2014.02.07 fri

2014年2月7日【新聞解説】「再生の物語」の序章

2014年2月7日【新聞解説】「再生の物語」の序章


【リグミの解説】

「現代のベートーベン」の真実
広島出身の被爆2世の作曲家、佐村河内守さんに、実は新垣隆さんというゴーストライターがいたというニュースが大きく取り上げられています。両耳が聞こえないことから「現代のベートーベン」とも呼ばれて話題を集めた佐村河内さんですが、新垣さんによると、耳は聞こえていたそうです。
 
長木誠司・東京大学教授(音楽学)は、「今の聴衆のほとんどは、耳が聞こえない、被爆2世、という『物語』なしに音楽だけを聴くことがない」「うそをついて物語を肥大化する必要はなかった。ただ、佐村河内さんと作曲家だけの責任ではない。売ることしか考えないレコード会社や、もてはやしたメディアも同罪だ」と語っています(朝日新聞社会面)。
 
メディアや業界の反省
読売新聞は、2008年6月から昨年12月にかけて佐村河内さんに関する記事を計19本掲載したと発表しました。毎日新聞は、調査報道「ストーリー」で佐村河内さんを取り上げたことについて、「ブームに乗った一面があったことは否めない」とする事実上の謝罪記事を出しました。同紙コラム「余禄」でも「この仮面劇を見抜けなかった小紙も読者におわびせねばならない」と記しています。
 
著作権法に詳しい福井健策弁護士は、「今回は聴力がないという障害を克服し、独力で曲をつくったという『物語』があってこそ、人々はCDを購入し、主催者はコンサートを企画した。その本質的な部分を欺いた責任は逃れられない」と語っています(毎日新聞総合面)。
 
東京新聞は社説で「人の痛みや苦しみを逆手に取ったような作曲家の“物語”」を厳しく糾弾。「だが、音楽の持つ力は失われない。絶望に光を当て、慰め、希望に変えていく力があると信じたい」と結んでいます。
 
「物語」を消費する現代人
ついこの前に問題になったのがホテルや百貨店でのメニューの食材誤表記(偽装)問題でした。特別な食材を使い、手の込んだ調理をする。その「物語」が料理をおいしく感じさせる効果があることにつけこんだ行為であったと思います。純粋に音楽や料理を賞味するのでなく、もっぱらその「物語」を消費するようになると、私たちの感性は鈍ります。
 
私自身、過去に佐村河内守さんの代表作とされる『交響曲第1番 HIROSHIMA』を購入しました。ベートーベンの交響曲が好きなので、「現代のベートーベン」というフレーズに興味をもち、聴いてみようと思いました。結果は、残念ながら起承転結のない退屈な曲という印象しか残らず、今回のニュースに触れるまでCDのこと自体を忘れていました。
 
ベートーベンといえば、肖像画のイメージと聴覚を失った苦悩の物語が有名です。交響曲第9番の初演では、演奏は失敗だったと思い、演奏後も聴衆の方を向くことができず、見かねたアルト歌手がベートーベンを聴衆の方を向かせ、はじめて熱狂的な拍手喝采を知った、という逸話が残っています。こうした「物語」は、確かに魅力的ですが、その真偽はよくわかりません。
 
私がベートーベンの交響曲を好むのは、音楽そのものに豊かな「物語」があるからです。モーツアルトが「神の音楽」が降りてくるような芸風だとすれば、ベートーベンは「人間の喜怒哀楽」に向き合う心がいつか天上に昇っていく芸風といえます。それは音楽自体が紡ぎ出す「物語」であり、モーツアルトやベートーベンの逸話や伝記は、それを補完するものでしかありません。
 
ほんものの「物語」が始まる時
世の中に強い影響力をもつ政治家や有名人、あるいは高い評価を得たブランドなどもまた同じです。評判や評価には、かならず尾ひれのような「物語」がつきます。それが信用や権威を形作りますが、そこにはかならず虚構や隠された事実があります。私たちは、いちいち疑いの心をもって物事に接しないと真実がわからなくなるのでしょうか。
 
そんなことはないと思います。その人物そのもの、そのブランドが提供する商品やサービスの中味そのもの、その音楽家が作曲したり演奏したりする曲そのもの、そのレストランが提供する料理そのもの。それを純粋に見聞し賞味すれば、かならず自分の「好み」に合うかどうかはわかります。
 
「ほんもの」かどうかは、自分のセンサーで感じ取るしかありません。その上で、他者はどう評価しているのか。その情報を忌憚なく知ることで、「物語」が真実かどうか推し量ることができると思います。佐村河内守さんと新垣隆さんの行いは残念なことです。しかし、人生の「真実の物語」はかならず存在します。ここからが本番です。おふたりの「再生の物語」こそ、「ほんもの」の名に値することになる。そう信じ、見守りたいと思います。

(文責:梅本龍夫)



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  3. 富士山噴火で降灰 避難者3県47万人
    http://www.asahi.com/articles/ASG264SQJG26UTIL01L.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



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(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO66490390X00C14A2MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. ソニー1100億円赤字転落 TV分社化・PC売却 5000人削除へ
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140206/biz14020615230017-n1.htm
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    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140206/dst14020619300007-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



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  2. 「イメージ聞き私が演奏、構成」佐村河内さん代作者
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014020702000127.html
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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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