【リグミの解説】 本日の1面トップ記事は、読売新聞、朝日新聞、東京新聞が東電福島第一原発事故に関する政府の事故調査・検証委員会の最終報告についてです。読売新聞を除く各紙は、政府事故調の事故原因追求が不十分であることに強く批判しています。
各紙の論調で特徴的な部分を概観します:
読売新聞
「原子炉の運転データからは、原発の重要機器が津波襲来まで正常に機能していたことが分かっている。地震ではなく、津波が事故の主因とした政府事故調の分析には説得力がある。東電が津波発生後に適切に対応していれば、炉心溶融(メルトダウン)を防げた可能性がある、と示唆した点も重要だ」
「政府は、事故後、全国の原発で津波対策に取り組んできた。再稼働に向け、この対策が適切であることを国民に説明し、不安感の軽減につなげてもらいたい」
「民主党政権が、誤った『政治主導』で官僚組織を使いこなせず、事態を混乱させた責任は重たい」
「国際的にも、事故への関心は高い。長期にわたる廃炉作業や被災者の生活再建の状況を国内外に示さねばならない(社説)
朝日新聞
「問題は、『事故炉で何が起きたか』について、未解明な部分が多く残ったことだ。巨大事故究明のお手本はスペースシャトル・チャレンジャー事故の調査だ。今回は強い放射能のために事故炉の調査は困難だが、国内にある同じ型の炉を使ったりして再現実験をすることは可能だったはずだ」
「畑村委員長自ら、23日の会見で『再現実験をやりたかった』と言及している。時間や陣容が足りなかったというが、まさにそのための政府事故調ではなかったか」
「これで終われるはずもない。世界に向けて、事故原因を解明する責任が日本にはある。不断の取組を続けない限り、『収束』はやってこない」(社説)
毎日新聞
「事故の全容は解明されていない。国民の疑問に答え切ったということはできない。結局のところ、今はまだ事故検証の中間段階に過ぎない。政府からも、その時々の政権からも独立した、恒常的な調査委員会を設置すべきだ」
「検証の結果、はっきりしたこともある。事前の備えや的確な事故対応がなされていれば、事故や被害をここまで拡大させずに済んだという点だ。東電自身の事故防止策に不備があったことは動かしがたい事実だ。津波対策も過酷事故対策も極めて不十分だった」
「ふに落ちないのは、検証でこれだけ多くの課題が示されているにもかかわらず、野田内閣や国会の反応が鈍いことだ。真剣に取り組む意志が見えず、姿勢に疑問がある。政府は、まず、これまでの検証を基に政府として対応すべきことを早急にまとめる必要がある」(社説)
日経新聞
「事故の詳細を解明しきれず、原発の安全な稼働のために学ぶべき教訓をより具体的に示すには至らなかった」
「報告書にある25項目に上る提言はそれぞれもっともだが、その多くは国際原子力機関(IAEA)の調査で既に取りあげられたり、総論的な指摘にとどまったり、既視感が強く、切り込みが足りない」
「1年あまりの調査で限界はあろうが、これでは事故調の教訓を原発再稼働の判断に役立てるのは難しい。『100年後の検証に耐えるものにしたい』(畑村委員長)との意気込みは、空振りに終わった印象だ。政府には腰を据えた検証の継続を求めたい」(社説)
東京新聞
「政府事故調は、根本的な原因にも迫れず、責任の所在も不明確で、重要な点は『解明に至らなかった』と書かれている。調査の限界が見えていたとはいえ、”落第点”といえる」
「政府事故調は一部を除き、匿名を前提に、かつ全面非公開で調査を行った。自由な証言を引き出すのに有効な手法と思ったのだろうが、『原子力村』を甘く考えすぎた。匿名と非公開に安住し、関係者はむしろ自分に都合のいい証言しかしなかったのではないか」
「国会の出番だ。国会事故調は国会が設けた組織なのに、その報告を精査しないのは、国会の怠慢である。政府事故調の報告と照らし合わせ、新たな調査が不可欠だ。公の圧力のもとで、官僚や東電関係者、学者らに国会の場で証言させ、一段と真相解明に努力すべきだ」
【リグミから一言】 これで4つの事故調査がそろいました。しかしそれは「始まり」に過ぎません。今後、国会という公の場で徹底追求すべきことは、当然です。しかしそれでも不十分でしょう。独立した調査機関が最低でも数年かけて調査を続けない限り真相解明は無理かもしれません。原因解明、責任追求、根本的安全策、そして原子力エネルギーの位置づけの確定のすべてを入れると、20年はかかるのではないでしょうか。
讀賣新聞
【記事】 原発複合災害、備え欠如
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 防災思想の転換提言
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 死刑、被害者数を重視
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 企業年金、10年で7割減
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 「耐震」「安全」残った疑問
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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