2014.09.03 wed

2014年9月3日【新聞解説】文学賞と民主主義

2014年9月3日【新聞解説】文学賞と民主主義


【リグミの解説】

香港の新しい選挙制度について、読売、朝日、産経が批判的な社説を掲げています。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 香港長官選挙 自治を形骸化する民主派排除
・ 行政長官は従来、各界代表で構成する「選挙委員会」の委員1200人による間接選挙で選出されてきた。委員の大半は親中派が占め、民主派の候補者の当選は事実上、不可能だった。
・ 全人代は今回、憲法に相当する香港基本法に基づき、住民が直接投票する「普通選挙」の導入を認めた。だが、同時に、親中派で固める「指名委員会」を新設し、その半数以上の支持を得ることを立候補の要件とした。
・ 習政権の選択は、自治の進展ではなかった。むしろ、香港の真の統治者は北京の共産党政権である、と宣言したに等しい。自治の進展を許せば、国際社会の影響が強まり、将来的に香港の制御が困難になりかねない。そんな警戒心が、習政権の強硬姿勢の裏側にあるのだろう。
 
<朝日新聞> 香港のトップ―普通選挙と言うけれど
・ これまでは、経済界代表などからなる1200人の「選挙委員会」が長官を選出していた。それが、初めて広く市民の投票にかけられるのだから、その点だけみれば画期的ではある。
・ しかし新制度では、1200人の「指名委員会」をつくり、その過半数の支持がなければ候補者になれない。指名委員会の構成は現在の選挙委員会と同様で、親中派が多数を占めるのが確実という。
・ 新制度を通じてうかがえるのは、中国本土とのビジネスで潤う経済界を通じて香港をコントロールしようとする中国政府の姿勢だ。返還以前も中国共産党は統一戦線工作として香港の企業家らを取り込んできている。
 
<産経新聞> 香港の長官選挙 民主化の後退は許されぬ
・ 返還後の香港の憲法、基本法は普通選挙による行政長官選出を目指すとうたい、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)も2017年長官改選からの普選導入を、07年に決定した。しかし先月末に全人代が採択した選挙改革は、実質的に親中派主体の組織で候補者を事前に選び、自由な立候補を封じるものだ。
・ 中国がこうまでして香港トップ選びを操ろうとするのは、普通選挙では香港が独り歩きし、そのうねりが大陸にも押し寄せかねないと恐れているからだろう。
・ 中国が「一国」のみを意識して「二制度」をなし崩しにしていく政策を取り続ける限り、香港、マカオの返還の先に描いてきた「一国二制度」モデルによる台湾の統一など、到底おぼつかない。
 
一国二制度
「一国二制度」と呼ばれる中国と香港の関係は、微妙なバランスの上に立っているように見えます。香港が英国から中国に返還される過程で決められたことですが、本来は台湾の統一をにらんだ施策ともいわれます。「二制度」と聞くと、政治体制が異なるような印象を受けますが、本来は経済制度の違いを指しています(参照:Wikipedia)。
 
現制度の「選挙委員会」は、一種の間接選挙ですが、委員が選ばれるプロセスなど、ちょっと解説を読んだ程度では、その仕組みと実態を理解しにくいものがありますが、香港のふつうの人々の意思を十分に反映した制度には見えません。市民が直接投票できるようになるなら、それは前進といえそうですが、どうもそうではないようです。各紙の解説にあるように、親中派で固める「指名委員会」を新設し、あらかじめ候補者を絞るからです。
 
文学賞の選考過程
話はずれますが、出版社などの文学賞をめざす新人小説家は多数いると思いますが、その選考過程のことを思い出しました。選考委員の大物小説家や文芸評論家などが実際に読んで判断するのは、せいぜい5作品程度です。その5作品をあらかじめ先行するのは、出版社の編集者たちです。しかし編集者たちも忙しい身であり、全応募作は見きれません。そこでさらに予備選考を外部に依頼する場合があります。
 
