【リグミの解説】
東京都知事選候補の主要政策
本日、東京都知事選が告示されます。主要4候補の枡添要一氏、細川護煕氏、宇都宮健児氏、田母神敏雄氏の主要政策が明らかになりました。各紙は原発政策の違いを中心に報道しています。朝日、毎日、日経、産経、東京の5紙の社説を比較します。
<朝日新聞> 「脱原発」の道筋語れ
・ 大量消費と膨張から、効率と安心へ。街づくりの転換が課題となる。その一環としてエネルギー政策を語る意義は大いにある。
・ 脱原発は東京単独ではできない。電気料金への影響や、電気を大量に使う暮らしの見直しなど、都民の負担や理解を得なくては進まない面もある。
・ 主な顔ぶれのうち、3氏が脱原発の立場を取っている。有権者は脱原発の包み紙ばかり見せられてきた。箱の中身はどう違うのか。問われるのは具体的な道筋だ。
<毎日新聞> 国のあり方が問われる
・ 原発政策、急激な高齢化、防災など国政でも全国的な対応が迫られる課題が争点となる。エネルギー政策を国任せにしておくこと自体がおかしい。国のあり方を問う選挙と位置づけたい。
・ 同時に、原発政策だけを争点とすべきでない。東京は深刻な課題に直面している。特に避けて通れないのが急激な高齢化への対応と首都直下地震に備えた防災対策である。
・ 原発政策や社会保障、防災を知事選で論じることは結局、東京への一極集中を加速させてきた国のあり方の再点検につながる。
<日経新聞> 政策を軸に新しい首都の顔を選ぼう
・ 都政の最大の課題はやはり五輪の準備だろう。競技施設や選手村の整備だけではない。首都高速道路の更新や東京外郭環状道路の建設のような都市基盤の再整備も必要になる。
・ 石原慎太郎元知事以降の都政では高齢者福祉の優先度は低かった。少子化対策でも都は後手に回ってきた。首都直下地震への備えも重要だ。
・ 原発政策のような都知事の権限を越えた問題を最大の争点にすることには疑問がある。
<産経新聞> 魅力ある東京の将来語れ 争点は「原発」だけではない
・ 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、主催都市の責任者としてどう準備を進めていくか。首都直下地震に備える防災都市づくりも問われる。
・ 「脱原発」の是非も争点となっている。電力の大消費地として、都民の生活や経済に必要なエネルギーをいかに確保するかという観点の議論が極めて重要だ。
・ 東京都の人口は2020年の1336万人をピークに減少に転じると予測されている。社会保障や福祉政策の充実、子育て支援など、現実的な解決策を競ってもらいたい。
<東京新聞> 岐路に立つ原発文明
・ 国の原発政策とどう向き合うかが大きな争点だ。これからの暮らし方、子孫に何を残すか、中央と地方の問題…。大げさに言えば、文明観の戦いでもあるだろう。
・ グローバル競争を勝ち抜き、文明の一層の飛躍を期すために原発を動かす。その一方で、成長より自然との末永い共存を選びたいという思いもあるだろう。
・ 五輪・パラリンピックの準備をはじめ都政の課題は山積みだ。しかし、原発に対する住民の姿勢だけは、首都と国の行方さえも左右し得ることを自覚しておきたい。
「原発」がなぜ大事か
細川氏と小泉氏の争点設定が奏功し、都知事選の主張テーマに「原発」がすえられています。朝日、毎日、東京はそのことを支持。日経と産経は主要争点になることに疑問を呈しています。どの新聞も、主要命題は原発だけではなく、「少子高齢化」「首都直下型地震対策」「2020年東京オリンピック・パラリンピック準備」の政策構想が問われると指摘しています。
東京都の主要課題が原発政策だけではないということを前提に、原発を主要命題にすえる意味を考えました。原発に対するスタンスを打ち出すことは、都民の視点を長期化し、広域化するものだと思います。どのような政策も、目先のメリットと長い目で見た効果があり、首都東京に限定された政策と、日本全国に波及していくものがあります。
中央集権と地方自治
中央集権の政治体制が徹底された日本では、国の政策に地方が口出しすべきでないといった主張がふつうになされます。しかし、国が上位で地方が下位という序列意識は既に過去のものになりつつあります。政策課題によって、どちらが「リーダー」になるべきか決まりますが、「フォロワー」となる側がその政策を是認するかどうかは一義的には決まりません。
民主主義は面倒で時間がかかります。長期の未来と、広域に影響する事象は、たくさんの人々がかかわる問題です。日本中の「地方」が、「首都東京」の選挙を自分たちの未来にかかわることとして見ています。長く続く中央集権体制の象徴が一極集中の首都東京です。地方自治の「リーダー」である東京は、中央政府にどういう姿勢を示すのか。今回の都知事選のもうひとつの命題がそこにあります。
(文責:梅本龍夫)
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