2014.07.17 thu

2014年7月17日【新聞解説】原発のディベートをするために

2014年7月17日【新聞解説】原発のディベートをするために


【リグミの解説】

川内原発の再稼働審査
原子力規制委員会は、九州電力川内原発1、2号機について、新規制基準に「適合している」との審査書案を了承しました。このことで、川内原発は、再稼働の前提となる安全審査に事実上合格したことになります。今朝は6紙すべてがこの件について社説を掲げています。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 川内原発「合格」 再稼働への課題をこなそう
・ 原子力発電所の再稼働に向けて前進したが、実現への課題も多い。地元の同意取り付けなどを着実に進めることが重要である。電力供給は綱渡りで、料金高騰が生活と産業を直撃している。安全審査を加速させ、原発の再稼働を軌道に乗せねばならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140716-OYT1T50180.html
 
<朝日新聞> 原発再稼働を問う―無謀な回帰に反対する
・ 原発事故が日本の政治と社会全体に投げかけた広範な問いはまだ何も答えられていない。ところが再稼働をめぐる議論はいつの間にか、原発の性能をめぐる技術論に狭められた。事故が起きた時の政府や自治体、電力会社の対応や、避難計画のあり方など、総合的な備えはほとんど整っていない。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 
<毎日新聞> 川内原発再稼働へ 教訓学ばぬ見切り発車
・ 私たちはこれまで、原発に頼らない社会をできる限り早く実現すべきだと主張してきた。一方で、そこに至る過程で、必要最小限の原発再稼働を否定するものではない。ただし、条件がある。福島の教訓を徹底的に学び取り、過酷事故を防ぐと同時に、再び事故が起きても住民の被害を食い止める手立てを整えておくこと。さらには、政府が脱原発依存の道筋を描いた上で、エネルギー政策全体の中に原発の再稼働を位置付けることだ。いずれの点でも、現状で川内原発の再稼働は合格とは言えない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20140717k0000m070182000c.html
 
<日経新聞> 川内再稼働へ国は避難計画で責任果たせ
・ 全国16カ所の原発周辺の135市町村をみても、避難計画がまだない自治体が4割弱にのぼる。自治体には防災の専門知識をもつ職員がほとんどいない。国の中央防災会議が専門家を派遣するなど、政府がもっと支援すべきだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74365490X10C14A7EA1000/
 
<産経新聞> 川内再稼働 早期実現でリスク減図れ
・ 自民党の国会議員の間でも規制委に対し、審査の迅速化を求める声が上がっている。原発停止で余分にかかる火力発電の燃料輸入代が年間3・6兆円に達している現状を考えれば、当然の要請だ。毎日、100億円の札束を燃やして電気を得るという国富の流出に思いを致すべきである。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140717/trd14071703350002-n1.htm
 
<東京新聞> 内原発・審査「適合」 ゼロの目標はどこへ
・ 制委の審査には、四十年寿命、新増設はなし、という大前提があることを忘れてはならない。従って、新基準への適合とは、せいぜい、当面の稼働を認める仮免許といったところだろう。(民主党政権時の)「2030年代原発ゼロ」は政権の独断というよりも、一定の民意を集めて成り立った。なし崩しの再稼働は、かえって国民の不信を深めるのではないだろうか。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014071702000179.html
 
各紙の主張を指数化すると
原発問題に関する各紙の社説を「サードビュー」的にマッピングすると、以下のとおりになります。原理的(理念に基づく主義主張)に再稼働賛成なのが産経新聞、原理的((理念に基づく主義主張)に再稼働反対なのが東京新聞で、この2紙が議論の両サイドのOBラインを形成しています。
 
つぎに、新聞の基本路線として再稼働賛成の論調なのが読売、逆に基本路線として再稼働反対なのが朝日新聞です。産経と東京が指数で「1」と「10」ぐらい離れているとしたら、読売と朝日は「2」と「8」ぐらいの感じです。
 
そして、現実を見据えて再稼働が必要でありかつ現実的な原発推進政策を求めるのが日経で、現実を見据えて再稼働が必要と認めつつ、あるべき総合的な原発政策を求めているのが毎日です。指数でいうと、日経が「3」毎日が「7」という印象です。
 
建設的なディベートの前提
すべての社説に目を通してみて、原発再稼働は日本にとってどういう意味があるのか、よく考える必要があるとあらためて感じました。これだけ異なった主張をひとつの方向性に束ねるのは容易なことではありません。
 
ただ、希望がないわけではありません。現実の課題と、長い目で見た全体的なテーマの両方を、一貫したロジックに組み立てる「システム思考」の片りんを、毎日新聞の社説に感じたからです。毎日のような社説の組み立て方で、再稼働賛成(原発推進)を主張する社説があれば、「原発賛成」と「原発反対」が原理的にぶつからず、当面の課題と長期的な解決策について、建設的なディベートをすることが可能になるのではないでしょうか。
 
そして、この仮想ディベートが本当に建設的に展開できたら、単純に勝敗を決するのではなく、一致して解決に取り組める対話的手法に移行していくことも可能になると思います。原発問題は、私たち全員の課題であることを考えれば、社説で言いっぱなしでなく、こうした試みに一歩踏み出すメディアがあっても良いのではないかと思います。今回でいえば、毎日と日経の2紙は、共同プロジェクトを試みる基盤があるのではないでしょうか。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 秋に再稼働 準備本格化 川内原発 安全新基準 初の「合格」
    http://www.yomiuri.co.jp/science/20140716-OYT1T50175.html
  2. ベネッセ流出 SE逮捕状 きょう請求 警視庁 情報持ち出した疑い
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20140717-OYT1T50018.html?from=ytop_top
  3. ハマス内務省を空爆 イスラエル
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20140716-OYT1T50171.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 政権 再稼働加速へ 川内原発 新基準に初の「適合」責任あいまいなまま
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11247583.html
  2. 派遣SEの男を きょうにも逮捕 ベネッセの情報 流出容疑
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11247586.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. ローソンが成城石井 買収 クイーンズ伊勢丹も検討
    http://mainichi.jp/select/news/20140717k0000m020179000c.html
  2. 川内原発「合格」国、再稼働判断せず 規制委「安全 企業努力を」
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140717ddm001040182000c.html
  3. 日英ミサイル共同研究 新武器三原則NSCが初判断
    http://sp.mainichi.jp/select/news/m20140717k0000m010175000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 川内原発、10月にも再稼働 高浜・玄海、次の候補
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS16015_W4A710C1MM8000/
  2. 品川周辺、5000億円再開発 JR東日本など 超高層ビル8棟
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB16H2D_W4A710C1MM8000/
  3. 派遣社員きょう逮捕 ベネッセ漏洩 秘密複製の疑い
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDG16H0G_W4A710C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 川内原発 秋にも再稼働 規制委 安全新基準に「合格」
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140716/dst14071622470011-n1.htm
  2. 高松宮殿下記念 第26回世界文化賞に5氏 アフリカから初受賞
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/140716/art14071618200007-n1.htm
  3. ベネッセ流出 派遣SEきょう逮捕 顧客情報複製の疑い
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140717/crm14071708050002-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 「厳格審査」に穴 川内原発再稼働「適合」規制委
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071702000146.html
  2. 閣議決定急ぎ 法案先送り 審議は10ヶ月後 集団的自衛権
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014071702000147.html
  3. ヘイトスピーチ「日本は対策を」国連人権委
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014071702000148.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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