出版社の文学書は、その出版社の方針や哲学にもとづき、どんな新人を発掘したいか定義し、それに見合った選考メカニズムを作るのだと思います。仮に外部委託した予備選考、編集部選考、選考委員の決定という3段階があるとして、そのすべてのステップで出版社の方針や哲学が機能すれば、結果として一番良い作品に章が与えられることになります。しかしもし外部委託という一番出版社の目が届きにくい予備選考段階で、何か重大な不備や不正が行われたらどうでしょうか。素晴らしい作品が日の目を見ない可能性があります。
 
民主主義のコスト
民主主義というのは、面倒な制度です。出版社の文学賞のように、候補作品をあらかじめ絞っていくことで良質な作品を効率よく選考する仕組みを作ると、不正やゆがみを生む可能性があるので、これを回避します。要するにどんな作品でもいきなり本番の選考委員会にはかられるようにする必要があります。あらかじめ誰かの息のかかった候補作しか出ないのであれば、それは民主主義ではありません。だから、民主主義はひょっとすると、もっとも良質な作品(候補者)が受賞(当選)することを最優先する制度ではないのかもしれません。
 
出版社(国家)の編集方針や哲学(政治的指向性)を経ない「生な作品」(市民のありのままの声)を反映する制度をめざすが民主主義ともいえます。そのことのコスト(不効率や稚拙さなど)は大きいものがあります。しかし、これを恐れたり、疎んじたりすると、もっと大きなコストを結局は支払うことになるのではないでしょうか。たとえ、不効率で稚拙であっても、市民自らが自分たちの意思を示し、選考結果に責任を負い、学びを得ていろいろなことを改良していくことが、結局は、政治と社会を前進させていくのだと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. きょう内閣改造・党人事 幹事長に谷垣氏 厚労・塩崎、経産・小渕氏
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140903-OYT1T50001.html?from=ycont_top_txt
  2. 政府機 飛行情報筒抜け 外国製アプリ ネットに位置・経路 防衛省要請で改善
    http://www.yomiuri.co.jp/it/20140902-OYT1T50160.html
  3. 錦織 全米8強
    http://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20140902-OYT1T50103.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 自民幹事長に谷垣氏 経産相 小渕氏 総務相 高市氏 きょう内閣改造
    http://www.asahi.com/articles/ASG9272C5G92UTFK011.html
  2. 特許 無条件で会社のもの 社員の発明 政府、方針固める
    http://www.asahi.com/articles/ASG924QNWG92ULFA00K.html
  3. 原発避難計画 国が関与 川内に職員派遣 自治体任せから転換
    http://www.asahi.com/articles/ASG923TJXG92TIPE010.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 幹事長に谷垣氏 きょう内閣改造 小渕氏は経産
    http://mainichi.jp/select/news/m20140903k0000m010157000c.html
  2. 未発表原案 熊本で発見「苦海浄土」に新章
    http://mainichi.jp/feature/news/m20140903k0000m040193000c.html
  3. 錦織8強 日本人92年ぶり
    http://mainichi.jp/sports/news/20140902k0000e050252000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 自民幹事長に谷垣氏 経産 小渕氏 厚労 塩崎氏
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE02H08_S4A900C1MM8000/
  2. 「インドでモノづくりを」モディ首相 企業進出へ環境整備
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM0201A_S4A900C1MM8000/
  3. 日欧間の航空賃物 統合 全日空・ルフトハンザ シェア3割に
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ0205V_S4A900C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 幹事長に谷垣氏 経産 小渕氏 復興 竹下氏 改造内閣きょう発足
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140903/plc14090305010002-n1.htm
  2. 錦織 92年ぶり8強
    http://sankei.jp.msn.com/sports/news/140902/oth14090215450014-n1.htm
  3. 一般永住者 摘発最多に 取得要件を緩和、急増/生活不安要因か 警察当局
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140903/crm14090305070001-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 吉永さん映画 題材の喫茶店「岬」36年人情物語 全焼・・・常連客ら再建 千葉・鋸南
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014090302000109.html
  2. 9月も厳しい台所 主要野菜 高値続く
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014090302000110.html
  3. 主要6閣僚留意 安倍内閣きょう改造
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014090302000108.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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