は「道徳の教科化」、産経新聞は「暴力の低年齢化」を俎上に乗せています。両紙の特徴的な主張を見ます。
<朝日新聞> 道徳の教科化―多様な価値観育つのか
・ 答申は、こう述べる。「特定の価値観を押し付けることは、道徳教育が目指す方向の対極にある」。その通りだと思う。では、教科にすることで多様な価値観が育つのか。かえって逆効果になりはしないか。その懸念をぬぐえない。
・ 文科省が今年つくった教材「私たちの道徳」は、二宮金次郎らの偉人伝や格言を集めている。そんな物語から「正しい人間像」を説き、それを受け入れた場合のみ評価するのなら、思考を養うことにはなるまい。
・ 答申は情報モラルや生命倫理など現代の課題を扱うことや、対話や討論の授業も求めた。ぜひ進めてほしい。そうなると、シチズンシップ(市民性)教育や哲学に限りなく近づく。生の社会で価値判断の分かれるものこそ、格好の素材だ。そのために教員にはテーマを選ぶ自由がなければならない。
<産経新聞> 暴力の低年齢化 家庭のしつけが問われる
・ 普段おとなしい子が突然暴れるなど、学校での生徒指導が難しくなっているといわれる。いじめ問題ではスマートフォンを持つ小学生も増え、ネット上など教師が把握しにくい所で起きるいじめが目立ってきた。
・ 家庭の役割の重要性は変わらないのに、家庭の教育力低下が指摘されて久しい。家庭でのしつけを棚に上げ、教師から子供がしかられたことに文句をいう親も少なくない。学校と連携する以前の問題といえないか。
・ 専門家からは、幼い頃からしかられた経験のない子は耐性が低く、ささいなことで暴力に走る例が指摘されている。ほめるときはほめ、ダメなことはきちんとしかる。大好きなお父さん、お母さんから、いじめや暴力は絶対に許されないと教われば、いじめをする子には育たない。
体と頭と心
両紙の主張を極端に単純化すれば、朝日は「道徳観を教育で押しつけるな」となり、産経は「家庭のしつけをしっかりしろ」となるのだと思います。そこであらためて思うのは、学校教育の目的は何かということ、そして家庭のしつけの基本です。
第一に健康な体を作り上げていくことがあると思います。子どもから大人への変化とは、身体が大きくなり成熟していくことです。健全な体づくりは、基本中の基本です。第二に知性を育てることがあります。昔でいう「読み書き算盤」は、人間が人間らしく生きる基本技能となります。そして三番目に、健やかな心が育つ手助けをすることがきます。心は、体と頭をひとつにつなぐ連結器のようなものです。心が健やかでないと、体と頭はうまく連動しません。その結果、いろいろな問題が生じます。
学校の道徳教育も、家庭のしつけも、心の問題に焦点を当てがちです。それは当然のことなのですが、実際には人間は身体を大きく強くしていき、知性を伸ばし、心を育むという3つの活動を同時にしています。心の教育、心のしつけだけを試みても、たぶんあまりうまくいかないでしょう。逆に、身体や知性だけに着目した活動も、早晩壁につきあたります。
5歳刻みで訪れる節目
私たちの成長の過程を振り返ると、おおよそ5年刻みで節目の時を超えていくように思われます。5歳ぐらいで「自我」が明確に確立します。赤子でも幼児でもない意識となります。10歳前後には、自分の心をとらえる関心事や、何が得意で何が不得意かといったものがかなりわかるようになります。結果、自尊心が得られたり、逆に劣等感にとらわれたりします。
そして15歳前後の思春期になると、私たちの体は大きく変調し、今まで体験したことのないエネルギーが湧いてきます。知性が本来の働きをはじめ、教えられることではなく、自ら未知の世界を探求したい欲求が芽生えます。そして心ははじめて「愛」を自覚します。
15歳の通過儀礼
体と頭と心の成長をつぶさに見れば、15歳は事実上の「成人式」の時期になります。学校教育も家庭のしつけも、漫然とやるのではなく、15歳という象徴的な年齢で子どもが自立したひとりの大人への「通過儀礼」を無事にひとりで達成できるように手助けするものでありたいと思います。ふつう社会人になるのは、20歳前後となりますが、15歳以降の5年間は、文字通り大人となった本人が、自分の意志と努力で準備を重ねていく段階です。
このようなことを考えると、私たち大人自身がどうやって成熟していくか、それぞれの年齢や人生のステージなりに再考できることがたくさんあるように思います。子どもたちに健やかに育ってもらい、社会に迎え入れるためには、私たち自身が健やかな社会を創る必要があると気づかされます。
(文責:梅本龍夫)
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