2014.03.11 tue

2014年3月11日【新聞解説】記憶と忘却のはざまで

2014年3月11日【新聞解説】記憶と忘却のはざまで


【リグミの解説】

3年目の3.11
東日本大震災から3年が経ちました。新聞各紙は大きく特集を組んでいます。印象として、1年前のときよりも大がかりです。3年を経たときから、災害復興は一番たいへんな時期を迎えるといいます。各紙の社説はこの現実をどうとらえているでしょうか。印象的な文章を見ていきます。
 
<読売新聞> 復興加速へ 住まいの再建が喫緊の課題だ
・ 岩手、宮城、福島3県で、2月初めまでに被災者に引き渡された宅地や復興住宅は、総計画数の2.1%の985戸分に過ぎない。住宅再建の遅れは極めて深刻である。住宅の整備が遅れるほど、住民が流出し、被災地は一層衰退してしまう。
 
<朝日新聞> 復興への道―住民の納得があってこそ
・ 被災地の復興は、息の長い取り組みになる。行政主導の対策が住民の考えとずれたり、住民同士の利害が対立したりして、うまく進んでいない例があちこちで見られる。学ぶべきは「将来世代への責任」と「今を生きる住民の納得」だ。
 
<毎日新聞> 東日本大震災3年 まだ程遠い復興への道
・ 見通しのつかぬ放射能との闘い、帰還の悩みと不安、故郷喪失への絶望。福島の人たちの苦悩は深い。プレハブの仮設は歩けばきしみ、隣の人が朝起きた気配さえ分かる。狭くて粗末な仮設の早期解消は、震災関連死や孤独死を防ぐために喫緊の課題だ。
 
<日経新聞> 専門超える知を集め想定外なくせ
・ 科学者や行政が専門の垣根を越え、何が想定外かを絶えず洗い出し、危機に強い社会を築きたい。防災は地域経済や災害心理などに深くかかわる。幅広い分野の知を集めなければならない。
 
<産経新聞> 大震災3年 前を向き復興への夢語れ 政府は効果的な長期支援を
・ 何年たとうと、3.11が「鎮魂の日」であることは変わらない。政府は総額19兆円としていた復興資金を25兆円に拡大し、さらに追加計上も検討するという。復興へ、前を向くための支援は欠かせない。息の長い、効果的な取り組みを求めたい。
 
<東京新聞> 3.11から3年 死者の声に耳傾けよ
・ 人間は忘れるからこそ前進できるという考え方もあるが、東日本大震災で、また多くの犠牲者を出してしまった事実は重い。なぜ、命を救えなかったのか。悲しみを忘れることなく、死者の声にあらためて耳を傾けたい。
 
37年前の夏の死
どの新聞社説も重要な指摘をしていますが、わけても東京新聞の一文、「悲しみを忘れることなく、死者の声にあらためて耳を傾けたい」が心に響きました。それは私を37年前に引き戻しました。
 
大学3年の夏、ゼミ仲間の友人と千葉の外房に海水浴に行きました。浜を背に立ち泳ぎをしているうちに、ふたりは遠く沖合に流されていました。そこは引き潮が強く遊泳禁止の場所であることを後で知りました。波が急に高くなり異常事態に気づき、必死に浜に戻りました。しかし友人は波にのまれ、帰らぬ人となりました。
 
翌朝、浜に打ち上げられた遺体を前にただ茫然と立ちつくばかりでした。香川県丸亀市から来られたご両親の嘆き悲しむ姿を昨日のことのように思い出します。ご両親は私を丸亀までご招待くださり、一緒に供養の時間をもたせてくれました。亡くなった友人の分も生きなければと思いました。
 
不幸な事故から1年経ちグループでゼミの卒論を作りあげたとき、私は亡くなった友人にこれを贈りたいと提案しました。ひとり、この案に強く反対する者がいました。「いつまで過去のことをひきずっているんだ。もう忘れて先に進むときだ」。その言葉の強さに驚き、ひとりの人間の死の受け止め方にも、それぞれの姿があることを知りました。
 
記憶と忘却
3年目の3.11を迎えるこの時期、新聞各紙は被災地で肉親をなくした人々の物語を連続して掲載していました。わけても、子を亡くした親の悲しみの深さに触れ、丸亀のご両親のことを思い起こしました。37年前に亡くなった息子さんは、今も19歳のままです。子を失った悲しみを癒すには一生かかるとも言います。
 
卒論に亡き友人の名を刻むことに反対したゼミ仲間は、卒業して数年後にガンで急逝しました。私は、命の儚さをたてつづけに体験し、亡き者たちの記憶と忘却について、今も考え続けています。突然襲う理不尽な死。自分の愚かさ、思慮のなさを恥じる思いと後悔。されど、どれほど時間がかかろうとも、悲しみはいつか癒されるという希望。
 
ある者は死に、ある者は生き残る。時に、わずかな差が決定的な違いを生みます。人智を超えた宿命を前に、力なく、知恵を欠くとしても、生き残った私たちは、前に進むためにここに存在しています。3年目の3.11を迎え、生き残った者たちの使命の尊さを思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 東日本大震災3年「生活」「心」の復興加速 復興住宅 1年内に1万戸 首相表明
    http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20140310-OYT1T01328.htm
  2. STAP論文 撤回提案 共著者「疑問点多い」
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140310-OYT1T00960.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 東日本大震災きょう3年 避難26万人 遠い復興
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11022457.html?ref=twitter
  2. STAP細胞 論文撤回検討 理研 共著者「根幹揺らぐ」
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11022460.html?ref=reca

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 最愛の家族よ 友よ 東日本 大震災3年
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140311ddm001040186000c.html
  2. STAP論文 取り下げ提案 共同研究者「データ再検証必要」
    http://mainichi.jp/select/news/m20140311k0000m040054000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 東日本大震災3年 届ける力 再構築
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ0901K_Q4A310C1MM8000/?n_cid=TPRN0001
  2. トヨタ、ベア2700円 ダイハツ・スズキ、ゼロ回答 春季労使交渉
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ100FA_Q4A310C1MM8000/
  3. デフォルト容認を 理財商品「一部に問題」中国銀前頭取
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM10036_Q4A310C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 東日本大震災3年 東北がぜんたい幸福になる それが国柄だから
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140311/dst14031108000003-n1.htm
  2. 6年生 一日だけの新校舎 宮城・石巻 渡波小
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140311/dst14031108040005-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 東日本大震災3年 海を取り戻す 絆を結び直す
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014031102000136.html
  2. STAP細胞 論文撤回を提案 共著教授「信用できない」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014031102000135.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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