2014.09.05 fri

2014年9月5日【新聞解説】無謬神話の鎧を脱ぐ

2014年9月5日【新聞解説】無謬神話の鎧を脱ぐ


【リグミの解説】

朝日新聞と池上彰氏
朝日新聞の連載コラム「池上彰の新聞ななめ読み」で、池上氏が朝日の「従軍慰安婦報道の検証記事」の内容を批判した記事原稿を送ったところ、掲載を拒否されました。その後朝日は一転して掲載を決定しました。池上さんは、今後のコラム執筆の辞退を申し入れていましたが、朝日が掲載拒否の判断を謝罪したことを受け、今回の記事掲載を容認しました。コラム継続の有無については、白紙としています。産経新聞と東京新聞がこの問題について社説を掲げています。
 
<産経新聞> 慰安婦問題 おわびすべき対象は誰か
・ 朝日新聞が8月5、6日付で「慰安婦問題を考える」と題して掲載した大型検証記事では、韓国済州島で「慰安婦狩り」に関わったなどとする吉田清治氏の証言について、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」としながら、どこにも「おわび」の字句はなかった。まず、おわびすべき相手は、誰だったのだろう。虚偽の吉田証言などで長く尊厳を傷つけられ続けた、日本と、すべての国民だったはずではないのか。
・ 池上さんはコラムの冒頭で「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と記した。この問いかけに対しても、朝日新聞は何も答えていない。
・ 朝日新聞は、対象に、挺身隊との混同記事を加えたうえで取り消す記事を明示し、社として公に謝罪すべきだ。国会招致といった報道に対する公権力の介入を招かないためにも、メディア間の相互批判と、報道機関としての責任ある対応が不可欠である。
 
<東京新聞> 池上コラム問題 言論を大切にしたい
・ ジャーナリストの池上彰さんが朝日新聞に連載中のコラムがいったん掲載を拒まれた。朝日の記事を批判的に論じた原稿だった。寛容の精神を貫き、批判をも包み込む言論空間を大切にしたい。
・ (池上氏が)殊に問題視したのは、過ちを認めて訂正したのに謝罪がないことだ。「お詫びがなければ、試みは台無しです」という。特集を読んだ多くの人たちが共通に抱く率直な気持ちだろう。当たり前とも思えるコラムの掲載を拒んだのは全く理解に苦しむ。 表現や言論の自由を守るべく最前線に立つ同じ報道機関として、一時的にしろ掲載を見合わせたのは残念だ。読者の不信を増幅させないよう善後策を期待したい。
・ 最近の身の回りで強まる表現活動や言論空間を制限する動きは見過ごせない。多様な考えが民主主義を強くする。異論や反論を排除せず、熟慮する場がつくられるべきだ。
 
産経VS朝日
産経新聞は、朝日の「慰安婦報道」を厳しく批判してきたメディアです。産経は朝日とは主義主張が大きく異なるメディアですので、「慰安婦」の問題と、戦時をどうとらえるかという歴史認識に差が生じるのは、仕方がありません。そこは価値観の違いを認めた上でディベートをすべきことです。ただ、どのような歴史認識も、「事実」を曲げることは正当性をもちえません。まして「虚偽の報道」はあってはならないことです。
 
それでも人間のやることに完璧はないのですから、池上氏がコラムで書いているように、1992年当時、産経新聞が吉田清治氏の証言に疑問を呈した段階で、徹底検証し、訂正または削除に踏み込むべきだったのだと思います。間違いを認めたくなかったのでしょうか。
(池上氏のコラムはリンク参照:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11332230.html
 
無謬神話を脱ぎ捨てる
官僚は、自分たちは常に正しい判断をするという「無謬神話」を堅持するものだと批判されますが、大手メディアもまた、自分たちの報道内容は常に正しく、正義であるという建前にとらわれがちです。論語に、【過ちては改むるに憚ること勿れ】とあります。この言葉は、どのような組織も、そして私たち一人ひとりもまた、座右の銘にしないといけないのだと思います。
 
産経新聞が朝日を批判するだけでなく、朝日と価値観や主義主張が似ている東京新聞も厳しい社説を掲げていることが、今回の事象の意味を象徴しています。東京新聞は、昨今の言論空間への締め付けに強い懸念をもち、憂慮を深めています。そんな中、自由な言論空間を押し広げ、堅持すべき大手新聞社が、自ら自由な言論を封殺するような判断をいったんは下したことを、どうとらえているのか。朝日は批判と疑問に誠実に応える義務があります。
 
産経の社説の末尾に、「国会招致といった報道に対する公権力の介入を招かないためにも、メディア間の相互批判と、報道機関としての責任ある対応が不可欠である」とあります。これは、立場は異なれど、同じ新聞社として、自分たちのミッションをともに遂行しようという朝日新聞への呼びかけであり、応援メッセージであると思います。「無謬神話」の鎧を脱ぎ捨てたとき、組織も個人も一皮むけ、成長し進化していきます。朝日新聞の奮起に期待します。
 

(文責:梅本龍夫)



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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



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    http://www.asahi.com/articles/ASG944V24G94ULZU00N.html
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    http://www.asahi.com/articles/ASG944RHKG94UTIL029.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGM04H2S_U4A900C1MM8000/
  3. 「経済最優先」信じたい 安倍政権 第2章
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO76653950V00C14A9MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



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(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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