【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売と毎日がロンドンオリンピック関連です。アーチェリー男子個人の古川高晴選手の銀メダルや、バドミントン女子ダブルスの藤井瑞希・垣岩令佳組が、カナダペアを下し、決勝進出を決め、銀メダル以上を確定するなど、今まであまり脚光を浴びることのなかった競技での快挙に国中が湧きました。一方で、金メダルが「義務付けられている」男子柔道は、1964年の東京オリンピック以来初めて、金メダルゼロとなりました。
東京大会では4階級中3階級で金メダルを獲得しましたが、無差別級で神永選手がオランダのヘーシンク選手に敗れ、「柔よく剛を制す」と言われた日本の柔道の敗北に日本中がショックを受けました。それ以来、柔道発祥の国のプライドを賭けて、オリンピックでは全階級金メダルが必定となりました。しかし柔道は「JUDO」に変わったと言われて久しいです。フランスの柔道の競技人口は約20万人で日本の2倍と言われます。フランスの人口は約6500万人ですから、人口比でいけば約4倍にもなります。
正々堂々と戦い、技の切れで鮮やかに一本を取る。日本刀で一刀両断するかのごとき見事な勝ちっぷりに美しさを感じる日本人ですが、世界の「JUDO」はもっとしたたかで多様な戦い方をする方向にどんどん進化しています。体格と体力に任せ、時に狡猾ともいえる試合運びをするのが外国選手のかつての典型的な印象でした。しかしロンドン大会での戦いぶりを見ると、各国の強豪選手の技の巧みさと切れは明らかにも増しており、日本選手がなすすべもなく一本を取られる試合を何度も見ることになりました。
もし日本柔道が今後も「金メダル至上主義」で行くのであれば、目指すべき境地はとてつもなく高いと言わなければなりません。男子体操個人総合で金メダルを獲得した内村航平選手のように、圧倒的な技量と演技の美しさで冷静であるべき審判員までをも魅了し、他の有力選手ははじめから銀メダル争いに集中する、という状況を作りだす必要があります。
そのためには、米国GE社が長い年月をかけてCEO候補を社内から選別し育成していくように、4年後のみならず8年後、12年後のオリンピックに照準を定めた育成プログラムを戦略的に組む必要があります。戦略思考を欠いた「精神主義」は日本が陥りやすい罠です。「JUDO」という相対化した世界で日本柔道が勝ち続けるためには、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という 孫子の兵法に学ぶ必要があります。新しい柔道の世界が豊かに広がり、アメリカなど「新興国」も勃興しています。このことを柔道発祥の国は慶賀とし、柔道のリーダーとしての地位を維持発展させてもらいと思います。
讀賣新聞
【記事】 アーチェリー古川「銀」
- ロンドンオリンピックは3日、アーチェリー男子個人で古川高晴が銀メダルを獲得した。日本勢のメダルは、2004年アテネオリンピックの男子個人銀メダルの山本博以来となる。
- 大接戦となった準決勝は、5-5のまま、1射で勝負を決める「シュートオフ」に持ち込まれた。先行の古川が、ど真ん中の10点を射抜いた。これでプレッシャーを受けたオランダ選手の矢は中心をはずれ、古川のメダルが確定した。入れ込みすぎる性格なので「ここぞというときこそ、力を抜け」と自分に言い聞かせた。3度目のオリンピックで決めたシュートオフの完璧な1射は、古川の成長の証だった。
- 男子柔道100キロ超級で上川大樹が2回戦で敗退し、日本男子は全7階級で金メダルを逃した。1964年東京大会で柔道がオリンピック競技に採用されて以降、日本男子が金メダルゼロに終わったのは初めて。女子78キロ級の杉本美香は銀メダルを獲得した。バドミントン女子ダブルスで、藤井瑞希・垣岩令佳組が、カナダペアを下し、決勝進出を決め、銀メダル以上を確定した。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 首相、増税案10日採決指示
- 野田首相は3日、首相官邸で民主党の輿石幹事長と会談し、消費税関連法案の参院本会議採決を10日に行うよう指示した。
- 一方、自民党と公明党を除く野党7党は、3日に党首会談を開き、採決前に内閣不信任決議案を提出することで合意した。
- 野田首相は、不信任案を「全力で否決する」と強調した。ただ、自公両党が野党案に同調すれば3党合意が崩れ、法案が不成立となる可能性もある。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 アーチェリー古川「銀」、柔道男子は金ゼロ
