【リグミの解説】
ソーシャルビジネス
ソーシャルビジネスと呼ばれる活動が日本でも盛んになっています。地域などが抱える社会問題をビジネス的な手法で解決しようと、会社や事業を立ち上げる動きが広がっています。本日の日経新聞がこの話題を社説で取り上げいます。
<日経新聞> 社会起業家を育てよう
・ 社会起業家について法律などの明確な定義はまだない。NPO法人では働く親に代わり風邪などの子供を随時預かるフローレンスや高校生に大学生との対話の場を提供するカタリバ、株式会社では低価格で簡易な健康診断を受けられるケアプロなどがある。
・ 多くは売り上げと寄付で事業を回す。子育て支援、まちづくり、高齢化対策、教育などの分野で成功例が増えつつある。大手流通業のショッピングモールがケアプロの検査コーナーを設けるなど、企業との協力も進みつつある。
・ 高齢化や格差、地方の衰退など従来の政策では解決できない課題が増える。国も地方も財政は厳しく、ばらまき的な福祉も難しい。限りある資金や人を有効に使い、困っている人や地域を効果的に救う。そんな社会起業家の育成に、日本も力を入れてはどうか。
公助と自助、そして共助
日経新聞の読者の中にも、ソーシャルビジネスに関心を持っている人は少ないと思いますが、一般の認知度はまだまだ低いのではないでしょうか。社説記事で取り上げた日本の事例のフローレンス、カタリバ、ケアプロは、この分野ではかならず名が上がる「老舗」です。こうした組織は、行政がカバーしきれず、既存のビジネスの関心対象でもない領域にサービスを提供し、あるレベルの成功を収めつつあります。
行政が対応する「公助」と、自分のことは自分で対処するという「自助」の間に、地域住民同士などがお互いを助け合う「共助」という活動があり、近年注目されています。公助が財源の問題などから十分なケアができなくなると、自助へのしわ寄せがきます。バブル崩壊後、経済が長期低迷期に入り、税収が減ると、それに呼応するように「自己責任」という言葉が時代の空気を代弁するようになりました。
自由と自己責任、平等と連帯責任
米国のように、個人の自由のために独立を勝ち取った歴史をも国家では、「自由」と「自己責任」がワンセットのものと認識されています。日本は、皇室の長い伝統や武士階級の支配がつづき、明治維新後も国家が「お上」と位置づけられてきました。個人の自由よりも、大きな存在(「お上」)の庇護のもとで、人々は「平等」を重んじてきた面が強いと思います。「平等」と「自己責任」は、あまり相性がよくありません。あえて言えば、「連帯責任」の方が「平等」を維持する方法として利用されてきたのではないでしょうか。
「お上」である国や地方自治体が財源不足で「公助」が十分できなくなり、しかし「自己責任」を伴う「自由」を日本人は中途半端にしか理解していないとしたら、ここは、「共助」の在り方を積極的に追及する必要がありそうです。そこでソーシャルビジネスを志向する社会起業家が脚光を浴びることになります。
善意とお金
社会を良くしたい、利己的な小さな自分を超えて、人々の役に立ちたいと考える若者が増えているといいます。利益を第一義とするビジネスよりも、無形の社会価値の増大をめざすソーシャルビジネスの方が、何か有意義で生きがいややりがいを感じられるという人は、世代を超えて増えています。
ただ、現実は甘くありません。この世は、基本的にお金で回っています。ソーシャルビジネスや「共助」の活動は、人々の「善意」に依存する部分が少なくありません。NPOなどは、常勤のスタッフも薄給が多く、ボランティアで働く人々に支えられているケースが多いといいます。最近は「有給ボランティア」という考え方も出てきていますが、一般には「善意」は無償で提供するもの、つまり無料でいただくものという前提があります。
富裕層の社会的使命
考えてみれば、「公助」は、財宝をたくさんもった「お上」が恵んでくれているわけではありません。国民のお金を税金という形で集め、再配分しているだけです。その財源が不足する一方で、世界を見渡せば、天文学的な資産を獲得する富裕層がどんどん生まれています。日本も、戦後長らく続いた「平等」な社会が、貧富の格差という形でじわじわと社会のあり方を変貌させています。
ソーシャルビジネスは、ビジネスですから、お金が上手に集まり、お金を上手に増やす工夫が必要です。人々が喜んでお金を出す仕組みやサービスを作り、新しい付加価値を創造するのが社会起業家のミッションです。同時に、富裕層になった人々にも、お金を社会に還元する義務があるのではないでしょうか。ソーシャルビジネスは、ソーシャルな活動ですから、国富の再配分という役割を担っています。富裕層の富は、個人の財産であるとともに、国富の一部です。応分の税負担はしていると思いますが、それ以上の「何か」を考えることも大切です。
「自由と自助」の国、米国でも、アメリカンドリームを達成した富裕層は、寄付活動や社会活動を積極的に行い、「共助」の基盤を支えています。日本がもし、「平等と共助」の国でありたいと思うなら、機能不全を起こしている国や自治体の「お金の回り方」を補完し、代替する意味で、積極的な寄付行為を率先垂範する人が出てきてほしいと思います。社会起業家たちは、そうした貴重なお金を、本当の意味で社会に役立つ形で生かしていく現場責任者です。現場を育てる人がいれば、社会はより豊かで、より住みやすい場所になります。
(文責:梅本龍夫)
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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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