2014.09.04 thu

2014年9月4日【新聞解説】人事の民主主義

2014年9月4日【新聞解説】人事の民主主義


【リグミの解説】

本日は6紙の社説はすべて、安倍改造内閣についてです。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 安倍改造内閣 経済再生へ挙党態勢を固めよ
・ 石破茂前幹事長の処遇をめぐって一時、首相と石破氏の対立が表面化した。石破氏がラジオ番組で幹事長続投を公然と希望するなど異様な展開となり、首相は石破氏を無役にすることも検討した。だが、最後は、双方が歩み寄り、石破氏は入閣した。一昨年秋の総裁選を争った両氏が、決定的な対立を回避し、挙党態勢を維持したのは妥当な判断である。政権復帰から1年8か月余で党の結束が乱れるようでは、国民の信頼を得られない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140903-OYT1T50196.html
 
<朝日新聞> 安倍改造内閣―国民合意の政治を望む
・ 「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍首相にしてみれば、集団的自衛権の行使を認めた7月の閣議決定は、大きな「成果」なのだろう。だが、私的懇談会の報告を受けた与党協議による性急な議論の進め方は、憲法9条に基づく戦後の安全保障政策の大転換という内容の重さとともに、世論の分断を招いた。閣議決定後の主な報道機関の世論調査では、おしなべて半数が行使容認に反対や評価せず、8割が議論や検討が十分でなかったなどと答えている。より大切なのは党内融和ではなく、国民合意だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 
<毎日新聞> 改造内閣発足 中韓と関係構築を急げ
・ 石破氏が首相からの安保法制担当相への就任要請を安保政策をめぐる見解の相違を理由に拒み、結局は別のポストで入閣した経過には疑問を抱かざるを得ない。石破氏は集団的自衛権行使を幅広く認める「国家安全保障基本法」の早期制定が持論で、慎重派の首相と違いがあるとされる。基本政策をめぐり相いれないのであれば閣外に身を置き、総裁選で論争を挑むのが筋だ。政権から石破氏を排除すれば対立が激化しかねないと懸念した首相と、孤立をおそれた石破氏が妥協した結果の地方創生担当相就任とすれば、せっかくの新設ポストが泣く。
http://mainichi.jp/opinion/news/20140904k0000m070163000c.html
 
<日経新聞> 経済再生こそが改造内閣の使命だ
・ 改造内閣が評価されるかどうかは、この顔ぶれで何を目指すかにかかっている。要職に就いたのは首相と思想的に近い面々が多い。保守派からは「集団的自衛権の次はいよいよ憲法改正だ」との声も出ている。国民のいまのニーズの最大公約数はそこだろうか。首相は8月に月刊誌に発表した論文で「経済成長こそが安倍政権の最優先課題」と宣言した。アベノミクスは一定の成果を上げているものの、全国津々浦々に波及しているとは言いがたい。来年の統一地方選挙対策といわれようが、日本経済の再生こそが安倍政権の歴史的使命であるとの決意をみせねばならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76588530U4A900C1EA1000/
 
<産経新聞> 安倍改造内閣 日本再生の司令塔となれ
・ 集団的自衛権の行使容認に伴う関連法案は、来年の通常国会に提出される。江渡氏は法案の起草にあたり、自衛隊の行動に必要以上の制約をかけないよう留意し、国会答弁に備える必要がある。改造の目玉である5人の女性閣僚起用と併せて注目したいのは、衆院当選3回の稲田朋美前行政改革担当相が党四役ポストの政調会長に抜擢されたことだ。保守派の論客であると同時に、憲法改正を強く主張してきた。いわゆる「安倍カラー」の根幹である憲法問題について、執行部内で積極的に発言できる人物を配置した点を評価したい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140904/plc14090403080008-n1.htm
 
<東京新聞> 安倍改造内閣が発足 国民の声に聞く耳を
・ 安倍氏が首相に返り咲いてからの一年八カ月余りを振り返るとどうか。国民に寄り添った政治の実現に努力してきたと胸を張って言い切れるのだろうか。自らの主張のみを正しいと思い込み、国民の中にある異論を十分にくみ取って、不安に思いをめぐらせたと言えるのだろうか。象徴的なものは、外国同士の戦争への参戦を可能にする「集団的自衛権の行使」問題である。首相は今年七月、政府が長年、違憲としてきた憲法解釈を一内閣の判断で変更して、行使を容認する閣議決定に踏み切った。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014090402000161.html
 
