2014.01.22 wed

2014年1月22日【新聞解説】使命感の火を灯す経営

2014年1月22日【新聞解説】使命感の火を灯す経営


【リグミの解説】

JR北海道の処分
JR北海道のレール点検数値改ざん問題で、保線部署の7割超で改ざんがありました。同社は5人の解雇を含む75人の処分を発表しました。読売、朝日、毎日が1面トップで伝えています。3紙は社説でも論じていますので、その概要を比較します。
 
<読売新聞> 安全重視への体質改善を急げ
・ 鉄道会社で最も重視すべきは安全の確保である。不正の蔓延まんえんに驚くばかりだ。改ざんは利用者への許し難い背信行為である。
・ 経営陣、管理部門から現場まで、全社的に安全管理体制を再構築することが肝要だ。社員教育の見直しも欠かせない。監督権を持つ国交省も、JR北海道の改革に責任を持って取り組まねばならない。
・ JR北海道では労働組合が強い影響力を持ち、それが管理職と現場を隔てる一因になっているとの指摘もある。国交省は今回、労組の問題に触れていない。引き続き検証が必要だろう。
 
<朝日新聞> 国の命令で変われるか
・ JR北海道は、設備への適切な投資を怠り、専門職員も過度に削った。安全は損なわれ、現場の士気も低下した。効率化を優先した国鉄改革の負の側面が如実に出たともいえる。
・ 一連の不祥事で、社内の意思疎通の悪さが浮かんだ。複数労組の激しい対立の影響も指摘される。組織を立て直すには、思い切った改革を進められる外部の人材を中心に、経営陣を入れ替えるのが早道だろう。
・ 安全確保と信頼回復にはまず、改革の道筋をはっきりさせることだ。国の支援を効果的に活用し、安全設備の強化を急ぐべきだ。
 
<毎日新聞> 問題の核心に迫らねば
・ 重要なのは、「異常事態」がなぜJR北海道で常態化したかの背景が解明されたか、そして国やJR北海道の対応策が問題の核心に迫れるか、という点である。
・ 同じ経営陣の下で追加の対策を講じたとしても、抜本的な再生につながるとは考えにくい。少なくとも経営トップが交代し、外部の専門家による徹底調査を行うのが先だろう。
・ 北海道の人口減少や高齢化は今後も続き、JR北海道の経営環境はより厳しくなると思われる。株主である国は、安全面で注文するだけでなく、JR北海道の将来像も含め、公共交通サービスのあり方を真剣に考えるべき時に来ている。
 
トップから現場まで一貫した体質
朝日と毎日は、現経営陣の続投に疑問を投げかけ、外部経営人材の投入を示唆しています。あくまでTVニュースを見た印象論でしかありませんが、経営陣と記者との質疑のやりとりを聞いていて、JR北海道の企業体質問題はトップから末端まで一貫していると感じました。
 
情緒的な物言いになりますが、発言に心がこもっていません。物事を無難に収めようと言う意図があり、言葉の表面的な整合性を大事にしています。これでは問題の根幹に切り込めません。上がそうだから、下が一層そうなる。そんな組織構図が見える気がします。
 
人間は本来、一所懸命働き、他者の役に立ちたいという意欲をもっています。心のこもった仕事をすれば感謝され、それがさらにいい仕事をしようという向上心を生みます。何らかの理由で本来の向上心が否定されたり抑圧される職場には、集団の病理があります。
 
労働組合問題の指摘
読売と朝日は労働組合の問題を示唆しています。それは重要な要因になっている可能性があると思います。しかし労組が根本原因ということはおそらくないと思います。労組は経営の写し鏡です。労組は経営に対する対抗勢力ですが、経営がだらしなく無責任だと、労組も次第に堕落していきます。
 
労組の本来の存在意義を尊重し、対等に遇し、毅然と経営の理念と戦略を実行する経営陣が何より求められます。しかし内部昇格をしてきた経営陣は、北海道のきびしい現実(「広大な営業エリアと急速に進む過疎(JR九州より1割長い路線で4割の人口)」「豪雪など寒冷地経費の重さ」)に対し有効な策をもてていないように見えます。結果、現場に規律を求めることもはばかれ、100%株主の国への依存でしのごうとしているのではないでしょうか。
 
JR北海道の本来の姿
JR北海道の抜本改革は、一企業の経営課題であるとともに、地域の生き残り戦略という大きな政治・行政の課題でもあります。JR北海道の現場職員は、本来は道民のために価値ある公共交通機関でありたいとの純粋な使命感とやりがいを持った人々であると信じます。本来の士気を引き出す経営のあり方に一日も早く戻れることを願います。
 
JR北海道は、本当は高い技術力と組織運営力があることを証明できるはずです。国がなすべきは、そうした本来の姿へ早期に回帰する支援です。使命感の火を灯す経営ができれば、悪循環はきっと、好循環に変わると思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. JR北社長ら75人処分 保線部署75%改ざん
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140121-OYT1T00750.htm
  2. 有名私大 値上げ続々 消費増税負担対策も
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140121-OYT1T01616.htm?from=navr
  3. ルネサス5400人削減 整理解雇も視野
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20140121-OYT1T01637.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 改ざん保線部署の7割 JR北海道、75人処分
    http://www.asahi.com/articles/ASG1P4SR4G1PIIPE01B.html
  2. 中川死刑囚 拉致を詳述 裁判員が質問も
    http://www.asahi.com/articles/ASG1L63D2G1LUTIL024.html
  3. 成長率1.7%に上方修正 日本の増税対策評価
    http://www.asahi.com/articles/ASG1P7T4RG1PUHBI00G.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 保線部署7割で改ざん OB含め75人処分
    http://mainichi.jp/select/news/20140122k0000m040123000c.html
  2. 北陸新幹線談合捜査へ 業者に聴取要請
    http://mainichi.jp/select/news/20140122k0000m040152000c.html
  3. 露大統領来日へ 安倍首相の招請受諾
    http://sp.mainichi.jp/shimen/news/m20140122ddm001030195000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 理系人材、産学で育成 技術革新力底上げ
    http://www.nikkei.com/article/DGXNZO65678330S4A120C1MM8000/
  2. かんぽ新学資保険認可 掛け金下げ貯蓄型に
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2103I_R20C14A1MM8000/
  3. 活躍の場一歩踏み出す 願いは生涯現役 シニアが拓く
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO65678430S4A120C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 辺野古移設 妨害備え特命担当 政府 代執行など対処方針
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140122/plc14012207500006-n1.htm
  2. 「竹島は日本領」江戸時代に定着 複数の学者、地図に記載/「日本海」表記も
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/140122/trd14012207330000-n1.htm
  3. JR北 75人大量処分 保線部署7割超で改竄
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140121/crm14012115270013-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 欠陥タンク延命図る 福島第一 漏水不安のボルト締め型
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012202000128.html
  2. 各陣営、政策出そろわず 都知事選 あす告示も
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012202000127.html
  3. 怪獣酒場で乾杯 3月中旬「地球人に開放」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012202000126.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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