2012.07.28 sat

国会及び政府の事故調査報告書についての会長声明

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国会及び政府の事故調査報告書についての会長声明


今回の福島第一原発事故に関する調査報告に関しての意見が、良くまとまっていると感じましたので、重要と思うところを抜粋しまとめました。
 
詳しい内容は、リンク先を参照してください。
日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:国会及び政府の事故調査報告書についての会長声明
 
 
7月5日
東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)が報告書
7月23日
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)が最終報告書
 
国会が具体的な事故について、調査委員会を立ち上げ、報告書をまとめたことは憲政史上初のことであり、政府と国会の二つの場で事故調査が併行して実施されたことは、それ自体が大きな意味のあること
 
◆二つの報告書が一致して認定している点
 
東京電力と国による事前の津波対策とシビアアクシデント対策が不適切であり、本件事故が東京電力と国による人災である
 
国会事故調の報告書
 
東京電力
「規制された以上の安全対策を行わず、常により高い安全を目指す姿勢に欠け」
「原子力を扱う事業者としての資格があるのか」
 
規制機関
「規制当局が事業者の虜(とりこ)となり、規制の先送りや事業者の自主対応を許すことで、事業者の利益を図り、同時に自らは直接的責任を回避してきた」
「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた」
 
 
◆二つの報告書が結論において食い違いを見せている二つの点
 
1.事故原因に津波だけでなく地震が関連しているかどうか
 
国会事故調報告書
事故の主因を津波のみに限定すべきでない
 
政府事故調
1号機について「地震発生直後から津波到達までの間、その閉じ込め機能を損なうような損傷を生じた可能性は否定される」としたが、「注」の中で、「閉じ込め機能を喪失するような損傷に至らないような軽微な亀裂、ひび割れ等が生じた可能性まで否定するものではない」として、国会事故調の見解を否定するものではないことを示した。
 
国会事故調は津波に原因を限局していた昨年12月の中間報告における政府事故調の立場について「既設炉への影響を最小化しようという考えが東電の経営を支配してきたのであって、ここでもまた同じ動機が存在しているようにも見える」と厳しく指摘していたところであり、政府事故調が軽微とはいえ損傷を否定しなかったことには重大な意味がある。
 
 
2.「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)の情報公開の遅れ
 
本件事故では、原子炉が炉心溶融を起こしており、放射性物質が広範にまき散らされる危険性を持っているという基本的事実が秘密にされた。
 
そして文部科学省などはSPEEDIにより、大気中の放射性物質の拡散予測を行っており、米軍には3日後に報告されていたが、これらは市民には速やかに公表されず、2011年3月23日に枝野官房長官が国会質問に答えて計算例を紹介し、原子力安全委員会も試算結果を公表した。
 
国会事故調は原子炉の状況を予測する「緊急時対策支援システム」(ERSS)とSPEEDI は、「基本的に一定の計算モデルをもとに将来の事象の予測計算を行うシステムであり、特にERSS から放出源情報が得られない場合のSPEEDIの計算結果は、それ単独で避難区域の設定の根拠とすることができる正確性はなく、事象の進展が急速な本事故では、初動の避難指示に活用することは困難であった」としている。
 
政府事故調は放射性物質がサイトから北西方向に広がった2011年3月15日から16日にかけて計算結果が公表されていれば、住民は放射能濃度の濃い北西方向に逃げないで済み、被ばくは最小限に抑えられたと評価
 
国会事故調の指摘するとおり、個別の地点での正確な被ばく量を積算できるだけのデータがもたらされなかったことは事実であるが、どの方角に逃げれば被ばくを低減できたかが問題となっていることからすれば、政府事故調の結論の方が放射性物質の降り注ぐ中を逃げまどった住民の疑問に正面から答えていると評価できる。
 
 
これら二つの報告書の公表に先立つ6月20日、原子力規制委員会設置法が成立し、既設炉に新たな審査基準を適用していくバックフィット制度が導入され、新たな基準に適合しなければ運転は認められないこととなった。
 
現在、大飯原発と志賀原発1、2号炉の敷地内に活断層が存在する疑いが指摘され、大飯原発3、4号機は既に政治判断によって運転が再開されているが、万が一にも深刻な事故を起こさせないという原発の安全審査の趣旨に照らせば、活断層調査は原子炉を停止させた上で実施することが正しい判断である。

 
◆国会事故調も政府事故調も事故原因の未解明な点についての調査の継続を求めている。
 
国会事故調
国会に原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として「原子力臨時調査委員会(仮称)」を設置することなどを提言
 
政府事故調
「人間の被害」の全容について、総合的な調査を行ってこれらを記録にまとめ、被害者の救済・支援復興事業が十分かどうかを検証することを求めている。


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