2014.05.14 wed

2014年5月14日【新聞解説】「福島県」という風評

2014年5月14日【新聞解説】「福島県」という風評


【リグミの解説】

「美味しんぼ」論争
週刊ビッグコミックスピリッツで連載されている「美味しんぼ」で、福島第一原発事故をテーマにした内容が波紋を広げています。読売新聞は昨日の社説でこの問題を取り上げ、本日、朝日新聞と東京新聞も社説を掲げました。論説は、読売が批判一辺倒、朝日は中立的で客観的立場を尊重、東京新聞は批判する側を批判することで同漫画を一定レベル支持する立場を鮮明にしました。各社説の特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 「美味しんぼ」 風評助長する非科学的な描写
・  あらぬ不安を煽あおる問題の多い内容である。(描写は)いずれも科学的知見に基づかない独善的な見解である。
・ これまで、放射性物質による直接の健康被害は確認されていない。国連の専門委員会も、「住民に確定的影響は認められない」との見解を示している。除染も、順次進んでいる。
・ 一方的な見解を拡散させることで、福島県民の不安を増幅させていいのだろうか。表現の自由は最大限尊重されるべきだが、作者や出版社には、内容についての責任が伴うことを忘れてはならない。
 
<朝日新聞> 美味しんぼ―「是非」争うより学ぼう
・ 私たちは社説で、低線量被曝の影響を軽視しないよう指摘する一方、できるだけ科学的な根拠や実測値、具体的な対策とともに議論すべきだとの立場をとってきた。漫画での描き方には疑問が残る。
・ ただ、低線量被曝には未解明の部分が多い。今回のような健康被害に関する主張は事故後あちこちで見られてきた。それが広く関心を集める背景には、巨大な被害を招いた原発政策への怒りも反映していよう。
・ ひとつの作品を取り上げて過剰に反応したり、大学の学長が教職員の言動を制限するような発言をしたりすることには、賛成できない。
 
<東京新聞> 美味しんぼ批判 行き過ぎはどちらだ
・ 漫画「美味しんぼ」が物議を醸している。何事にせよ、問題提起は必要だ。だがその表現には、もちろん思いやりも欠かせない。その意味で、配慮に欠けた部分もある。
・ しかし、時間をかけた取材に基づく関係者の疑問や批判、主張まで「通説とは異なるから」と否定して、封じてしまっていいのだろうか。
・ 情報隠しの疑念こそ、風評の温床なのである。問題提起はそれとして、考える材料の提供である。登場人物が事故と被害をどう見ていくのか。作品を通じ、作者は社会に訴えようと試みる。行き過ぎはないか。もちろん、過剰な反応も。
 
低線量被曝の影響
いずれの社説も、「美味しんぼ」の描写内容そのものを「正しい」とか「妥当だ」とは主張していません。ただ、読売と朝日に鮮明な違いがみられるように、「低線量被曝」の影響については社会的なコンセンサスは得られていません。専門家も、因果関係を特定でき統計的にも有為な数値は存在しないとしつつ、「低線量を長期的に被曝する影響」については調査データがなく、影響は未確定という立場の人が多いと思います。
 
さまざまな情報を開示し、検証したり、相互に批判できるのが健全な姿です。私自身も「美味しんぼ」によって、「低線量被曝」についての見解や懸念が根深く存在することをあらためて知りました。その意味で価値ある発信であったと考えます。
 
風評被害の出発点
風評被害という意味では、誰も指摘していませんが、「福島県」という言葉の問題を考える必要があります。福島は原発が存在する太平洋側の「浜通り」、中央の「中通り」、そして日本海側の「会津地方」があります。これら3地区での放射線の影響度合いは、当然ながら大きな違いがあります。
(参照:フクシマ・センダイ・カルイザワ それぞれの地で考えること(第1回)
 
しかし、地理的な区分にすぎない「福島県」が、放射線被害のイメージで真っ黒に染まっているのが今も現状のように見えます。事実を正しく認識し、適切に心配する第一歩は、「原発事故=福島」という言い方を卒業するところから始まるのではないしょうか。

(文責:梅本龍夫)



  1. 安保懇報告より対象限定 集団自衛権 首相あす方向性表明
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140513-OYT1T50243.html?from=ycont_top_txt
  2. 公益法人3分の1に 要件厳しく 1万5000法人 移行せず
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140514-OYT1T50000.html?from=ytop_ylist
  3. 中国船の衝突 続く ベトナム国内 中国系企業に投石
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20140513-OYT1T50183.html?from=ycont_top_txt

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 集団的自衛権「9条の範囲内」安保揚げ憲法逸脱 法制懇の報告 全文入手 最高法規を「骨抜き」
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11133682.html
  2. 20%濃縮ウランの生産 イラン、無期限停止提案へ 6カ国と協議
    http://www.asahi.com/articles/ASG5F4QJPG5FUHBI00D.html
  3. 医療費審査と点検 二重に手数料稼ぐ 31都府県の国保連
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11133683.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 集団的自衛権 政府方針「方向性」に 公明・世論に配慮
    http://mainichi.jp/select/news/20140514k0000m010097000c.html
  2. ミサイル開発「イランの技術、北朝鮮に」イスラエル首相、本紙と会見
    http://mainichi.jp/select/news/20140514k0000m030095000c.html
  3. 「維持せよ」で降下続行 海面接近 ピーチ機長が管制誤解
    http://mainichi.jp/select/news/m20140514k0000m040138000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 角川・ドワンゴ統合 アニメなど「ニコ動」で海外へ
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ130F6_T10C14A5MM8000/?dg=1
  2. 「必要最小限」で容認 集団的自衛権、解釈を変更 安保懇最終案
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS13032_T10C14A5MM8000/
  3. 東芝、メモリー容量16倍 スマホ向け量産 米社と5000億円投資
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ130FH_T10C14A5MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 辺野古 来月から解体工事 妨害阻止策 7月にも着手
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140514/plc14051405000002-n1.htm
  2. JA全中への負担金廃止 攻めの農業 規制改革会議案
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140514/biz14051400510004-n1.htm
  3. 「著作権」70年で調整 TPP 知財対立解消へ
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140514/fnc14051408570002-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 沖縄戦の遺骨 父だった 出征73年 印鑑手がかり
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014051402000131.html
  2. 集団的自衛権「優先課題でない」公明、首相をけん制
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014051402000134.html
  3. 金属加工場が爆発 8人重軽傷、消火難航 町田
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014051402000133.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