【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日がそろってロンドンオリンピック関連です。「サッカー男子4強」は驚きをもって報道されています。なでしこジャパンの陰に隠れて存在感のなかったサッカー男子でしたが、初戦で優勝候補のスペインに勝利し、一気に注目されました。波に乗るサーカー男子は、「このチームで長くサッカーをやりたい。決勝まで行きたい」と語っています。
バドミントン女子ダブルスで銀メダルを獲得した藤井瑞希選手と岩垣令佳選手も、事前の選手団会見では、末綱聡子選手と前田美順選手に質問が集中し、後列の端に座る二人は目立たない存在でした。
今は華やかな注目を浴びるなでしこジャパンも、北京オリンピックでメダルを逃したときは、悲願の金メダルを取った日本のソフトボールの快挙を大きく報道する新聞の片隅に小さな記事が載っただけでした。そのソフトボールはオリンピック種目からはずれたため、今年開催された第13回世界女子ソフトボール大会でオーストラリアとアメリカを撃破し、42年ぶりの世界選手権優勝を果たしましたが、ほとんど注目されませんでした。
スポーツ観戦に関して、熱しやすく冷めやすい日本人の傾向は今に始まったことではありませんが、長くひとつの競技をサポートする成熟した社会基盤があって、初めてオリンピックなどの晴れに舞台で開花できることを、忘れないようにしたいと思います。自省の気持ちも込めて、少し長いですが、日本ソフトボール協会の記事を紹介します。注目されてもされなくても、スポーツで頂点を目指すことの素晴らしさ、美しさが伝わってくる文章です。
「『オリンピックのないオリンピックイヤー』にソフトボールが存在感を示した。北京オリンピックに続き、奇しくもその『4年後』となる世界選手権で優勝し、再び『世界一』の座に登り詰めた。
4年前、数えきれないほど取り囲んでいた報道陣の姿はない。世界選手権で優勝したからといって、あの熱狂が再現されるわけではない。
ただ、『ソフトボール』は4年前も、今も、変わることなく魅力的で面白い。ある選手が、試合中に呟いた。『こういうのっていいですね』と。息が詰まるような緊張感、胸が締めつけられるような緊迫感、アメリカと死闘を展開している最中に、『面白いなぁ~こういうのって』と、誰に話すでもなく呟いた。そう……ソフトボールって本当に面白いんです!
アメリカを破り、『世界一』となった選手たちは、4年前の金メダリストたちと何一つ変わることはない。彼女たちは『世界一』なのだ。4年前より『舞台』は少しばかり小さいのかもしれないが……。『世界一』になった彼女たちの表情は、あのときよりも輝いて見え、心の底から嬉しそうにも見えた。」
(日本ソフトボール協会)
讀賣新聞
【記事】 サッカー男子4強
- ロンドンオリンピックは4日、サッカー男子の日本がエジプトを3-0で破り、1968年のメキシコ大会以来となる準決勝進出を決めた。準決勝の対戦相手はメキシコ。
- 44年ぶりの4強入りをかけた準々決勝の相手エジプトとは、5月の国際大会で対戦し2-3で敗れていた。5月とはメンバーも大きく変わり、グループリーグを無失点で切り抜けた守備陣には、立ち上がりから安定感があった。日本は14分、永井謙佑が先制ゴールを決め、後半も2点を加えて完勝した。攻守の一体感、連動性というチームの強みに磨きがかかってきた。「このチームで決勝まで行きたい」。チームの思いはただひとつだ。
- サッカー女子(なでしこジャパン)は準々決勝でブラジルに2-0で快勝し、2大会連続で4強入りした。バドミントン女子ダブルス決勝で、藤井瑞希・岩垣令佳組は中国ペアに大熱戦の末に敗れたが、日本のバドミントンとしては初のメダルとなる銀を獲得いした。卓球女子団体は準々決勝でドイツを3-0で破り、初の準決勝進出を果たした。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 サッカー男子4強
- サッカー男子の日本は4日、準々決勝でエジプトに3-0で快勝し、女子に続いて4強入りを果たした。男子の4強入りは、銅メダルを獲得した1968年のメキシコ大会以来。
- 前半14分、日本は理想的な形で先制点を取った。FW永井謙佑が相手DFを置き去りにして走りだし、ペナルティエリア内でボールをコントロール、飛び出したGKとDFが接触したスキに無人のゴールに流し込んだ。今回のチームは「谷間の世代」と呼ばれる選手たちだ。5大会連続でオリンピック出場を決めた後も、なでしこジャパンの存在の陰で埋没していた。殊勲の永井は、「自分たちでもできるんだというのを見せたい」と意気込む。
- バドミントン女子ダブルスは、世界ランク5位の藤井瑞希・岩垣令佳組が決勝で同2位の中国組に0-2で敗れたが、銀メダルを獲得した。バドミントンでの日本のメダルは、男女を通じて初めてとなる。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 藤井・垣岩組、銀
- ロンドンオリンピックは4日、バドミントン女子ダブルスの藤井瑞希・岩垣令佳組が決勝で中国組と対戦し、0-2で敗れたが、この競技で日本勢で初めて獲得したメダルの色は「銀」だった。