- ロンドンオリンピック第8日の3日、アーチェリー男子の古川高晴は決勝に進んだが、韓国の選手に敗れ、銀目メダルとなった。同種目の銀は2004年アテネ大会の山本博以来。
- 柔道女子78キロ超級の杉本美香は、決勝でキューバの選手に延長戦の末に旗判定で敗れ、銀メダルを獲得した。今大会の女子柔道は、松本薫の金、上野順恵の銅に続き3個目。男子100キロ超級の上川大樹は2回戦で敗れ、柔道男子は今大会、金メダルゼロで終わった。男子が金メダルを獲得できなかったのは柔道がオリンピック正式種目となった1964年の東京大会以来初めて。
- 柔道男子は最近の5大会では、2000年シドニー、2004年アテネで各3個の金を取るなど、コンスタントに優勝者を出してきた。3連覇の野村忠宏やシドニー覇者の井上康生らのスター選手がいた「バブル時代」(関係者の言葉)。しかしバブルははじけた。スター選手は引退したあと、「若手を伸ばしきれなかった」と篠原監督は反省の弁を述べた。プライドや伝統は、一度失うと取り返すのが難しいことを、金メダルゼロが示している。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 企業収益に減速感
- 急回復を見込んでいた企業収益に減速感が出てきた。欧州危機と中国景気の変調で外需に陰りが見えるため、7月下旬以降、輸出関連を中心に2012年度の業績予想を下方修正する企業が増えている。
- 2012年度通期予想を見直した主な企業は次の通り。(1)欧州危機の余波が原因:キャノン(経常利益予想4600億円⇒3950億円)、ソニー(同1900億円⇒1500億円)、旭硝子(同1350億円⇒950億円)、セイコーエプソン(同330億円⇒280億円)、(2)中国景気の減速が原因:コマツ(同3080億円⇒2520億円)、日立建機(同680億円⇒620億円)、旭化成(同460億円⇒325億円)。
- 製造業は約50社が業績の下方修正をしたが、個人消費を支えに内需型企業の業績は、東日本旅客鉄道、H2Oリテイリング、カゴメなどの好調組を含めて底固く、上方修正も44社に上る。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 守った景観、自治か独裁か
- 東京都国立市のJR国立駅からまっすぐに延びる桜と銀杏の並木道は、昭和初期に住民が植樹したのが始まりであり、「自治」のシンボルでもある。元市長の上原公子さんは在任当時、建物を並木と同じ高さに制限する条例を定めた。そのことで今、市から3000万円払えと訴えられている。
- 上原さんは、駅前の高層ビル建設と景観をめぐる住民たちの裁判に加わり、1999年には市長選に当選した。7万人近い署名が集まり、上原市長は条例づくりに動いた。「独裁」の批判を浴びても、国立の自然環境を守るという信念はぶれなかった。第三者機関の審議会の可決を経て条例は議会で成立した。しかし業者は条例は無効として市と市長を訴え、2009年に東京地裁は「強引に政策を変更した行為は違法」という判決を出した。
- 政治家は、選挙を通じて託された民意を政策にとして実現することが求められる。ただ、多数の同意があっても、不利益を感じる人もいる。政策実現のために生じた不利益は、住民全体で責任を負う、つまりは税金で補填するのが民主主義の本来の姿のはずだ。「政治は中立ではいられない。変革が求められる今の時代はなおさら。政策の継続性が求められるだけなら、選挙の意味がない」と上原さんは語る。それは国立の景観に惚れ込んだ「市民」としての意地でもある。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【リグミから一言】 政治とは何か、考えさせられる事例です。果たして東京地裁の判決は妥当なのか、疑問を感じます。同時に、政策の継続性と新規の取組のバランスをどう取るかという問題。自民党と民主党の2大政党制が機能するかどうかも、国の長期施策の基本に、ある種の継続性の担保があって初めて機能する部分もあります。
裁判の判例主義にもそうした考えがあります。一方で、退官間際の裁判官の中には、新しい判決の潮流を作りたいという動機で、過去判例とは大きく異なる判断をするケースもあると聞きます。今回の東京地裁の判決にも、そういう意思がどこか働いたのでしょうか。
「変えるべきところ」と「変えてはいけいないところ」のバランスをどうするか。芭蕉が唱えた「不易流行」の在り方が、今の日本の大きなテーマであることを実感します。
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