2014.02.27 thu

2014年2月27日【新聞解説】食の基盤という国益

2014年2月27日【新聞解説】食の基盤という国益


【リグミの解説】

TPP交渉がこう着
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉の閣僚会合が合意に至りませんでした。本日の読売、朝日、東京の3紙が社説を掲げています。
 
<読売新聞> TPP交渉不調 日米が協力して漂流させるな
  • 日本と米国の対立が障害となり、このまま交渉を漂流させてはならない。交渉全体の足を引っ張った日米の責任は大きい。
  • 交渉の勢いが弱まれば、膠着こうちゃく状態を打開するのは難しくなる。日米協議を注視していた豪州やマレーシアなど新興国も消極的になった。
  • オバマ大統領は、国内調整と交渉進展で指導力を発揮してもらいたい。安倍首相の姿勢も問われる。市場開放に備え、農業分野の競争力を強化しながら、米国との接点を見いだす先頭に立つ必要がある。
 
<朝日新聞> TPP交渉―日米の責任は大きい
  • 米国は今秋の中間選挙を控えて議会は個別業界の利害に神経質になっているが、これは自ら解決すべき問題であり、国内事情を交渉に持ちこむのは筋違いだ。
  • 日本にも、問題は多い。全品目のうち関税を撤廃する品目の割合である自由化率で、日本の提案は米国を含む他の国より大きく見劣りしている。
  • アジア太平洋は今後、高い成長が期待できる地域だ。そこに新たな貿易・投資ルールを打ち出し、地域の活力を取り込むことが欠かせない点は、日米両国に共通する。
 
<東京新聞> TPP先送り 国益は何か再考の機会
  • 二大経済大国である日米が関税分野で折り合えなかった影響は確かに大きいが、企業や業界団体の圧力を背負う米国の硬直的な交渉姿勢が不調の主因といえるだろう。
  • 米国が利益を享受するために対象国の制度や法律まで作り変えるのではないかとの懸念が強い。今回、米国はまさに自国流のルール押しつけに終始し、交渉相手国の国内事情への配慮を欠いた。
  • TPPの本質は国の根幹まで変えかねない広範な交渉だ。経済効果と引き換えに失うものが何か、本当に「国益」にかなうのか、この機会に再考してほしい。
 
「ウィン・ウィン」が見えない
読売と朝日は、日米双方の責任をバランスさせる論調ですが、東京新聞はより踏み込み、米国側の問題に切り込んでいます。背景として、そもそもTPPは「小国同士の戦略的提携により市場での存在感を高めること」が狙いでしたが、米国の参加で交渉の意味が大きく変質したことがあります。
 
貿易・投資の自由かつ公正な競争市場づくりという原理原則は、経済がグローバル化している現実に対して一定の説得力があります。しかし実際には国と国の権益のつばぜりあいになり、参加国全体が「ウィン・ウィン」となる要件が見えづらくなっています。秘密交渉のため、議論の具体的中身が見えないことも問題です。
 
「聖域」という美名
TPP交渉参加の意向を日本が示したとき、マスコミの論調は概ね賛成となりました。その流れは基本的に変わっていません。「重要5項目」(麦、甘味資源作物、牛肉・豚肉、乳製品、コメ)に「聖域」という呼称をつけたことも影響していると思います。「聖域」は、神聖で手を触れてはならない領域という意味ですから、TPPの交渉対象になっている段階で既に、「聖域」でもなんでもないといえます。
 
「デッドロック」(こう着状態)に陥っている交渉を打開する方法は、3つあります。一番単純な選択肢は交渉離脱です。一番王道の道は、粘り強い対話を続けることです。3番目の方法は頂上会談で決着することです。オバマ大統領の4月来日を控え、水面下で対話を続け、頂上決着の道を探ることになると思われます。それまでに、「聖域」という美名の内実を、徹底して棚卸しする必要があります。
 
真の「国益」とは
その際に日本側が一番すべき基本は、TPPがもたらす真の「国益」を再定義することにあると感じます。それは煎じ詰めれば、日本の農業をどうするかということです。農業は国の根幹です。それを経済原理だけで判断することにそもそも無理があります。
 
食という生存の基盤を、私たちはどう考えたらいいのか。滋賀県の面積に匹敵する耕作放棄地がある日本の農業を再生する基盤が見えたとき、TPPのあり方も自ずと明らかになるのではないでしょうか。日本が、高い目線でTPPを含む広域経済連携での「ウィン・ウィン」をめざすためには、自分たちの基盤をしっかりと固める必要があります。

(文責:梅本龍夫)



  1. iPS臨床へ手続き 京大、審査委6月申請 パーキンソン病
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140227-OYT1T00033.htm
  2. 原子炉水位 暗闇で殴り書き 1、2号機制御室公開
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140226-OYT1T01168.htm
  3. 噴火199日 3.5倍 小笠原・西ノ島

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. ビットコイン危うさ露呈 仮想通貨 東京の取引所が停止
    http://www.asahi.com/articles/ASG2V5HZ6G2VULFA02G.html
  2. 集団移転計画2割減 人口流出 見積もり縮小
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11001100.html
  3. 遊牧捨てて都市に定住
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11001098.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 臨床試験第三者が監査 不正防止へ義務化
    http://mainichi.jp/select/news/20140227k0000m040060000c.html
  2. 東電賠償 国が是正指導 ADR拒否は15件
    http://mainichi.jp/select/news/20140227k0000m040089000c.html
  3. 混乱の痕跡 今も 中央制御室公開
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140227ddm001040194000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 賃上げの波非正規にも 派遣大手3~5%要請
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD260GK_W4A220C1MM8000/
  2. システム統合1年延期 みずほ銀、開発費膨らむ
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC26027_W4A220C1MM8000/
  3. 見えてきた本当の希望 北の国から 物価考
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASM41900E_Z10C14A2SHA000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. ベトナム航空CA逮捕状 盗品受け取り密輸疑い
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140227/crm14022708320003-n1.htm
  2. PM2.5列島黄信号
  3. 中国政府 対日訴訟を支持 「強制連行 問題解決促す」
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140227-00000086-san-pol

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 「東電 稚拙すぎる」処理水漏れ 容易に防げた
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014022790070829.html
  2. 安倍政権の驕りだ 秘密保護法 言わねばならないこと
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2014022702000151.html
  3. 竹崎長官退官へ 最高裁
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014022702000144.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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