2014.04.09 wed

2014年4月9日【新聞解説】憲法の不易流行

2014年4月9日【新聞解説】憲法の不易流行


【リグミの解説】

国民投票法改正案
与野党7党が、憲法改正の手続きを定めた国民投票法について、投票年齢を18歳以上に引き下げることを柱とした改正案を衆議院に共同で提出ました。読売新聞と東京新聞が社説で論じています。
 
<読売新聞> 国民投票法改正 7党合意の提案は確かな一歩
  • 与野党7党が、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案を衆院に共同提出した。所属議員は、衆参両院の9割超を占めている。与野党が協議を重ね、共同提案に至るまで丁寧に合意を形成したことを前向きに評価したい。
  • 投票年齢を改正法施行の4年後、自動的に「18歳以上」になるとした。公職選挙法の選挙権年齢に関しても2年以内に「18歳以上」へ引き下げることを目指す。与野党は、期限内に実現してもらいたい。
  • 公務員の国民投票運動について、与党案には当初、組織的な勧誘や署名、示威運動を禁止する規定が盛り込まれていた。自治労や日教組の支持を受ける民主党が強く反対したために、これが削除され、法案の付則で検討課題とされたのは残念だ。
 
<東京新聞> 国民投票法改正 改憲前のめりが心配だ
  • 憲法改正の是非やその内容の議論を置き去りにして、手続き法の整備だけをなぜ急ぐのか。前のめりの姿勢が心配だ。多くの課題や議論を置き去りにしたまま、改憲の手続き法だけが、着々と整えられることには危惧を抱かざるを得ない。
  • 憲法は、どうあるべきかを常に検証され、論争にさらされるべき存在であることは確かだ。その一方、現憲法には平和主義や立憲主義など、守られるべき多くの価値が含まれ、改正を急ぐべき緊急性はないというのが、わたしたちの立場である。
  • そもそも今回の改正案では重要な論点が欠落している。一定の投票率に達しない場合、無効とする「最低投票率」導入の是非だ。近年の自治体首長選のように投票率が極めて低くても、国民に承認されたと言い切れるのか。
 
憲法の人類史的位置づけ
安倍政権になってから、憲法改正論議が近年になく活性化しました。しかし、議論はなかなか深まらず、憲法とは何かという本質が置き去りにされている感があります。
 
戦後制定された日本国憲法は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義(戦争放棄)」を3本の柱とする最高レベルの法規です。そして、憲法は国民の側に立ち、国家主権を制御するとする「立憲主義」を前提としています。
 
憲法の位置づけを定義した「立憲主義」と日本国憲法が基本とする「国民主権」と「基本的人権の尊重」は、我が国固有の事情を超えた人類史的な積み重ねの中で獲得された規範です。民主主義的な近代国家であれば、普遍的に遵守すべき基本といえます。
 
憲法の歴史的背景
一方、「平和主義」は、明治維新以後の日本が富国強兵の国策をもとに、次第に軍国主義に傾斜していき、戦争の惨禍を招いたとの歴史的反省にもとづき、わが国固有の価値観として規定したものです。憲法制定に深く関与したGHQの創作物とする見方がありますが、私は「平和主義」は制定の経緯にかかわらず、焼け野原を体験した当時の日本人の大多数が深く希求した原理原則であったととらえています。
 
そうした日本国憲法が、時代の変化に対応できないものになってきている、というのが憲法改正論議の背景です。それはそのとおりだと思います。芭蕉の説いた「不易流行」のように、変わらない本質(不易)と変わりつづける現象(流行)を峻別し、同時のそれが不即不離の関係にあることを認識する。憲法とはそういう存在です。私たち国民一人ひとりが憲法の「不易流行」を考える必要があります。
 
国民の過半の意思表明
憲法改正は、「今の現実」だけに対応すればいいものではありません。それではただの「流行」に過ぎません。50年後、100年後の日本のあり方を見すえた「不易」をしっかりと中軸に据えた改正でなければなりません。
 
そういう観点で今回の国民投票法の改正案を見ると、「国民の過半の賛成」とは何かというテーマにいきつきます。東京新聞は、「最低投票率」の導入を提案していますが、私はむしろ、棄権票の位置づけに着目すべきだと考えます。憲法改正だけは、通常の投票とは異なる原理や思想が必要であるという前提に立ち、提案します。「賛成多数とは、投票総数の過半ではなく、有権者の過半をもって成立とする」。
 

(文責:梅本龍夫)



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