2014.07.15 tue

2014年7月15日【新聞解説】笑えない落語

2014年7月15日【新聞解説】笑えない落語


【リグミの解説】

沖縄返還秘密文書情報開示
沖縄返還を巡る密約文書の開示請求訴訟で、最高裁が文書の不開示を確定する判決を出しました。
 
原告の毎日新聞元記者の西山太吉氏は、「判決は、外交文書は相手が傷つくから捨ててしまうこともあると言っているが、密約文書は国民共有の財産。永久保存しなきゃいけない。(一方で)政府の隠し事をさらし出した意義はあった」と語っています。外務省は、「国の主張を認めた高裁判決が是認された。政府としては、国民が重要な歴史事実を検証できるよう、適切な行政文書の保存・管理に努める」とのコメントを出しました。
 
朝日、毎日、東京の3紙が社説を掲げています。主要な主張を比較します。
 
<朝日新聞> 沖縄密約文書―説明なしではすまない
  • あるべき文書がなぜないのか。このまま、説明なしではすまされない。沖縄密約文書の在をジャーナリストとして突き止めた西山さんは刑事罰を受けた。その一方で、闇に葬った政府関係者がとがめなしでは、あまりにバランスを欠くのではないか。そもそも政府が「文書が存在しない」といって公開を免れられるのなら、情報公開制度は成り立たない。
 
<毎日新聞> 沖縄密約判決 隠ぺい体質黙認するな
  • もし、廃棄があったならば、誰の指示の下でなぜ廃棄されたのか、徹底的に調査するのが筋だ。だが、最高裁はそうした点に踏み込まず、情報公開の請求側に高いハードルを課した。さらに外交文書について、他国との信頼関係を理由に「保管の状況が通常と異なる場合も想定される」と述べた。外交文書を特別扱いし、国民の知る権利をないがしろにしていると受け取られかねない。
 
<東京新聞> 沖縄密約判決 「国家の嘘」を許すのか
  • 最高裁はまるで情報公開の流れに逆行する初判断をした。戦後の重要な領土返還交渉での「国家の嘘(うそ)」を司法が隠蔽(いんぺい)するのと同然ではないか。重要情報が米国からもたらされても、日本側は「ない」と言い張ってきた状況は異様である。正しい情報を持たない国民は正しい判断ができないことをあらためて強調したい。
 
命の落語
がんになり、抗がん剤の投与を続けながら、各地の病院などで病気をテーマにした落語を続けている樋口強さんの一席を聴く機会がありました。ご自身の闘病生活を題材に、家族との関係や医者とのことなど、いったん深刻な病に侵されたとき、どのようなことが起き、どんな心理状態になるか、笑いの中に多くの教訓が込められた落語でした。
 
その中でも特に印象に残ったのが、「『何も問題ない』と証明することが一番むつかしい」というものでした。病気になった人は、自分の病の程度がどれぐらいなのか、とても気になります。心配でたまりません。そこで医者や家族に本当のことを教えてほしいと頼みます。でも、誰もが「大丈夫ですよ、心配いりません」と言う。すると、もっと心配になってくる。もし本当は問題が「ある」なら、調べて、調べて、調べつくせば、真実があぶりだせるかもしれない。しかし「ない」ことを証明するにはどうしたらいいのか。そんな患者の心理はとてもよくわかる気がしました。
 
「何も問題ない」
さて、今回の沖縄返還に伴う密約をどう考えたらいいでしょうか。米国の公文書開示で密約の存在は証明されました。吉野文六元外務省アメリカ局長の証言もなされました。樋口さんの落語に喩えれば、病院が提携する検査機関から公式にがん細胞の存在と症状の進行度合いを示す文書を入手し、主治医のもとで治療にあたった元研修医も病状を証言しているのに、病院側と主治医はいまだに「何も問題ない」と言っているようなものです。
 
かつて医者は典型的な「上から目線」の職業でした。医者の診察や治療に疑問を呈することはご法度でした。しかし時代が変わり、医者と患者は「対等」になり、医者は患者に「説明責任」を果たすことが求められ、患者は「セカンドオピニオン」を取るのが当たり前になりました。
 
国家という医者は、国民という患者の命を守る義務があります。そのために、時には機密を優先し、手術など緊急措置を施す必要があることは理解できます。しかし、術後になぜそのような措置をとり、それはどのような効果をもたらしたのか、今後はどうなるのか、誠意をもって説明し、患者の疑問に応える責任と義務があります。樋口さんは、「笑いは最高の抗がん剤」と言います。医者は、患者本人と家族や関係者が笑いに包まれることを願って治療をします。しかし、今回の最高裁の判決と国の今までの対応は笑えません。

(文責:梅本龍夫)



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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



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(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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    http://mainichi.jp/select/news/20140715k0000m010109000c.html
  3. 密約文書 不開示確定 「請求者に立証責任」 沖縄返還
    http://mainichi.jp/select/news/m20140715k0000e040001000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



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    http://sankei.jp.msn.com/sports/news/140714/wco14071409050009-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 沖縄密約の歴史 闇に 最高裁「請求者に立証責任」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071502000130.html
  2. 経済打撃でも武力行使 首相、対象拡大に言及 集団的自衛権
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014071502000129.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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