2014.10.06 mon

2014年10月6日【新聞解説】社会を潤わす企業活動

2014年10月6日【新聞解説】社会を潤わす企業活動


【リグミの解説】

本日の日建新聞の社説は、「社会的インパクト投資」の紹介です。以下、概要です。
 
<日経新聞> 「社会的インパクト投資」を育てよう
・ 障害者や低所得者への支援など国内外には解決が望まれる数多くの社会的な課題がある。通常、これらの問題解決は政府の仕事だ。民間が投資して利益をあげる分野にはそぐわない。ところが今、「社会的インパクト投資」という社会問題解決と収益の両立を目指す投資が世界的に注目されている。
・ 具体的な事例が英国にある。出所した元受刑者の再犯率の高さに悩んでいたある刑務所は投資家から資金を集め、その資金で受刑者に対する再犯防止教育を実施した。社会的企業がそのプログラムの企画、実行を受託している。成果は出て、再犯率低下が確認された。刑務所は再犯率が下がったことで削減できる行政コストの一部を投資家に還元するという。
・ 先進各国はどこも財政は厳しく、すべての課題を行政で解決するのは難しい。そこで民間の資金と社会的企業という民間の新たな事業体の出番となる。社会的企業は柔軟な発想でこれまでの行政では思いつかなかった効率的な事業の展開が期待できる。そこに投資しても大きな利益は望めないかもしれない。しかし、ある程度の収益と「住みよい社会」という配当が得られるのなら、投資を検討する価値は十分にあるのではないだろうか。
 
「電話を全国にあまねく」
私は1979年に当時の電電公社に入社しました。現在のNTTの前進です。公共企業体と呼ばれ、公務員と民間企業の従業員の中間にあたる「準公務員」と呼ばれました。国家的事業を私企業の効果・効率で推進しようとする発想でした。最大のミッションは、すみやかに全国の事業所と家庭に電話機を普及させることでした。すべてにわたって公平に、という意味で「あまねく」という単語がいつも使われていました。
 
電電公社は通信事業を独占していましたので、こうした「社会的インパクト投資」ができました。通常の民間企業であれば、利益追求が第一となります。しかし電電公社では電話の普及が第一でした。利益追求はほとんど意識されませんでした。ただ通信手段は誰しもが必要として、電電公社は自分たちのコストに利益を上乗せした価格で販売できましたから、必然的に利益は出ました。
 
もう少し正確に言えば、東京―大阪間を中心として長距離通信というドル箱を保持していたから、過疎の村にも離島にも電話網を敷くことができたのでした。国家事業レベルで「どんぶり勘定」を許容していたから、「あまねく」電話が普及したといえます。もし厳密な管理会計制度を導入し、地域の事業所単位の利益管理を徹底していたら、地方の切り捨てがなされたことでしょう。
 
真の問題解決を図るには
日経が指摘するとおり、「先進各国はどこも財政は厳しく、すべての課題を行政で解決するのは難しい」状況です。そこで民間企業の知恵と効率を導入したいというのが「社会的インパクト投資」の背景となりますが、ここには落とし穴があることに気をつけなければなりません。日経は、英国の刑務所の再犯防止プログラムの事例を引用していますが、こうした「成功例」はよく検証する必要があると思います。
 
ビジネスの第一の目的はあくまでも利益です。社会的課題の解決は、そのための手段です。利益を上げるもっとも確実な方法は、「違い」を創り、インパクトを出すことです。しかし、そうした「違い」は、かならずシステムの他のところにひずみを生みます。それが予想外のコスト増につながる可能性は常にあります。それをまた別の企業が別の形で「違い」を創り、問題解決するというやり方ももちろんありますが、「いたちごっこ」になるリスクも想定する必要があります。
 
かといって、電電公社のような独占事業体を想定することに、もはや現実性はありません。電電公社自体、電話普及の最終局面では、独占の弊害によって組織が水膨れし疲弊していました。健全な競争を生む環境と、適正な事業規模を求めて、電電公社は解体的民営化をしました。
 
大手企業のほんとうのCSR
「社会的インパクト投資」は、複数の事業を全国(全世界)に展開し、ポートフォリオを組む企業がほんらい取り組むべきテーマではないかと私は思います。複数の事業を広い市場で展開することは、それだけである種の「社会」を形成する活動となります。複雑な事情が生じ、単純な解決策が見つからないことが多くなります。そうした中で、しっかりと運営力と経営力をみがいた企業であれば、「社会的インパクト」の公的効果の程度と「投資」が生む私的利益の程度のバランスを取れるはずです。
 
日本企業は、ここ20年ほどで、自分たちの経営の立ち位置を見失いました。「日本的経営」を語る人もいなくなりました。しかし、「日本的経営」とは「ミニ社会」を形成するビジネスモデルであったといえます。問題はその「ミニ社会」が内向きであったことです。これからは「外に開かれたミニ社会」、つまり、社会のサブシステムがネットワーク的につながるモデルが有効になると私は予想しています。
 
大手企業が推進している「CSR」(企業の社会的責任)活動は、「社会的インパクト投資」への積極的取組みによって、ほんものになっていくのではないでしょうか。社会を潤わす企業活動が日本からどんどん出るようになれば、今の社会状況は大きく変化すると思います。
 

(文責:梅本龍夫)



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