2014.10.08 wed

2014年10月8日【新聞解説】今朝見た夢

2014年10月8日【新聞解説】今朝見た夢


【リグミの解説】

3氏にノーベル物理学賞
青色の発光ダイオード(LED)を発明し、実用化した名城大の赤崎勇教授、名古屋大の天野浩教授、米カリフォルニア大の中村修二教授の3人に、今年のノーベル物理学賞が贈られることが決まりした。6紙すべてが本日、この快挙を称える社説を掲げています。特徴的なコメントを比較します。
 
<読売新聞> ノーベル賞 世界変えた青い光を誇りたい
・ 着想から実用化まで、すべての過程が日本人研究者によって成し遂げられたことが誇らしい。日本のノーベル賞受賞者は、これで22人になる。このうち、自然科学分野が19人を占める。日本の研究者の優れた発想力と技術力の証しと言えよう。
・ 気がかりなのは、日本の研究現場で、人材不足や競争力の低下が深刻化していることだ。成果が出るまでに手間や時間がかかる技術開発分野に、若手の研究者が集まらなくなっている。
 
<朝日新聞> ノーベル賞―地道な研究の土壌守れ
・ 発光ダイオード(LED)の原理は知らなくても、現代の先進国でLEDの恩恵にあずかっていない人はほとんどいないだろう。社会に役立った研究者に賞を贈ろうというノーベルの遺志に沿うものだ。
・ 3人に共通するのは、愚直なまでに一つの道を追求し続けたことである。その粘り強さをたたえる一方で、今の日本でもこうした地道な研究が実を結ぶだろうかと心配せずにいられない。目先の成果を追い求める風潮が強まる一方で、企業研究者の貢献が軽視される傾向が、あちこちで見られるからだ。
 
<毎日新聞> 3氏に物理学賞 21世紀輝かす照明革命
・ 青色LEDは、それまでにない省エネルギーの白色光源を実現し、現代社会に「照明革命」を起こした。日本のお家芸である半導体分野の成果であり、基礎から量産まで日本人研究者の手で成し遂げた意義は大きい。「もの作り日本」にとって大きな励みであり、受賞を喜びたい。
・ 最近の日本の科学技術政策は短期間に応用につなげる「出口志向」が目立つが、青色LEDは赤崎さんが開発に着手してから製品化されるまでに10年以上かかった。それを思えば、近視眼的な成果主義ではなく、成果に結びつくかどうかわからない研究の芽を育て、支えていく仕組み作りの重要性を忘れてはならない。
 
<日経新聞> 光の革命を起こした日本人のノーベル賞
・ 何年も前から有力候補とされていただけに、満を持しての受賞といえるだろう。これまでは素粒子分野が多かったが、半導体分野での今回の受賞は、日本の物理学の水準の高さを示している。
・ 一方で心配なこともある。足元では主要学術誌に載った論文数や特許などで、日本の研究力は地盤沈下している。博士号を取った研究者の雇用が不安定で、海外で武者修行する若手も減っている。赤崎氏は受賞決定を受けた記者会見で「研究者は、はやりの研究だけにとらわれずに、自分がやりたい研究をしてほしい」と訴えた。とくに若い研究者は、この言葉を励みにしてほしい。
 
<産経新聞> ノーベル賞受賞 独創と多様性を次世代に
・ 「人類のために最大の貢献をした人」(アルフレド・ノーベルの遺言)に贈られるノーベル賞の受賞者に、日本の研究者が一挙に3人加わることを、心から喜びたい。特に2000年以降の15年で、物理学賞7人、化学賞6人、医学・生理学賞1人と計14人もの受賞者を輩出したことは、日本の科学、基礎研究の底力を示すものといえる。
・ 今の子供たちや若手研究者も、日本人のノーベル賞受賞に胸を躍らせ、大いに刺激を受けてほしい。しかし現在の研究環境で、数十年後の栄誉につながるような独創が育つか疑問もある。政府の科学技術政策は、短期的な成果や経済への波及効果が重視される傾向が強まっている。
 
<東京新聞> 赤崎氏らにノーベル賞 ものづくりの喜びよ
・ 待ちかねていたとはいえ、ノーベル物理学賞の日本人三人共同受賞の決定はうれしく、また誇らしい。ものづくりの喜びよ、また創造の素晴らしさよ。だれもが思いをはせるのは、創造の喜び、また素晴らしさではないか。日本人として、誇りに思い、心から祝福しよう。
・ 赤崎さんが、窒化ガリウムという化合物半導体に着目してLEDの研究を始めたのは70年代。扱いにくい材料だったため、世界の研究者が次々と窒化ガリウムの研究から去っていったが、その潜在能力を信じ、「われ一人荒野を行く」という心境で試行錯誤を繰り返したという。赤崎さんの穏やかな目、静かな口ぶりは、ある種の職人、つまり古きよき日本人を思い出させた。
 
ノーベル賞のスピリット
ノーベル賞は、世界でも最も栄誉ある賞ではないかと思います。人種、民族、国家、また宗教や主義主張に関わらず、「人類のために最大の貢献をした人」に贈りたいとしたアルフレッド・ノーベルの志の高さが人々の心を打つからです。
 
