2014.03.06 thu

2014年3月6日【新聞解説】隣国とつきあう知恵

2014年3月6日【新聞解説】隣国とつきあう知恵


【リグミの解説】

中国、全人代開幕
中国の北京で全国人民代表大会が開幕しました。全人代は、国家の最高権力機関および立法機関として位置づけられています。習国家主席と李克強首相が主導する初めての全人代です。新聞6紙が社説で軍拡問題を中心に論じています。各社説の特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 中国国防費膨張 平和を脅かす露骨な軍拡路線
・ 李首相は、「中国は、戦後の国際秩序を守り抜く。歴史の流れを逆行させることは、決して許さない」と述べた。安倍首相の靖国神社参拝を念頭に置いた日本批判だとしたら、見当違いだ。一方的な防空識別圏設定などで、戦後秩序を揺さぶっているのは、むしろ中国である。
 
<朝日新聞> 中国の国防費―危うい軍拡をやめよ
・ まるで前世紀初頭までのような強兵政策にひた走り、力による覇権を唱えるかのような中国の姿は国際的な尊敬に値しない。軍拡が軍拡を呼ぶ悪循環の末路は人類の戦争史が物語る。過ちを繰り返さないためには何が必要か。各国指導者は今こそ真剣に考えねばならない。
 
<毎日新聞> 中国全人代 改革すたれ軍拡栄える
・ ナショナリズムを利用した国内引き締めの意図を疑う。経済成長が鈍っているのに、国防費は12%増と群を抜く。習政権は「富国強軍」を掲げ、李首相も報告に日本の歴史認識批判を入れた。改革の本道は富を社会保障に回し強い民をつくる「富国強民」だ。中国の改革の先行きを危惧する
 
<日経新聞> この改革で中国は安定成長できるのか
・ 全人代の冒頭、出席者は1日夜に雲南省昆明市で起きた無差別テロ事件の犠牲者を哀悼した。事件の背景には深刻な民族対立があるとみられている。だが肝心の民族・宗教政策について首相は「共産党の政策の貫徹」を繰り返すにとどまった。経済発展の前提である社会の安定を保つための改革は、心もとない。
 
<産経新聞> 中国国防費 秩序を崩すのはどっちだ
・ 李首相は「第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守り抜き、歴史の流れを逆行させることは決して許さない」と、厳しい対日姿勢も打ち出した。だが、力を背景に現状変更を狙い戦後秩序を壊そうとしているのは、当の中国ではないか。日本政政府は防衛予算や自衛隊員数のさらなる確保に、国民の理解を求めるときではないか。
 
<東京新聞> 中国全人代 開かれた大国へ改革を
・ 中国は、米国に次ぐ世界第二の経済大国だが、少数民族の反発だけでなく、格差や腐敗を不満とするデモや暴動は年間20万件近いともいう。今後、社会的にも成熟し、国際社会で評価される真の大国になるには、内向きな強権国家ではなく、より開かれた国に向け改革を進めるしかないだろう。
 
中国の国防費増大
中国のGDPは2010年に日本を追い越し、世界第2位になりました。それが2013年には日本の1.8倍近くになっています(ドルベースの名目)。円安に急速に振れたことが大きな要因ですが、中国経済が高い成長を続けていることが根底にあります。全人代でも7.5%成長をめざすと宣言しています。
 
一方で、中国の財政支出は9.5%の伸びです。その中で国防費は12.2%増です。国家の成長以上に財政支出が膨らみ、その中でも国防費が突出しているように見えます。しかも、何紙かの社説でも触れられていますが、中国の国防費は内容が不透明です。発表数値の2倍以上との推測もあります。
 
中国の国防費が8082億3000万元(約13兆4460億円)ですから、仮に2倍以上が実態だとすると、ざっと30兆円近い値になるのかもしれません。一方、「日本の平成26年度予算案の防衛費は前年度比2.8%増の約4兆8800億円ながら、公務員給与復活分を除けば実質0.8%増」です(参照:産経社説)。
 
「ハード対ハード」に巻き込まれない知恵を
国防費の中味を分析しないと正確なことは言えませんが、いわゆるハードパワーに投じる国家予算に、実質6倍以上の差があるという認識は大事です。冷戦時代のような「パワーとパワーのバランス」という発想を日中の間で繰り広げることは実質的に不可能です。米国の軍事力に頼るのが現実路線になりますが、そこにも不確定要素がたくさんあります。
 
ウクライナの国内の騒乱にロシアが軍事介入した姿を見て、1968年の「プラハの春」を蹴散らした旧ソ連の戦車を思い出した人も多いと思います。半世紀近く時計の針が逆転したように風景です。中国と韓国が激しく日本を非難する内容も、第二次世界大戦当時を蒸し返すものです。
 
戦後70年近く営々と作り上げてきた日本の平和主義の基盤が揺らいでいます。「ハード対ハード」の競争に巻き込まれれば、不毛かつ逆効果です。隣国とつきあう私たちの知恵が問われています。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 連続通り魔 近くの男逮捕 千葉・柏 24歳、強盗殺人容疑
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140305-OYT1T01484.htm
  2. 農漁業 付加価値に活路 転機の復興
  3. 日産ベア3500円満額回答 一時金も 大手電機6社、1500円以上
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20140306-OYT1T00205.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 厚労省、独法入札に便宜か 参加要件 公示後書き換え
    http://www.asahi.com/articles/ASG354HZ2G35UUPI001.html
  2. 要介護、5町村で1.5倍超 福島第一原発周辺 支え手は減少
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11013802.html
  3. トヨタ・日産 ベア満額方針 一時金も、底上げ6年ぶり
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11013801.html?ref=twitter

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 柏の通り魔 24歳逮捕「金奪おうと刺した」強盗殺人容疑
    http://mainichi.jp/select/news/20140306k0000m040147000c.html
  2. 秘密指定 適否判断せず 国会の新組織 自民試案 保護法運用
    http://mainichi.jp/select/news/20140306k0000m010137000c.html
  3. 米独、露に参加促す ウクライナ国際枠組み
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140306ddm001030176000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. トヨタ ベア2000円台提示 日産、満額回答3500円
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ0508D_V00C14A3MM8000/?n_cid=TPRN0001
  2. 米、回復に政権リスク 世界経済ちらつく影
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO67833150W4A300C1MM8000/
  3. 米 ロ外相、直接会談 EU、包括支援策1.5兆円 ウクライナ
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0504H_V00C14A3MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 柏通り魔 24歳男逮捕 強殺容疑「金取る目的」
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140306/crm14030601000001-n1.htm
  2. アベノミクス・五輪 復興にプラス
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140306/dst14030611310006-n1.htm
  3. 大防潮堤 長さ30キロ 暮らしを守る その先へ復興日本
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140306/dst14030607540001-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 現場そばの24歳男逮捕 柏連続殺傷
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014030602000109.html
  2. 秘密指定適否 判断せず 自民案 国会機関、監視力なし
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014030602000110.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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