- 常勝の中国勢に果敢に立ち向かう姿に、会場の観客も次第に惹きつけられていった。最初は相手への応援が大きかった観客席が、藤井・岩垣組が追い上げるごとに歓声のボリュームを上げていく。栄冠は逃したが、2人は主役に劣らぬ存在感を示した。「魔物がいる」と言われるオリンピックだが、ここは選手を強くする場でもある。藤井と岩垣は、ロンドンでまさに成長し、強さを増した。
- サッカー男子は準々決勝を行い、エジプトを3-0で降し、4強入りを果たした。釜本邦茂らを擁して銅メダルを獲得した1968年のメキシコ大会以来で、44年ぶりとなる。卓球の女子団体の日本は4強入りを決めた。サッカー女子(なでしこジャパン)は、準々決勝でブラジルを2-0で破り、2大会連続の4強入りを果たした。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 北海道、冬に10%節電
- 政府は今冬、北海道で2010年比10%前後の節電を要請する方針を固めた。北海道電力の電力供給の主力となる泊原子力発電所の年内の再稼働が間に合わないと判断したため。政府が9月に設置する原子力規制委員会が新しい安全基準を定め、それを元に再稼働を判断するが、新基準の作成は「年内は難しい」(経産省幹部)との声が多い。
- 北海道電は今夏、泊原発が全基停止した影響で2010年比7%の節電を求め、計画停電も準備している。しかし北海道は暖房や融雪の需要が多く、他の地域と違って冬に電力使用のピークが来るため、夏以上に大幅な節電が必要になる。
- 冬の節電は夏以上に難しいとの見方がある。日中に需要のピークが来る夏と違い、冬は深夜でも暖房や融雪などに電力を使用する。昼夜の需要の差が小さく、工場の操業時間帯を変えるなどピークをずらす対応も取りにくい。政府は東電と東北電からの電力の融通も検討するが、ケーブル容量などの問題もあり、北海道電は、小型発電機の追加や自家発電の購入などの対策を早急に詰める。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 67%「ゼロ」選択
- 将来の原発比率について政府が国民から意見を聴く会が4日、高松市と福岡市で開かれ、すべての日程が終わった。聴取会は7月14日にさいたま市で始まり、仙台、名古屋、富山など11都市で開催された。
- 発言希望者割合は、「原発比率0%」が67.9%で最も多く、次が「原発比率20~25%」の16.4%で、「原発比率15%」は10.9%だった。「その他」が4.8%あったが、その発言内容は「2030年に0%では遅すぎる」など、もっと切実な0%論が多かった。細野原発事故担当相が「最も重要な聴取会」と位置付ける福島市の会場では、「すべての原発の即廃炉」が圧倒的だった。政府はインターネットやファックスで意見を募るパブリックコメントも今月12日まで実施しており、集計はまだだが、事務局によると既に3万件超が寄せられ「0%が多い」という。
- 東京電力福島第1原発事故を受けて明確に示された「脱原発依存」の民意。問題は、こうして示された民意を、政府が今後のエネルギー政策にどう反映させるかだ。政府は今月中にも新たな方針を打ち出す予定だが、「9月の民主党代表選で争点にしたくないだけ」と見透かす発言もあった。「国民的議論」をすると言いながら、政党の都合で民意を無視し、十分な検討もせず重要なエネルギー施策を決めるとしたら、国民の強い批判を招くことになるだろう。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【リグミのコメント】 「民意」を示したいという人々が積極的に参加したエネルギー政策の意見聴取会だったのだと思います。それが「原発0%」の発言者が7割近いという結果に現れています。ただ、世の中には「サイレントマジョリティー」がいます。原発支持を明言することがはばかれる雰囲気になるとしたら、それは「民意」の一旦が隠されてしまうことになります。そういう意味で、4日から始まった「討論型世論調査(DP)」で精度の高い議論ができるかどうかに注目したいと思います。
DPの前提は、無作為抽出で討議に参加する人を募るので、より客観的なサンプルになることが第1のポイントです。第2に、言いっぱなしではなく、じっくりと小グループで討議し、さらに異なった立場の複数の専門家の意見にも耳を傾け、議論の幅と奥行きを広める「熟議」を目指します。その上で、個々人の意見が議論前と議論後でどう変化するかを調査する点が第3の特徴です。
DPの特性を利用して、政府は「15%」という中間の案に着地させたい、という意図があるのではないかという批判もあります。東京新聞もそうした恣意性の恐れを指摘しています。どのような手法も完璧ではないので、複数の方法論を組み合わせ、総体的に判断することが重要です。今回の政府の試みは、感覚や感情に偏らない「パブリックオピニオン(公論)」としての世論を確かめる試みとしてどこまで成果を上げることができるか、注目したいと思います。
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