2012.07.27 fri

新聞1面トップ 2012年7月27日

新聞1面トップ 2012年7月27日


【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日がそろって「ロンドンオリンピックのサッカー男子がスペインに勝利したことを伝える記事です。「大金星」「無敵艦隊を沈めた」など、スポーツ新聞のような見出しが並び、この快挙を喜びをもって報道しています。無条件に明るいニュースがトップを飾ると、私たちの心も明るくなります。

70年前に人々に「明るいニュース」と受け取られたのは、戦争報道記事でした。大本営が発表する勝利報道に国民は大喜びし、日の丸を振りました。日本は「軍国主義」の国でした。しかし、わずか数年で、国土が文字通り灰燼に帰する徹底した敗戦を体験した日本は、以後一貫して「平和主義」を貫いてきました。そして1964年には、アジア発のオリンピックを開催するところまでこぎつけました。開会式の10月10日の実況中継で、NHKのアナウンサーは、「今日の東京は、日本中の青空を一手に集めたような素晴らしい青空です」という言葉を残しました。

その4年後のメキシコオリンピックで、日本の男子サッカーは銅メダルを獲得しました。まさに「金星」でした。それまでマイナーだったサッカーが一躍注目のスポーツになり、野球に興じていた日本中の少年たちが競ってサッカーを始めました。筆者は小学校6年生でしたが、国立競技場で開催された小学生サッカー教室に通い、着慣れないサッカートランクスをまとい、フィールド(「ピッチ」という言葉はまだありませんでした)を駆け回りました。

オリンピックの商業化と過度な国威発揚の問題が指摘されて随分経ちます。北京オリンピックは、よくもわるくも、そうした近代オリンピックの在り方が到達したひとつの頂点でした。ロンドンオリンピックはどういう特色をもった祭典になるのでしょうか。いろいろと課題はありますが、国と国がオリンピックという場で戦うのは、「平和主義」の象徴であり、心躍る美しい祭典です。日本の選手たちの活躍を、そしてすべての参加国が躍動し交流する姿を、存分に楽しみたいと思います。
 



讀賣新聞

【記事】 日本、スペイン破る

  • ロンドンオリンピックのサッカー男子のグループリーグが始まった26日、日本は優勝候補のスペインを1-0で破り、日本サッカー史に残る大金星を挙げた。
  • 日本は34分、大津祐樹が先制ゴールを決めて逃げ切り、決勝トーナメントの向けて好発進した。スペインは、年齢制限のないフル代表の世界ランクは1位で、欧州選手権で史上初となる2連覇を達成したばかりの王者。そんな相手からの先制点でチームを勢いに乗せた。
  • 日本女子(なでしこジャパン)は25日のカナダ戦との初戦で2-1で快勝した。開会式は27日午後9時(日本時間28日午前5時)から、ロンドン市内のオリンピックススタジアムで行われ、4年に1度のスポーツの祭典が開幕する。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



朝日新聞

【記事】 日本、スペイン破る

  • サッカー男子(原則23歳以下)は、26日から1次リーグが始まり、D組の日本は優勝候補のスペインと対戦、1-0で快勝した。
  • 前半34分、MFの大津裕樹のゴールで先制点を奪った。その後は守備で粘り強く耐えながら逃げ切り、「無敵艦隊」を沈める大金星を挙げた。
  • ロンドンオリンピックは27日にメーン会場となるオリンピックスタジアムで開会式があり、競技が本格的に始まる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



毎日新聞

【記事】 日本、スペイン戦金星

  • ロンドンオリンピックは27日夜の開会式をを前にサッカー男子の1次リーグも開始され、D組の日本は優勝候補のスペインと対戦し、大津裕樹が前半先制ゴールを決めて逃げ切り、1-0で勝った。
  • スペインは、2010年ワールドカップに優勝し、欧州選手権2連覇を果たし、「無敵艦隊」と呼ばれる強豪国だ。原則23歳以下(U23)のオリンピックメンバーも多くが欧州の名門クラブで活躍する選手であり、日本はそんな優勝候補から勝利をもぎとった。
  • サッカー男子は16チームが4組に分かれてリーグ戦を実施し、各組上位2チームが準々決勝の進出する。ロンドンオリンピックの開会式は27日午後9時(日本時間28日午前5時)からロンドン東部のオリンピックスタジアムで行われる。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



日経新聞

【記事】  富士通、三重工場を売却

  • 富士通は半導体を製造する主力の三重工場を売却する方向だ。相手は台湾企業の台湾積体電路製造(TSMC)で、半導体受託製造を専門とする最大手企業。
  • 三重工場は最新鋭の設備と国内屈指の製造技術を持ち、デジタルカメラに使う画像処理用の半導体や、スーパーコンピューター「京」に掲載する演算用半導体などを製造している。同工場には約1400人が働いており、TSMCには雇用維持を求めていく。
  • 富士通は、ルネサスエレクトロニクス、パナソニックとシステムLSI(大規模集積回路)を統合し、新会社を設立する。統合新会社は、半導体の設計開発に特化し、製造はTSMCに委託する。こうした役割分担は世界の潮流となっており、日本の主力企業も半導体産業の復活をかけ、事業構造の転換に取り組む。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/

【リグミから一言】 富士通が台湾の企業に対して、売却工場の雇用維持を求めているのは重要なポイントです。日本企業が経営をできないのであれば、海外企業を招致して新しい形でビジネスを隆盛させること。働く場があることで、人々は未来を活き活きと創造できます。

 



東京新聞

【記事】 福島第1原発作業員の「賃金、手当ピンハネ」

  • 東京電力福島第1原発事故の収束作業に携わった元作業員が26日、雇用元企業の日栄動力工業が職業安定法と労働者派遣法に違反する多重派遣をしていたとして、東京労働局に訴え出た。男性は、昨年7月1日から8月9日まで作業に従事した。
  • 日栄動力工業は下請け上位で、男性に仕事を紹介し、実際に給料を支払ったのは前田工業。ただし、放射線管理手帳上のの所属会社は大和qエンジニアリングサービスになっていた。この両社の間にはさらに創和工業と福田工業が介在しており、複雑な下請け構造になっている。
  • 下請けを繰り返す中で、大和エンジニアリングは日当と危険手当の計24000~25000円を下請けに支払ったが、男性には11000円しか支払われなかったという。男性は、「自分が(被曝線量の高い作業を短期で担う)高線量要員だったことを後で知った。」「約束した賃金は少なくとも払ってほしい」と訴えている。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/

【リグミのコメント】 東京新聞が紹介している下請け構造は、「東京電力」⇒「日立プラントテクノロジー」⇒「日栄動力工業」⇒「大和エンジニアリングサービス」⇒「創和工業」⇒「福田工業」⇒「前田工業」⇒男性作業員、というもので東電の下に6社がぶら下がっています。

これだけ長く伸びた下請けチェーンでは、危険な高線量作業をしている作業員の労働環境を発注元の東電が把握することは困難でしょう。逆に言えば、この日本的な構造を利用することで、危険で劣悪な作業のマネジメントや社会的責任から逃れることも可能になります。

原発事故の現場で何が行われているのか。短期間で高線量を浴び、中間マージンを抜かれた賃金しか支払われず、「使い捨て」にされる作業員の実態が見えてきます。象徴的に言えば、これは現代の「売血」ではないでしょうか。

 


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