【リグミの解説】
本日の日経新聞は、原発の選別について、一歩踏み込んだ社説を掲げています。主な論点を紹介します。
<日経新聞> 原発の選別に備えた体制づくりを急げ
・ 電力の供給をどこまで原子力発電に頼るのか。この問いは原発をどう減らしていくのかと表と裏の関係にある。
・ 古い原発の場合、新規制基準を満たすには、安全確保のための改修工事に多額の投資が必要になるとみられている。安全性を高めて再稼働を目指すのか、廃炉にするのかは電力会社が判断すべきことだ。再稼働させても、安全対策の費用に比べて得られる収益が少ないなら廃炉を選ぶ判断も出てくるだろう。
・ 電力会社が一斉に廃炉に踏み出す可能性がある。だが、廃炉を後押しする環境が整っていない。廃炉を選びたくてもできず、老朽原発が放置されるようでは安全上も問題だ
企業家の判断を超える
日経社説は、老朽原発の再稼働と廃炉の選択の難しさを次にように比較しています。
再稼働のむつかしさ:
1 古い原発で新規制基準を満たすには多額の投資が必要
2 電力会社は廃炉費用を積立ているが放射性廃棄物の処分費用を加えれば一層膨らむ
3 廃炉費用は電気料金上振れ要因となる
廃炉のむつかしさ:
1 廃炉が決まると原発の資産価値がなくなり電力会社は特損を計上しなければならず財務悪化する
2 解体後の廃棄物の処分方法も決まっていない。廃炉は数十年かかる作業だ。人材やノウハウを共有し、作業を効率的に進める仕組みが必要
3 廃炉を選びたくてもできず老朽原発が放置されれば安全上の問題となる
日経の指摘を読むと、新規制基準を満たして再稼働するにはお金がかかり、廃炉にするにもお金がかかる、と読めます。これだけだと、どちらの方がよりお金がかかり、どちらがお金をかけた価値(投資効果)を生むかという判断になりそうです。しかし、原発のむつかしさは、「投資」と「効果」の関係を、ほんとうはだれも正確にはつかめていないところにあります。想定されるリスクや費用が広範囲におよび、企業家の通常の判断軸を超えているともいえます。
お金だけの問題ではない
こういう問題こそ、CSR(企業の社会的責任)が問われます。大手企業はおしなべてCSR部門をもっています。CSR担当者たちは、自社が社会において善なる存在であるために何を成すべきか、真剣に考え試行錯誤を繰り返していると思います。しかしCSR取組みの大きな問題は、自社のみで発想するところにあるのではないでしょうか。そもそも社会的責任を果たすには、企業が社会に開かれている必要があります。そして責任を果たすことの中には、「私たちはこの問題について解決方法がわかりません」と率直に表明することもあると思います。電力会社のCSRは、そこから始まると私は思います。
つぎは大手企業の出番です。電力を消費しない企業はありません。特に電力消費量の多い企業は、原発問題の社会的責任を共有している立場ともいえます。CSR部門の人々は、率先して自社を社会に開いていく姿勢を示す好機がここにあります。さまざまな業種や産業のCSR担当者たちがネットワークを組み、電力会社のCSRを一緒に追究し、老朽原発の再稼働と廃炉の問題に智慧を出し合い、解決への道筋をつけていく。社会的志の高い人々にとっては、挑戦に値するテーマです。そしてこれは、企業活動が個別の利益追求と社会全体の利益の増大をどうバランスさせ両立させていくかの、格好のケーススタディーともなります。
「人類の惑星」と「猿の惑星」
昨日、映画『猿の惑星 新世紀ライジング』を観ました。絶滅の危機に瀕する人類と、進化しサンフランシスコ郊外の森に一大コミュニティーを築く猿たちとの交流と衝突が今回の映画の最大のテーマです。『猿の惑星』のオリジナル作品が発表された1968年当時は、白人社会と黒人社会の衝突というテーマが背景にありましたが、今日的テーマではキリスト教文化圏とイスラム教文化圏の衝突を意識させるところもあります。同時に、もっと身近で根源的なテーマも実感させられました。それが電気の問題です。
猿たちは、電気に依存せず文明を開化させつつあります。しかし、サンフランシスコ市内に身を寄せる少数の生き残った人類は、電気なしでは文明を維持できず、猿のコミュニティーに出向き、そこに残る小型水力発電所の再開をめざします。そのやりとりがやがて、人類と猿類の戦争へとつながってしまいます。現代日本では、電力問題は「原発VS再生可能エネルギー」という図式で語られがちですが、この映画を観て、根本のテーマは「電気文明VS非電気文明」にあることが理解できました。
現実には電気のない生活は考えられません。それは文明のない生活だからです。しかし電力を生み出す方法については、選択の余地があります。発電の方法だけでなく、社会全体でどう電気の問題を考えていくか。文明のあり方の問いかけでもあります。電気の恩恵にたっぷり浴している私たちは、ほんとうの意味で「持続可能な社会」をどう築くか問われている。そのことに気づかされます。
(文責:梅本龍夫)
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