ノーベルが賞を思い立ったとき、かれは「ひとりの愚か者」に過ぎなかったのではないかと思います。でも、その純粋な志はやがて大きなムーブメントなり、世界中の人々を巻き込むまでになりました。ノーベルはダイナマイトの発明で巨額の富を得ました。その富を何に活かすか。彼は人類へのレガシー(遺産)を残したいと考えました。それは形だけ残る「過去の遺物」ではなく、毎年毎年更新され磨きこまれ、進歩し進化していく、「生きた遺産」です。
 
国別の受賞者数
各紙の社説は、「日本人の受賞」を喜び、同時に「日本の研究環境の劣化」を憂いています。それは自然な反応であり、大事な論点です。私も、ひとりの日本人として、同胞の快挙を喜び、また日本の研究開発環境が短期志向・成果志向に偏ってきていることが、将来にわるい影響を与える可能性を心配しています。しかし同時に、こうした反応だけではノーベル賞の本質を見誤るのではないかとも感じています。
 
2012年のデータで少し古いですが、ノーベル賞を主催するスウエーデンの受賞者数は、米国、英国、ドイツ、フランスに次いで5番目です。日本はスイス、ロシアのあとの8番目です(http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-151.html)。受賞者が多くには、過去からの蓄積が多い傾向があります。直近の10年、20年の受賞国を比較してみるのも面白いと思います。
 
ノーベル賞受賞者数で中国に追い抜かれる日
GDPなどの経済力が基盤となり、基礎的な研究を長期間かけ、成果主義や目的志向に偏らず純粋に探求できる環境を整えた国は、20年後、30年後にノーベル賞受賞者数で開花する可能性があります。読売の社説は「科学技術水準の目安となる論文発表数は、2000年前後は世界2位だったが、現在は中国などに抜かれ、5位に低迷している」と指摘しています。将来、たくさんの中国人ノーベル賞受賞者が出てくる可能性は十分あります。そのとき日本人は、どのように反応するのでしょうか。
 
TVが連日熱く報道した第17回アジア競技大会は、日本のメダルラッシュに沸きましたが、冷静に金メダル数を比較すると、中国が151個で圧倒し、日本は主催国韓国の79個に次ぐ3番目の47個でした。
http://www.joc.or.jp/sp/games/asia/2014/japan/sports/?sjag_page=medalranking
 
アジアという広大な地域は今、躍動し発展しています。スポーツで起きていることが、自然科学分野で再現される可能性は十分にあります。そのとき、スポーツのように、競う気持ちを最優先し、国家を応援するのか、それとも「人類のために最大の貢献をした人」を素直に称える気持ちになれるのか。
 
未来の日本の器づくり
その答えのヒントになるのは、ノーベル賞を受賞しているスウェーデンやテニスで英国人以外が活躍するようになったウィンブルドン大会です。同胞の成果を求めるだけでは限界があります。日本人の特性を生かし、世界に、人類にほんとうに貢献するとはどういうことなのか。健全な競争を是としつつ、競争では育たない「何か」をたいせつにする。その視点と発想が、これからの日本を真に豊かで尊敬に値する存在にするのだと思います。
 
私たち一人一人の中に、ノーベル賞に値する「何か」があるのではないか。ノーベル賞からもっとも遠いところにいると思っている私たちの集合性の中に、実はきらきらと輝くすばらしい「何か」があり、それが未来の人類を明るく照らすことを夢見ている。そんな夢を私は見たいと思います。人類が活躍できる器づくりこそ、日本人の未来のものづくりになるかもしれません。日本がアジアのスウェーデンのような存在になるというビジョン。今朝見た夢です。

(文責:梅本龍夫)



  1. ノーベル物理学賞 赤崎、天野、中村氏 青色LED開発
    http://www.yomiuri.co.jp/science/20141007-OYT1T50097.html
  2. 御嶽 死者54人に 3人発見 捜索 登山道外に拡大
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20141007-OYT1T50149.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 青色LED 3氏ノーベル賞 赤崎・天野・中村氏 省電力の照明 爆発的普及 物理学賞
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11391209.html?ref=chiezou
  2. マクドナルド営業赤字 94億円 41年ぶり、鶏肉問題打撃
    http://www.asahi.com/articles/ASGB762RZGB7ULFA03D.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 日本の3氏 ノーベル賞 物理学賞 赤崎・天野・中村氏 青色LED開発
    http://mainichi.jp/feature/news/20141008k0000m040028000c.html
  2. 3人の死亡確認 御嶽山 捜索再開 死者54人に
    http://mainichi.jp/select/news/20141007k0000e040195000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. ノーベル賞 赤崎・天野・中村氏 青色LEDを発明 物理学賞 日本の3人
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG0700M_X01C14A0MM8000/
  2. 景気「緩やか回復」維持 日銀総裁 生産は判断引き下げ
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF07H24_X01C14A0MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 物理学賞に赤崎・天野・中村氏 ノーベル賞 青色LED開発、普及に貢献
    http://www.sankei.com/life/news/141007/lif1410070038-n1.html
  2. シリア不法入国計画か 北大生出国、前日に阻止 イスラム国参加
    http://www.sankei.com/affairs/news/141007/afr1410070049-n1.html
  3. 3人発見 死者54人に 御嶽山
    http://www.sankei.com/main/topics/main-26445-t.html

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 日本人3氏 ノーベル賞 赤崎氏 天野氏 中村氏 物理学賞 青色LEDで照明に革命
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014100802000120.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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