読売VS毎日、朝日・東京VS産経、そして日経
上記で引用した主張の違いは、わかりやすいポイントを選び出したものですが、各紙ともそれ以外にも重要な論点を出しています。できればリンク先の社説全文をお読みいただければ、より全体感を得られると思います。
 
その上で、特徴的な視点を比較すると、読売新聞が現在の安倍政権のモメンタムを維持することを重視。これに対して毎日新聞は政策論争を避けず、誰がリーダーになるかを問うべきという論調です。内容は石破氏の対応と処遇についてです。
 
朝日新聞は、安定政権となっていることに一定の評価を与えた上で、国民不在の政策決定プロセスを批判。特に集団的自衛権を取り上げています。東京新聞も同様な主張ですが、国民の声を封じる方向に動いているのではないかと、より強い懸念を示しています。これに対して産経新聞は、集団的自衛権を積極評価した上で、関連法案の整備を急ぐべきとしています。また憲法改正論議も進めるべきとしています。
 
いっぽう経済紙の日経は、第二次安倍内閣が「経済最優先」を掲げることを評価したうえで、幹部に首相と同じ価値観の保守的は閣僚を据え、「集団的自衛権」や「憲法改正」を優先事項にしていく可能性に疑問を呈しています。法人減税を実行し、岩盤規制に切り込み、成長戦略の実現に集中すべき、と主張しています。
 
組織運営の要諦
人事は、組織運営の要諦です。「誰がリーダーか」「誰がフォロワーか」を決める要のルールは人事権です。フォロワーは、自分の人事権を預けることの同意するとき、その人物をリーダーと認定します。そしてリーダーはフォロワーのためにもっともふさわしい人事案を考え、実行するものです。この組織論理は、自民党という組織にも基本、あてはまっているようです。いや、政治の世界の住人の最大関心事もまた、人事なのかもしれません。
 
であればこそ、人事とは何か、リーダーとフォロワーの関係とはどういうものであるべきか、深く考察すべきと思います。民主主義とは、フォロワーに主権があり、フォロワーの意思でリーダーを選ぶ制度です。そしてリーダーの働きを監視し(もちろん協力を惜しまずいっしょに努力し)、必要あればリーダーの入れ替えをします。
 
民主主義は、リーダーとフォロワーが対等な関係です。先進的なビジネスの世界では、この考え方や価値観が当たり前になりつつあります。政治の組織は、民主主義を守り発展させる要の活動です。政府の要人たちが、人事をどう受けとめ、どう行動するか、その本質を見ていきたいと思います。

(文責:梅本龍夫)



  1. 安倍改造内閣「実行実現」へ重厚布陣 経済・地方創生に全力
    http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20140904-118-OYTPT50168/list_NEWS%255fMAIN
  2. 拝啓 安倍晋三様 長期政権 考えるな 特別編集委員 橋本五郎
    http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20140904-118-OYTPT50165/list_NEWS%255fMAIN

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 第2次安倍改造内閣 発足 政権安定を優先 主要閣僚留任、役員に重鎮
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11332375.html
  2. 新聞協会賞3年連続受賞「徳洲会、猪瀬氏に5000万円」本社特報
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11332371.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 安倍改造内閣 地方・女性に重点 首相「政策大胆に」
    http://mainichi.jp/select/news/20140904k0000m010155000c.html
  2. 停戦枠組みで合意 露ウクライナ首脳協議
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140904ddm001030128000c.html
  3. 本社に新聞協会賞「太郎さん」など 認知症不明者報道
    http://mainichi.jp/select/news/20140903k0000e040294000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 首相「経済を最優先」安倍改造内閣が発足 地方創生に重点
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO76595500U4A900C1MM8000/
  2. 習氏、日中改善に意欲 抗日記念日演説 歴史認識はけん制
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM03H27_T00C14A9MM8000/
  3. 鉄道輸送 異業種で連携 イオン、まず花王と コスト・CO2削減
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ0306H_T00C14A9MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 経済優先で「実行実現」第2次安倍改造内閣発足
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140903/plc14090322330033-n1.htm
  2. 習主席「日中関係発展を」重要講話 歴史認識では牽制
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140904/chn14090400270002-n1.htm
  3. 「イスラム国に裁き」米大統領、記者2人殺害で
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140904/amr14090408350004-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 「安倍路線」さらに加速 第2次改造内閣発足
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014090402000131.html
  2. 製鉄所爆発 5度目黒煙 愛知県警 新日鉄住金捜査へ 15人けが
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014090402000129.html
  3. 危険ドラッグ 都も緊急指定 手続き短縮へ条例改正案
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014090402000132.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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