【リグミの解説】
基準地価
国土交通省が7月1日時点の基準地価を発表しました。本日の読売、毎日、日経、東京の4紙が社説を掲げています。特徴的な論点を比較します。
<読売新聞> 基準地価 都市の回復を地方に広げたい
・ 地価の回復は、地方再生を図るうえでも大切だ。多くの人が「住みたい」と思う魅力的な街づくりが進めば、地域が活気づき、地価も改善するはずだ。地方の地価動向は、安倍政権が重要課題に掲げる「地方創生」が成果を上げているかどうかのバロメーターともなろう。地場産業や観光の振興、子育て支援など、やるべきことは山積している。政府と自治体が連携し、各地域の実情に合った再生策を加速してもらいたい。
<毎日新聞> 地方の地価下落 格差拡大防ぐ手立てを
・ 地方の地価下落が長く続くのは、少子高齢化や若者の流出で、土地の利用が先細りになり、地域経済が衰退していることを映し出している。2020年の東京五輪を控え、大都市との経済格差、資産格差が一段と広がる懸念は強い。手をこまねいていては大都市との格差が拡大するばかりだ。「住みたい」「行きたい」と思わせる街づくりが土地の利用を活発にする。それが地価の安定にも結びつく。
<日経新聞> 地価上昇は広がり始めたが
・ 今回の基準地価の特徴は、これまで大都市部中心だった上昇地点が地方に広がり始めた点だろう。札幌や仙台、福岡のような地方中核都市にとどまらず、金沢市や茨城県つくば市などでも上昇地点が増えている。とはいえ、地方圏全体では依然として下落している。人口減少という構造的なマイナス要因が足かせになっている。先駆けて上昇に転じた沖縄をみてもわかる通り、観光客をどう呼び込むかが、本格回復のひとつのカギになる。
<東京新聞> 基準地価 景気の停滞感が表れた
・ アベノミクスは地価改善に一定の効果があったとはいえ、その恩恵に浴したのは主に大都市である。景気や地価の回復が遅い地方にとっては、むしろ物価上昇など副作用の方が大きかった。地価や景気の先行きは不透明感が増している。消費税再増税を凍結するとともに、旧来型のばらまきではなく、費用対効果を追求した効率的な経済政策に努めなければ、デフレに逆戻りしかねない。
経済の見方
経済とは不思議なものです。地価が上昇すれば、不動産価格が上がり、一般の人々が住宅を買える可能性は下がります。消費増税前に駆け込み需要があったのは、当然の消費行動です。ところが、みなが安いものにしか手を出さなくなると、「デフレ」になり、経済全体のパイがらせん状に縮小していき、結果として安いものでも買えなくなる(買いたくなくなる)状況に陥ります。
そこで多くの専門家は、「ゆるやかなインフレ」が良いと考えます。将来の経済のパイが大きくなり、モノの価格が上がると思えば、企業は先行投資に意欲的になりますし、消費者はモノの値段が上がる前に欲しいモノを手に入れようとします。また資産のある人々は、資産価値の上昇を期待し、投資物件を手に入れようとします。ものごとがらせん状にいい方向に動くというわけです。
経済のパイが縮小する現実
しかしこの伝統的な経済法則は、ひとつの仮説にすぎません。いわば未来を予測するひとつのシナリオであり、今後も有効かどうかは、本当は誰もわかっていないのではないでしょうか。その中で、間違いなく起きることがわかっていることがあります。それが人口減少です。
人口問題は、20年前に起きたことが、かならず20年後に影響する法則性です。子どもの数が減った中、その人々が住宅取得年齢に達したとき、どれだけ住宅需要があるか、マクロな数字はすぐ計算できます。その影響がもっともはやく出るのが、経済力で東京都と格差が大きい地方です。地価下落が大きかった青森県、秋田県、鳥取県などが典型です。
地方再生モデルは可能か
日本の経済は、東京都が中心になり、東京一極集中を進めることで下支えしようとしているように見えます。企業戦略でいえば、それは「選択と集中」というやり方であり、企業再生の定番となります。しかし政治や社会のテーマ、そしてマクロ経済の課題は、ミクロな企業運営のようにはできません。選択されず売却やシャットダウンの対象になる事業(地方)も、自分たちの一部だからです。東京の繁栄の恩恵が、あまねく地方に及ばない限り、国家運営としては合格とはいえなくなります。
マクロ経済の問題を考えるとき、地価上昇といった個別の事象から論じること以上に大事なことがあります。「人口」という全体のパイをどうするかが第一です。そして第二に、パイの配分である「選択と集中」をどのように判断するかということです。「地方再生」というなら、3箇所ぐらいの地方を選択し、そこの人口が集中するようになる施策を徹底して実行するぐらいの戦略性が必要になると思います。東京の人口が、10万人、100万人単位でそうした地方に流出していくぐらいのインパクトある経済政策が生まれれば、日本は大きく変わるような気がします。
(文責:梅本龍夫)
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http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140918-OYT1T50165.html - 日本、人道支援27億円「イスラム国」対策 国際協調
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- 3大都市圏の住宅上昇 基準地価 6年ぶり、0.5%
http://www.asahi.com/articles/ASG9L5H55G9LULFA02S.html - 司法取引導入 法案提出へ 法制審答申 取り調べ可視化も
http://www.asahi.com/articles/DA3S11357464.html - スコットランド住民投票 独立是非、午後にも判明
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- IWC 調査捕鯨先延ばし 決議 日本、再開方針変えず
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http://mainichi.jp/shimen/news/m20140919ddm001030203000c.html - 基準地価 1.2%下落 3大都市圏 6年ぶり住宅地上昇
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- 円安効果 明暗くっきり 一時108円後半 株1万6000円回復
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDF18H16_Y4A910C1MM8000/ - 三大都市圏 住宅地が上昇 14年基準地価、6年ぶり 全国は下落
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS1800M_Y4A910C1MM8000/?nbm=DGXLASDF18H0N_Y4A910C1EA2000 - 保険料 健康なら安く 厚労省が新制度 医療費抑制狙う
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS18H20_Y4A910C1MM8000/
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- 円安 6年ぶり108円台 東証、1万6000円回復
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140918/eca1409180914006-n1.htm - 三大都市圏 住宅地 6年ぶり上昇 基準地価 地方圏も下落率縮小
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140918/fnc14091816510015-n1.htm - 独立是非 午後に判明 スコットランド
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- 踏切事故情報 年齢・性別× 国交省、昨年末から不開示
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091902000156.html - 東京圏住宅地↑ 基準地価 二極化くっきり 地方圏の8割↓
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014091902000154.html
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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