【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売と毎日が「ロンドンオリンピックの女子柔道と女子卓球」、朝日と東京が「水俣病の救済策の申請締切」です。
一見まったく関係ないふたつの報道内容ですが、ここには共通する1つのテーマがあります。それは「足切り」です。そもそもオリンピックは出場できる選手は限られています。つぎに決勝進出や8以内入賞といったラインがあります。そしてもちろんメダルを獲得できるかどうか。当然最後は金メダルです。日本柔道などは、「金メダル以外は評価ゼロ」という伝統があり、たったひとつの椅子を目指して日本全国の柔道選手が刻苦勉励しています。
一方の水俣病の救済策ですが、これは国の認定基準という「足切り」があります。しかし対象外の地域と年齢で、水俣病に準じると想定される症例が、民間の診療施設でつぎつぎと見つかっている、と朝日は報道しています。さらに、水俣病と認定されると世間の偏見にさらされる可能性があり、そのことを恐れて、申請を躊躇する人たちもいます。潜在患者には、実に多様な事情や背景があります。認定基準という「足切り」と申請期限という「足切り」によって、救済されるべき人々が救済されない問題をどう考えるべきなのでしょうか。
オリンピックは、世界最高の競技の場です。競技は「結果の不平等」が大前提です。一時のゆとり教育の現場の映像のように、手をとりあって徒競走をしたり、全員を一等賞にする姿は、切磋琢磨し、競い合い、高め合う人間の美徳を理解しない愚行でした。一方で弱者や被害者には、「結果の平等」を担保する方法論や思想が必要です。東日本大震災の被害認定でも、基準値を設けると、「救済されるべき人が救済されないケース」と、「救済されるべきでない人が救済されてしまうケース」が出ました。これはこうした活動で常につきまとうジレンマです。
それでも国には、公害を絶対に繰り返さないという理念のもと、被害者を徹底救済し「結果の平等」をめざすという強い意志が必要です。我が国のアスリートが金メダルを目指すように、日本国の政府・行政もまた、それぞれのサービスにおいて次のレベルを、そして理想とする最高レベルを、是非目指して欲しいです。「足切り」がなければ事は先に進みません。しかし「足切り」に安住すれば進歩はありません。
讀賣新聞
【記事】 上野、耐えて「銅」
- ロンドンオリンピックは31日、柔道女子63キロ級の上野順恵が準々決勝で敗れたが敗者復活戦を制して3位決定戦に進出、優勢勝ちで銅メダルを獲得した。
- 18歳で体重別日本一のタイトルを取ってから11年、29歳でたどり着いた夢舞台のオリンピックは、姉の雅恵さんの金メダルには及ばない無念の銅メダルとなった。上野選手はしぶとくポイントを重ねるタイプで、一本へのこだわりが強い日本柔道界では印象度が劣り、オリンピックは遠かった。泥臭く戦うと決めたロンドンの晴れ舞台。世界ランク1位の実力者は、精一杯の闘志を燃やし、メダルを獲得した。
- 上野と同じく、敗者復活戦を制して3位決定戦に進出した柔道男子81キロ級の中井貴裕は、一本負けでメダルを逃した。卓球女子シングルスでは、石川佳純が男女を通じて日本初の4強入りを果たした。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 水俣病、真の救済遠く
- 半世紀を超す水俣病問題の「最終解決」をうたう水俣病被害者救済法に基づく救済策の申請が31日、締め切られた。
- 救済法は、水俣病の症状がありながら国基準では患者と認められない被害者をできる限り救済することを掲げている。しかし同法は、来年4月末をめどに対象者を確定すると定めるため、7月末はそこから逆算した「ぎりぎりの期限」と国は説明してきた。
- だが、民間の集団検診では対象外の地域や年齢の人々にも次々と症状が見つかっている。そして、偏見を恐れて申請をためらう人が残る問題がある。熊本県と新潟県の被害者団体は、「潜在的被害者が取り残される」として、期限見直しを求めている。しかし環境省は「国会の意思」として押し切った。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 石川、卓球女子日本勢初の4強
- ロンドンオリンピック第5日、卓球女子シングルスの準々決勝で、石川佳純が価値、シングルスの日本勢で初の4強入りを決めた。福原愛は準々決勝で敗れた。
- 石川は持ち味のフォアハンドの強打で中国出身の難敵、シンガポールのワン・ユエグを攻め抜き、ラリーでも打ち負けなかった。ロンドンオリンピックの関係者向け資料で「地球上で最も多く旅をしているプレーヤーの一人」と紹介されるほど世界を転戦し、新境地を開いた。
- 柔道は女子63キロ級のの上野順恵が3位決定戦で勝ち、銅メダルを獲得した。男子81キロ級の中井貴裕は3位決定戦で敗れ、メダルを逃した。サッカー女子は既に8強進出を決めた日本が南アフリカと0-0で引き分け、1次リーグF組を2位で通過した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 海外M&Aに関する邦銀の情報「不足」が4割
- 新聞が200社のCFO(最高財務責任者)に金融機関のサービスについてアンケート調査をして判明した。
- 取引銀行のサービスで具体的に不足している点は、①「M&Aや海外事業の情報提供が少ない」39%、②「海外事業で融資、決済などのサービスが不十分」36%、③「銀行の海外拠点が少なく、利用しにくい」19%、④「自社の財務体質や信用度に比べて融資の金利が高い」9%、⑤「投資資金や運転資金の融資を機動的かつ十分に受けられない」1%、⑥「経理や財務の人材供給」1%。
- 国内取引銀行には70%強の企業が満足しているが、同時に3分の2の企業が外貨決済に強い欧米金融機関とも取引をしており、邦銀で不足するサービスを、欧米金融機関で補う実態が明らかになった。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 水俣病救済締め切る
- 症状があるのに国の基準では水俣病と認定されない被害者に、水俣病特別措置法(特措法)に基づく救済策の申請受け付けが、31日に締め切られた。救済策は、210万円の一時金支払いや、医療費の自己負担が無料になる被害者手帳の交付が柱。
- 被害者の掘り起しを進めている水俣病不知火患者会(水俣市)は、「被害者がいる限り期限を切ってはいけない」と訴え、潜在患者の切り捨てにつながる今回の措置に抗議する活動を熊本県内や環境省前で行った。期限撤回を求めている新潟県知事も「非常に残念。国には今後、被害にあった方々が名乗り出た際は必要な支援の検討を求める」とのコメントを発表した。
- 2010年5月の受付開始から、熊本、新潟、鹿児島の3県で6月末時点で計5万7589人が申請し、7月末には6万人前後の申請者数に達するとみられる。「公害の原点」とされる水俣病は、公式確認から56年を経て、大きな節目を迎えた。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