【リグミの解説】
集団的自衛権の閣議決定
7月1日、安倍政権は集団的自衛権の閣議決定をしました。各紙は7/2と7/3の社説で賛否の議論を展開しています。各紙の7/2社説の特徴的な主張を列記します。
<読売新聞 7/2> 集団的自衛権 抑止力向上へ意義深い「容認」
・ 「戦争への道を開く」といった左翼・リベラル勢力による情緒的な扇動も見当違いだ。自国の防衛と無関係に、他の国を守るわけではない。イラク戦争のような例は完全に排除されている。
<朝日新聞 7/2> 集団的自衛権の容認 この暴挙を超えて
・ 戦後日本が70年近くかけて築いてきた民主主義が、こうもあっさり踏みにじられるものか。憲法の基本原理の一つである平和主義の根幹を、一握りの政治家だけで曲げてしまっていいはずがない。日本政治にとって極めて危険な前例になる。
<毎日新聞 7/2> 歯止めは国民がかける
・ イラク戦争を支持した反省と総括もないまま、米国に「見捨てられないため」集団的自衛権を行使するという日本の政治に、米国の間違った戦争とは一線を画す自制を望むことは、困難である。
<日経新聞 7/2> 助け合いで安全保障を固める道へ
・ 一国平和主義の発想は通用しなくなった。今回の決定はこうした流れに沿ったものだ。だからといって、安倍政権の議論の運び方に問題がなかったわけではない。まず、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を、ここまで急ぐべきだったのか疑問だ。
<産経新聞 7/2> 集団的自衛権容認 「助け合えぬ国」に決別を
・ 反対意見には、行使容認を「戦争への道」と結び付けたものも多かったが、これはおかしい。厳しい安全保障環境に目をつむり、抑止力が働かない現状を放置することはできない。仲間の国と助け合う態勢をとって抑止力を高めることこそ、平和の確保に重要である。
<東京新聞 7/2> 9条破棄に等しい暴挙 集団的自衛権容認
・ 政府がきのう閣議決定した「集団的自衛権の行使」容認は、海外での武力の行使を禁じた憲法九条を破棄するに等しい。憲政史上に汚点を残す暴挙だ。政府自身が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使や、海外での武力の行使を一転して認めることは、先の大戦の反省に立った専守防衛政策の抜本的な見直しだ。
賛成派と反対派の立場
今回の集団的自衛権の閣議決定は、大きく言って2つの論点があります。1つは手続き論であり、2つ目は内容の妥当性です。新聞メディアは、上記の社説比較を見れば明らかなように、主張は真っ二つに割れており、建設的な対話をするのり代(重なる部分)がほとんどありません。読売と産経は、手続きも内容も適切でほぼ全肯定、朝日、毎日、東京は手続きも内容も認められずほぼ全否定というものです。唯一、日経だけは内容は適切だが手続きが拙速で不適切と批判しています。
かみ合わない論点
この2つの論点が「かみ合わない」大きな理由は、時間軸が違うからです。集団的自衛権の閣議決定に賛成する立場のメディアは、東西冷戦が終結した過去20年の間に安全保障環境は大きく変化した、今回の閣議決定はようやく現実に対応できる大きな一歩を刻んだと評価します。反対の立場のメディアは、東西冷戦後も第二次世界大戦後に日本が選択した立場は有効であり、今回の閣議決定は眼前の現実対応の問題ではなく、未来の日本の在り方に禍根を残すと主張しています。賛成派は現実主義的、反対派は原理主義的とも見えます。
入れ替わる原理主義と現実主義
ところで、賛成派は、これで「普通の国」に大きく近づける、といいます。いっぽう反対派は、「特殊な国」でいいではないか、とは主張していません。現実の安全保障問題があることは認めています。それは個別的自衛権や自衛隊や海上保安庁の関連法案の整備で対処できるし、それを優先すべきとも主張しています。この点では、賛成派が原理主義的で反対派は現実主義的という側面も見えます。
「普通の国」「特殊な国」
私は、日本人論がかくも隆盛を誇る国は、「普通の国」にはなれないと感じています。日本は、よくもわるくも、「特殊の国」であるとの自覚が必要です。それは魅力的な個性であり、大きな価値ともなるものです。そして、「特殊」を磨けば、世界が今まで気づかなかった大きな理想の輝きを示し、人類が進む未来の道標にもなりえます。基本的人権や民主主義などの価値観と規範は、西洋諸国からもたらされました。しかし、ほんとうの平和と調和の思想と規範は、まだどの国も打ち出せていません。
ソフトパワーを議論する楽しさ
政治家も、メディアも、私たち国民の一人ひとりも、自分たちは「特殊」だから、特別によく練った発想で自分たちにふさわしい国家の在り方を模索すべきだという出発点に立つべきではないでしょうか。今回の集団的自衛権閣議決定の賛成派も反対派も、冷静に「日本人論」「日本論」に興じていもらいたいと思います。眉間にしわを寄せ、口角泡を飛ばす激論ではなく、わくわくする面白さを胸に秘め、一緒に探求しませんか。日本の魅力に気づけば、それは大きな力となります。私は、ソフトパワーがハードパワーを大きく凌駕する国家になる理想を追求したいと思います。
(文責:梅本龍夫)
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