2014.06.27 fri

2014年6月27日【新聞解説】プロは対等の精神を発揮する

2014年6月27日【新聞解説】プロは対等の精神を発揮する


【リグミの解説】

経営の監視
株主総会のシーズンです。本日6/27が今年の「集中日」となります。957社が開催予定で、昨年の「集中日」と比較して101社少ないそうです。
(引用:時事ドットコム
分散化の傾向は続いていますが、できるだけ混乱や面倒を避けたいという経営者側の本音が「集中日」という現象に表れている面はあると思います。
 
経営の監視という意味で、株主総会は最も公式の場となります。日々の経営の現場では、取締役会が株主の負託を受け、経営の監視にあたるのが建前です。そこで重要になるのが社外取締役の位置づけです。混乱や面倒を避けたい経営者は、社外取締役の扱いをどう考えているのでしょうか。東証1部上場企業では、社外取締役を選任する企業が74%で、昨年より12ポイント増えました。本日の朝日の社説は社外取締役を推奨する内容です。
 
<朝日新聞> 社外取締役―お飾りにしないで
・ ほとんどの日本企業では、大半の取締役が社内で出世した結果として選ばれており、社長に「ノー」と言いづらい。それに対し、株主や社会の代表として発言できるのが社外取締役だ。社内の論理と異なる視点から社長の提案にも異論を投げかけ、結果によっては経営責任を追及することが期待される。
・ ただ、社内出身の取締役に比べ、会社についての情報量は少ない。きちんと機能するためには、最新の経営情報を常に提供するなど、会社側の環境づくりが欠かせない。
・ もとより人選は大切だ。なぜ今、その人を選ぶのか、どんな働きを期待するのか。会社が置かれた環境や戦略との関係で、具体的な狙いを説明できないような人選では困る。外部の視点を経営にどう生かすか。そこが問われている。
 
社外取締役の「義務化」の弊害論
会社法改正の過程で社外取締役選任の義務化が検討されましたが、経団連などの強い反対で見送られました。ただし、改正法は社外取締役の導入を強く促し、導入しない企業は「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会で説明しなければならないと定めました。
 
IT企業の雄、サイバーエージェントの藤田晋社長は、上場後に社外取締役を置いた経験から「義務化」に反対する考えを日経ビジネス5/12号に掲載しました。以下のロジックで、経営監視という意味では、社外取締役は現実的でなく、情報開示の強化の方が効果的だとしています。
 
・ 自社に適した社外取締役を探すのは大変な作業
・ 会社のことや業界動向や市場の変化などを知ってもらわないと取締役会の議論が深まらない
・ 社外取締役を務められる能力をもつ人材は限られる。義務化すると人材の取り合いになる。結果、本来能力的に適さない人をやむなく社外取締役に就けることになる
・ 形だけの社外取締役を置いてもガバナンスの強化にはつながらない
・ うしろめたいことをしている企業は形ばかりの社外取締役を置いて監視強化とみせかけ、裏で悪事を続けることができる
・ 取締役の義務化よりも、情報開示を強化する方が、企業の透明性を高められる
 
「社外取締役がいない」と「女性取締役がいない」
個人的経験から言えば、藤田氏の指摘は理解できます。社外取締役に本来求められる役割をきちんと果たそうと思ったら、適任者は限られると思います。しかし同時に、この典型的な議論は、女性の幹部登用や取締役就任でも繰り返しなされてきています。いわく、「適任者がいない」「候補者の意欲や自覚が足りない」等々。
 
もともと男性中心主義の組織社会において、マイノリティーの立場にある女性が「適任者」とみなされるには、相当の努力と運の良さが必要です。適任者が「いない」のではなく、「いさせない」ようにしているともいえます。
 
同様のことが社外取締役にもあてはまる可能性があります。日本の企業社会は、女性を登用しようとしないように、プロ経営者を育成するメンタリティーがありません。プロ経営者が増えれば、経験のない事業分野でも、社外取締役として識見を発揮することは可能です。
 
カギはプロ経営者の育成
では、プロ経営者はどうやって育成するのか。たくさんの議論が必要なテーマですが、一番基本にあることは、組織階層上の上下関係(上司と部下の関係、上位職と下位職の関係)にかかわらず、働く人々がいかに「対等なメンタリティー」で働けるか、という課題です。経営者マインドとは、自分より上位のものと対等にわたりあう知的メンタリティーをもつことです。このことを自覚できる経営者がどれだけいるか。企業経営の健全性を測るリトマス試験紙だと思います。
 
社内取締役を「下に見る」ことと、社外取締役を先生などと称し、「上に見る」マインドの経営者は、対等の精神を理解できていません。言い換えれば、経営課題について、他者と真剣に「対話」する心構えができていないということです。長い時間がかかっても、企業組織のあらゆる階層で、上下関係にかかわらず「対等な対話」ができる組織文化を作り上げることが、企業のほんとうの経営力となります。そのような会社は、社外取締役を必要とせず、むしろ、社外取締役候補を社会に輩出できる存在になると思います。
 

(文責:梅本龍夫)



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    http://www.yomiuri.co.jp/national/20140626-OYT1T50176.html
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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 軍にODA解禁 提言 中国牽制 民生から転換 有識者懇
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11211633.html
  2. 米の対テロ軟化 懸念する中国 世界新秩序 米中を追う
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11211731.html
  3. 原発コスト 火力より割高 専門家試算 福島第一の対策費増加
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11211734.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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    http://mainichi.jp/select/news/20140627k0000m010102000c.html
  2. ノ社元社員 別論文もデータ改ざんか 京都府立医大 解析に加わる
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  3. ODAで他国軍支援 災害援助など 有識者懇提言
    http://mainichi.jp/select/news/20140627k0000m010044000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 三菱自が小型車供給 クライスラー アジアで販売
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ260CL_W4A620C1MM8000/
  2. 正社員・派遣、幅広く職探し 厚労省方針 規制緩和で窓口統一
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2601V_W4A620C1MM8000/
  3. 税収、予算1.6兆円上回る 13年度 法人・所得税ともに増
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2601C_W4A620C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 露、クリミア併合 民族主義のうねり 世界 再び混沌の時代へ 硝煙の一世紀 第一次世界大戦の影
  2. 両陛下、戦没者にご供花 沖縄 きょう対馬丸記念館ご訪問
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/140626/imp14062622050001-n1.htm
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(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



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    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014062702000140.html
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    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014062702000139.html
  3. 「都議会 自浄力ない」女性蔑視やじ 都民ら勉強会

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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