【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日がそろって「ロンドンオリンピックのサッカー男子がスペインに勝利したことを伝える記事です。「大金星」「無敵艦隊を沈めた」など、スポーツ新聞のような見出しが並び、この快挙を喜びをもって報道しています。無条件に明るいニュースがトップを飾ると、私たちの心も明るくなります。
70年前に人々に「明るいニュース」と受け取られたのは、戦争報道記事でした。大本営が発表する勝利報道に国民は大喜びし、日の丸を振りました。日本は「軍国主義」の国でした。しかし、わずか数年で、国土が文字通り灰燼に帰する徹底した敗戦を体験した日本は、以後一貫して「平和主義」を貫いてきました。そして1964年には、アジア発のオリンピックを開催するところまでこぎつけました。開会式の10月10日の実況中継で、NHKのアナウンサーは、「今日の東京は、日本中の青空を一手に集めたような素晴らしい青空です」という言葉を残しました。
その4年後のメキシコオリンピックで、日本の男子サッカーは銅メダルを獲得しました。まさに「金星」でした。それまでマイナーだったサッカーが一躍注目のスポーツになり、野球に興じていた日本中の少年たちが競ってサッカーを始めました。筆者は小学校6年生でしたが、国立競技場で開催された小学生サッカー教室に通い、着慣れないサッカートランクスをまとい、フィールド(「ピッチ」という言葉はまだありませんでした)を駆け回りました。
オリンピックの商業化と過度な国威発揚の問題が指摘されて随分経ちます。北京オリンピックは、よくもわるくも、そうした近代オリンピックの在り方が到達したひとつの頂点でした。ロンドンオリンピックはどういう特色をもった祭典になるのでしょうか。いろいろと課題はありますが、国と国がオリンピックという場で戦うのは、「平和主義」の象徴であり、心躍る美しい祭典です。日本の選手たちの活躍を、そしてすべての参加国が躍動し交流する姿を、存分に楽しみたいと思います。
讀賣新聞
【記事】 日本、スペイン破る
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 日本、スペイン破る
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 日本、スペイン戦金星
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 富士通、三重工場を売却
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【リグミから一言】 富士通が台湾の企業に対して、売却工場の雇用維持を求めているのは重要なポイントです。日本企業が経営をできないのであれば、海外企業を招致して新しい形でビジネスを隆盛させること。働く場があることで、人々は未来を活き活きと創造できます。
東京新聞
【記事】 福島第1原発作業員の「賃金、手当ピンハネ」
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【リグミのコメント】 東京新聞が紹介している下請け構造は、「東京電力」⇒「日立プラントテクノロジー」⇒「日栄動力工業」⇒「大和エンジニアリングサービス」⇒「創和工業」⇒「福田工業」⇒「前田工業」⇒男性作業員、というもので東電の下に6社がぶら下がっています。
これだけ長く伸びた下請けチェーンでは、危険な高線量作業をしている作業員の労働環境を発注元の東電が把握することは困難でしょう。逆に言えば、この日本的な構造を利用することで、危険で劣悪な作業のマネジメントや社会的責任から逃れることも可能になります。
原発事故の現場で何が行われているのか。短期間で高線量を浴び、中間マージンを抜かれた賃金しか支払われず、「使い捨て」にされる作業員の実態が見えてきます。象徴的に言えば、これは現代の「売血」ではないでしょうか。