2014.04.03 thu

2014年4月03日【新聞解説】文化と文明を両立させる

2014年4月03日【新聞解説】文化と文明を両立させる


【リグミの解説】

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国際司法裁判所(ICJ)が、日本が南極海で実施している日本の調査捕鯨に中止命令を出しました。読売、日経、東京が本日、朝日、毎日、産経は昨日、それぞれ社説を掲げました。特徴的な論点を比較します。
 
<読売新聞> 調査捕鯨敗訴 水産資源の管理を戦略的に
・ 鯨肉の国内消費量が低迷する中、数十億円もの国費をかけた調査捕鯨を続けることを疑問視する声は、国内にもある。調査捕鯨の意義が薄れたわけではないが、捕鯨政策を総点検する必要もあるのではないか。
 
<朝日新聞> 調査捕鯨中止 政策を転換する時だ
・ 今回の判決は世界でただ一国、調査捕鯨を続ける日本に対し、国際社会の視線が極めて厳しいことを改めて突きつけた。北西太平洋での捕鯨も、ICJの提訴が予想される。ここは、政策を転換すべきではないか。
 
<毎日新聞> 調査捕鯨で敗訴 南極海から撤退決断を
・ 鯨食は、「日本の食文化」の一つだ。しかし、IWCの管理対象になっていない沿岸捕鯨を中心にした伝統的な鯨食文化と、戦後の食糧難に伴ってたんぱく源として全国的に拡大した鯨食とは分けて考える必要がある。守るべきは沿岸捕鯨を中心に、なお残る鯨食文化だ。
 
<日経新聞> 捕鯨の現実を見つめ直そう
・ 現実問題として捕鯨事業に参入する企業は現れるだろうか。かつて捕鯨を担った水産大手はグローバル企業に変わり、海外消費者の反感を買うおそれのある事業に再参入するとは考えにくい。
 
<産経新聞> 国際捕鯨裁判 生態把握の手段が消える
・ 日本が南極海の調査捕鯨から撤退すれば、資源管理の基本データが不足していく。世界の人口増加で、遠くない将来、動物性タンパク源として鯨類の本格利用が始まるだろう。そのとき正確な資源情報がなければ、強国による乱獲が起こり得る。継続性のある科学調査が必要だ。
 
<東京新聞> 調査捕鯨敗訴 段階的縮小もやむなし
・ 鯨肉そのものの消費が伸びないのが現実だ。和歌山県太地町などでは、IWCが規制していない「沿岸小型捕鯨」を実施している。南極海での調査捕鯨ができなくても、沿岸捕鯨の水揚げとアイスランドなどからの輸入により、国内消費はまかなえる見通しだ。
 
学校給食の定番だった鯨肉
小学生だった1960年代当時、学校給食に鯨肉は欠かせませんでした。カナダからの帰国子女だった私は、給食そのものが新鮮な体験でしたが、「くじらを食べるんだ」と不思議な感じがしたのを覚えています。鯨食の習慣がない国から見た素朴な感慨であったと思います。鯨肉は独特の食味で、けっこう好きでした。
 
当時のカナダはけっして食文化が豊かな国ではありませんでした。スーパーマーケットにはモノがあふれ、牛肉の塊を安く買うことができましたが、人々の食に対する許容度は低かったと思います。今日から考えにくいかもしれませんが、寿司も生魚を食べるのは野蛮という反応がありました。すき焼きはより好まれましたが、生卵につける段になって、露骨な拒絶反応を示す人もいました。
 
背景にある反捕鯨感情
今回ICJに日本の南極調査捕鯨の中止を訴えたのはオーストラリアです。カナダとともに、かつての英国の植民地支配下だった16ヵ国からなる英連邦王国の一国です。オーストラリアは数度観光で訪れた経験しかありませんが、文化はカナダによく似ていると感じます。かつて、鯨油をとる米国の捕鯨産業の恩恵を受けてきた国ですが、今では反捕鯨を掲げています。
 
文化というものは、地球上の人間の営みの豊かさと多様性を集約し象徴するものです。文化は同じでなく、個性的だからこそ魅力もあります。同時に、文化の奥には人類の普遍的な価値観も隠されています。そうした普遍的な価値観やルールは、文化と対比する意味で、文明と呼ばれることもあります。今、日本は問われているのは、鯨食の文化をどうするかということと、人類のタンパク資源(食糧)をどのように科学的に確保するかということです。
 
科学的調査と資源管理の先頭に立つ
この2つは似て非なるものです。寿司も生卵も、今日は日本食の魅力として広く世界に認められ愛されています。鯨食も、そういうふうになる可能性はゼロではありません。しかし、現代西洋文明は「高等な知性があると認められる動物の捕獲」に感情的な拒絶反応を示しています。
 
日本人は、そういう価値観に偽善を感じ取り、反発する気持ちもあると思います。しかしここは、世界で最も洗練された文化を誇る国、日本が、同時に世界でもっとも先端的な文明国であることを証明すべきときです。
 
ICJに「科学目的」でないと断定された調査捕鯨のあり方を根本的に見直し、鯨以外の海洋資源でも科学的調査と資源管理のリーダー国になることこそ、日本がめざすべき姿であると感じます。この努力を積み重ねることが、めぐりめぐって、鯨食文化の継承にもつながるのではないでしょうか。
 

(文責:梅本龍夫)



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    http://www.asahi.com/articles/ASG4263J2G42UTIL026.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS02020_S4A400C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 集団的自衛権 行使を限定 政府・自民最終調整
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140403/plc14040307410006-n1.htm
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    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140403/crm14040300340000-n2.htm
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    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140403/plc14040308290007-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



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    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014040302000140.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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