2014.01.21 tue

2014年1月21日【新聞解説】歴史の岐路

2014年1月21日【新聞解説】歴史の岐路


【リグミの解説】

「第一次世界大戦の教訓」
フランス在住の国際ジャーナリスト土野繁樹氏の連続エッセー「フランス田舎暮らし」は、日本国内にいると見えにくくなるグローバル視点を教えてくれます。最近は、「歴史に学ぶシリーズ」とも呼ぶべきテーマを次々と発信しています。わけても今回の「第一次世界大戦の教訓」は白眉です(参照:リグミ・ポータル)。
 
今年は、第一世界大戦勃発から100年の節目の年です。私は、第一世界大戦はサラエボ事件が発端になったことは知っていましたが、ただ記号のように記憶していただけで、なぜオーストリア皇太子暗殺がトリガーになったのか、どうしてそれが初めての世界大戦にまで膨張しなければいけなかったのか、まったく理解できませんでした。というよりも、関心がありませんでした。100年前のことは、歴史の彼方の出来事でしかありませんでした。
 
100年前と酷似する現在
しかし土野氏の次の一文を読んで考えが一変しました。
 
「今から100年前の1914年、新年を迎えたヨーロッパは平和で未来への希望に溢れていた。貿易とテクノロジー(電話、蒸気船、鉄道)が世界を結びつけ、人々はグローバライゼーションの果実を味わっていた。20世紀を代表する経済学者ケインズはその当時のロンドンの暮らしを次のように書いている
 
『朝の紅茶をベッドで飲みながら、世界各地に商品を注文し宅配されるのを待つ』
『この状況は、日常的なことで、永続し、ますます便利になるだろう』。
 
これは庶民には高嶺の花のライススタイルだったが、100年前にすでにAmazon.com的世界があったのだ。後世の人々はこの時代を、郷愁を込めてベル・エポック(古き良き時代)と呼んだ。」
 
経済がグローバルに連結した結果、人々は「英国とドイツが互いに最大の貿易相手国だから戦争など起こるはずはない、と信じていた」そうです。これは今日の世相と酷似しています。これに加え、現代は人々の生活様式が似通り、相互のポップカルチャーが浸透しています。しかし土野氏によると、100年前の欧州でも、知識層はシェークスピア(英)、ダンテ(伊)、ゲーテ(独)、トルストイ(露)、ヴィクトル・ユーゴー(仏)の作品を読み、文化的アイデンティティを共有していたそうです。
 
人類は賢くなったか
100年の年月を重ねて、人類は以前より賢くなったのでしょうか。本日の朝日新聞と東京新聞は、1面トップで「普天間飛行場の辺野古移設問題」を扱っています。米軍基地というハードパワーに依存する安全保障のあり方は、福島の原発に依存する東京の姿と重なります。一方、読売新聞と産経新聞は、初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した安重根の記念館が中国黒竜江省ハルビン駅に解説されたことを批判する社説を掲げています。
 
立ち位置や主張の中味には、人それぞれに意見の違いがあると思います。しかし、東アジアの隣国同士である日中韓の3国は、互いのことを批判し嫌う言動を繰り返しているのは、どうみても健全とはいえません。第一次世界大戦は、どの国も戦争をしたくなかったのに、民族問題とナショナリズムがからみ、誰も大戦への導火線の火を消せませんでした。
 
国際政治学者イアン・ブレマーは、「二国関係のワースト10ランキング」の1位に日中関係を置いています。「歴史的な問題も抱えているが、尖閣諸島問題が過熱する中、両国は過去数十年で最も激しい議論の応酬を繰り広げており、新たな地政学的な緊張や衝突の危険性にもつながっている。世界第2位と3位の経済大国による対立は、世界にも大きな影響を及ぼす」という理由です(引用:ロイター)。
 
 
「もつれた縄を解きほぐす第一歩は、あの小さな無人島をめぐって国家の威信をかけて戦争をするなど愚かなことだ、と日中が確認・合意することだろう」と土野氏はエッセーの末尾に記しています。相手の顔を見てしっかり対話をする。それが政治家の仕事です。歴史は、「軍人は軍事的な判断しかしない。政治の判断は政治家しかできない」ということを明示しています。ハードパワーに依存することはとても危険です。最高のソフトパワーは一国を率いる政治的指導者の対話力です。100年経った今、私たちは歴史の岐路に立っています。

(文責:梅本龍夫)



  1. 微小がん治療器 開発支援 政府方針 高精度 患部に放射線
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140121-OYT1T00121.htm?from=navr
  2. イラン核縮小 履行開始 欧米 制裁緩和へ
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140121-OYT1T00011.htm?from=navr
  3. ソチへ「ニッポン」結束
    http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2014/topic/20140120-OYT1T01025.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 名護と国 深まる溝「辺野古ノー」に政権一転、強硬姿勢
    http://www.asahi.com/articles/DA3S10935848.html?iref=com_top_pickup
  2. 宮城に3候補地提示 汚染ごみ 最終処分場、地元反発
    http://www.asahi.com/articles/ASG1N5GBYG1NUCLV00L.html
  3. JR北、3社員解雇へ 数値改ざん 社長ら数十人処分
    http://www.asahi.com/articles/ASG1N5VQLG1NUTIL039.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 指定廃棄物最終処分 宮崎に3候補地 調査要請 地元市町は難色
    http://mainichi.jp/select/news/20140121k0000m040126000c.html
  2. ソチへ一意専心
    http://sportsspecial.mainichi.jp/news/20140121ddm001050145000c.html
  3. ウラン20%濃縮停止 イラン 共同計画に基づき
    http://mainichi.jp/select/news/20140121k0000m030111000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 投信 長期運用志向に 毎月分配の比率低下
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC20015_Q4A120C1MM8000/?dg=1
  2. 経営監視へ第三者委 国交省 JR北海道に指示 きょう処分
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGC2001B_Q4A120C1MM8000/
  3. 最期の時まで憂いなく めざせ「PPK」 シニアが拓く
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO65615080R20C14A1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 不動産指数を実用化 政府、海外資金に対応 IMF指針活用
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140121/biz14012107510003-n1.htm
  2. 葛西主将「一意専心」五輪結団式
    http://sankei.jp.msn.com/sports/news/140120/oth14012018590023-n1.htm
  3. 宮城3市町 提示 指定廃棄物の処分場候補 安倍政権初
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140120/plc14012017170019-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 辺野古移設強行へ 政府、名護の民意無視
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014012102000147.html
  2. 沖縄への恫喝では 秘密保護法 言わねばならないこと
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2014012102000151.html
  3. 脱原発・鎌田氏ら 細川氏を支援 都知事選
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012102000148.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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