2014.04.01 tue

2014年4月01日【新聞解説】歴史認識問題に未来志向で応じる

2014年4月01日【新聞解説】歴史認識問題に未来志向で応じる


【リグミの解説】

習主席のプロパガンダ
中国の習近平国家主席が訪問先のドイツで講演した際に、「南京事件の犠牲者は30万人以上」と発言しました。「日本の軍国主義により3500万人の中国人死傷者が出た」とし、戦時の日本の加害性を際立たせ、激しく批判しました。これに対し、読売新聞と産経新聞が社説で反論しています。「犠牲者の数」について、両紙の認識を比較します。
 
<読売新聞> 習氏「南京」発言 一方的な主張は看過できない
・ 日本政府は、南京事件で非戦闘員の殺害などがあったことを認めている。だが、犠牲者数の確定は難しいとしている。
・ 日本では、中国政府の言う「30万人以上」は、当時の南京の人口動態などから、実際の犠牲者数とはかけ離れているのではないかとの見方が支配的だ。
・  日中両政府の合意で発足した日中歴史共同研究委員会が2010年に発表した報告書でも、日本側は「20万人を上限として、4万人、2万人などの様々な推計がなされている」と指摘している。
・ 南京事件当時、避難民を保護したとして、習氏から称賛されたドイツ人ジョン・ラーベ氏も、ヒトラーへの上申書に、犠牲者は「5万~6万人」と記している。
・ 習氏は「日本軍国主義による侵略戦争で中国人3500万人以上が死傷した」とも述べたが、明確な拠より所は示されていない。
 
<産経新聞> 習氏南京発言 事実をもって反論重ねよ
・ 日本側の研究や調査により、「南京大虐殺」は中国の一方的な宣伝にすぎず、あり得なかったことだと判明している。
・ 「3500万人」も、反日教育を推進した江沢民元国家主席が、1995年にモスクワで行った演説で言い出した数字である。
・ 中国軍事博物館はそれ以前、中国軍民死傷者を「2168万人」としていた。数字を根拠なく膨らませて日本を不当に貶(おとし)める政治宣伝は、絶対に許せない。
 
「誇大な数値」にどう反論するか
中国がある時期から「誇大な数値」で日本の戦争の加害性を批判するようになったことは事実だと思います。そこに明確なプロパガンダ(政治宣伝)の意図があるというのも正しいと思います。根拠のない一方的な批判や非難に対しては、反論すべきという主張も理解できます。静かに冷静に、しかし毅然として、言うべきことを言う必要があります。
 
ただ、その際に旧日本軍が民間人におこなった加害性そのものを否定するような言説になれば、日本側もまたプロパガンダをしていることになります。その点で、産経新聞の社説は、「事実をもって反論重ねよ」というタイトルを掲げながら、南京で非戦闘員の大規模な殺害そのものがなかったかのように読める文章は、バランスを欠いているように思います。
 
日中歴史共同研究の成果
読売新聞の事実列記は、概ね日本政府の公式見解に沿っています。北岡伸一・東京大学法学部教授(当時、現・国際大学長)を日本側座長とする日中歴史共同研究は、2005年4月の日中外相会談において、町村外務大臣(当時)が提唱したことではじまりました。この共同研究で、結局日中の研究者の見解は一致しませんでしたが、南京事件の犠牲者数の推定について、率直な意見交換ができたことは成果であったと思います。
(参照:外務省
 
読売新聞が例示したように、日本は南京で大規模な虐殺行為があったことを認めています。仮に、「4万人、2万人」といった犠牲者数の推計や、ラーベ氏の「5万~6万人」が真実に近かったとすれば、中国側の主張の5分の1から10分の1程度ということになります。だからといって、その絶対数が「少ない」ともっぱら数の多寡の議論になることは、日本の政治姿勢として望ましいこととは思えません。
 
未来志向のプレゼンテーションを
戦後70年近く民主主義を育て、平和主義を貫いてきた日本は、国家としての成熟度を高めました。それこそが誇るべき成果です。過去の「戦争の加害性」は、犠牲者数の多寡にかかわらず「事実」と認め、犠牲者に哀悼の意を表し、二度と加害を繰り返さないと宣言する。そして、そのための具体的な取り組みも発表してはどうでしょうか。
 
そんな「大人な対応」を静かに、そして毅然とおこなえば、世界の多くの国は日本の主張を受け入れるに違いありません。2020東京五輪招致で見せた日本の新しいプレゼンテーションスタイルを、難しい歴史認識問題にも応用すれば、きっと大きな成果が得られると思います。

(文責:梅本龍夫)



  1. 消費税きょう8% 社会保障財産に
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140331-OYT1T50180.html
  2. 南極調査捕鯨 認めず 国際司法裁 日本に「科学的でない」
    http://www.yomiuri.co.jp/eco/20140331-OYT1T50119.html?from=ytop_top
  3. 日朝、協議断続で一致 日程終了

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 消費税8%スタート 17年ぶり増税
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11060436.html
  2. 南極海の調査捕鯨 中止命令 国際司法裁 科学目的認めず
    http://www.asahi.com/articles/ASG305TK7G30UHBI014.html
  3. エール大、渋谷スタバで面接 教育2014学歴は変わるか
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11060444.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 南極海の調査捕鯨中止 国際司法裁 日本が敗訴
    http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m030108000c.html
  2. 消費税8%スタート 17年ぶり 社会保障充実掲げ
    http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m020110000c.html
  3. 日朝協議 継続で合意 北朝鮮、拉致議論拒絶せず
    http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m010100000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 北海道電力に資本支援 政投銀が優先株500億円 債務超過を回避 今夏
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS3103K_R30C14A3MM8000/
  2. 消費税 きょうから8% 17年ぶり増税 国民負担、8兆円増
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS3102X_R30C14A3MM8000/
  3. 調査捕鯨、日本が敗訴 国際司法裁判所 南極海で中止命じる
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC3101A_R30C14A3MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 調査捕鯨に中止命令 国際司法裁 日本「判決従う」
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140401/trl14040107590001-n1.htm
  2. 性奴隷認定 幻の反論文書 慰安婦問題 政府「国際報告は不当」
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140401/plc14040108110019-n1.htm
  3. 拉致協議継続で一致 日朝局長級 日本、ミサイル抗議
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140331/plc14033120320012-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 理念忘れた8%「社会保障拡充」果たせず 負担先行
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014040102000121.html
  2. 折り鶴消える教室 変質する「平和」第1部 封印される広島
  3. 調査捕鯨、日本に停止命令 国際司法裁 南極海、科学目的を逸脱
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014040102000119.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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