【リグミの解説】
国家安全保障戦略
安倍政権は、外交・安全保障の基本方針を包括的に示した初の国家安全保障戦略を閣議決定しました。読売新聞と産経新聞が社説で賛意を示し、朝日新聞と毎日新聞、東京新聞が批判しています。
<読売新聞> 国家安保戦略 日本守り抜く体制を構築せよ
・ 日本の安全保障環境は近年、急速に悪化している。東アジアの平和と安全の確保へ、包括的かつ体系的な指針を初めて定めた意義は大きい。
・ 日本単独で自国の安全を維持するのは難しい。世界と地域の平和に貢献することで、周辺情勢は改善され、米国など関係国との連携が強化される。
・ そのために重要なのが、「積極的平和主義」の推進だ。「積極的平和主義」の具体化や日米同盟の強化には、集団的自衛権の行使を可能にすることが必要だ。
<朝日新聞> 安倍政権の安保戦略―平和主義を取り違えるな
・ 安保戦略は本来、外交と防衛を組み合わせた安全保障の見取り図を示す意味がある。政権の関心は軍事に偏っており、バランスを欠いた印象が否めない。
・ 安倍首相が唱え始めた「積極的平和主義」は、憲法9条による縛りを解き、日本の軍事的な役割を拡大していく考え方のことだ。
・ 軍事偏重の動きは、近隣諸国への敵対的なメッセージにもなる。軍拡が軍拡を呼ぶ「安全保障のジレンマ」に陥れば、かえって地域の安定を損なう。
<毎日新聞> 安保戦略と防衛大綱 むしろ外交力の強化を
・ 必要な防衛力を整備するのは当然だが、中国に対抗して東アジアの軍拡競争を招くようでは困る。外交力を強化し、周辺諸国との関係を改善する努力を怠ってはならない。
・ 「我が国と郷土を愛する心を養う」ことが盛り込まれた。愛国心は大切だが、国の愛し方は人それぞれだ。学校教育での押し付けや、従わない者の批判は容認できない。
・ 「対話のドアはオープン」というだけでなく、対話への環境づくりにもっと積極的に取り組むべきだ。外交と防衛はバランスよく車の両輪で進めなければならない。
<産経新聞> 安保戦略と新大綱 中国見据え守り強めよ
・ 一国平和主義の殻に閉じ籠もらず、国際社会の平和に貢献しようという「積極的平和主義」は、戦後日本の防衛政策の転換でもあり、高く評価したい。
・ 海空における優勢を保つことが明記されたことも画期的だ。安倍政権が普通の民主主義国らしい安全保障体制を整えようとしていることも支持したい。
・ 菅義偉官房長官は会見で、集団的自衛権の行使容認は「来年度以降の課題だ」と述べた。特定秘密保護法制定に伴う内閣支持率の低下が影響しているとしたら残念だ。
<東京新聞> 国家安保戦略を決定 平和国家の大道を歩め
・ 安倍晋三首相が主導した国家安全保障戦略は、戦後日本が歩んできた「国のかたち」を変質させかねない。「平和国家」は踏み外してはならない大道だ。
・ 外交よりも「軍事」に重きが置かれていることは否定できない。この「国のかたち」を変質させかねない要素の一つが武器輸出三原則の見直しである。
・ 中国の軍事的台頭に毅然と対応することは大切だが、挑発に「軍備増強」で応じれば、軍事的な緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。「戦略的忍耐」も必要だ。
防衛力と外交力のバランス
安全保障は防衛力と外交力の両輪で形成する。その大前提は各紙とも共有したうえで、防衛力の強化を積極的に評価するのが読売と産経です(掲載省略しましたが、日経も基本的に評価しています)。一方、朝日、毎日、東京の3紙は、外交力の強化が欠落し、もっぱらハードな防衛力強化に偏る危うさを批判しています。
「愛国心」を説くまえに
筆者が一番気になったのが、安全保障戦略に「愛国心」が明記されたことです。国を愛することは基本であり、自然なことです。しかしそれを今ここで明記しなければならない理由はなく、隠された意図を懸念します。
東京新聞の12月14日の特集面に、ヒトラーの右腕だった高官が戦後の裁判で証言した言葉を紹介しています。
「国民は戦争を望まない。しかし決めるのは指導者で、国民を引きずり込むのは実に簡単だ。外国に攻撃されつつあると言えばよい。それでも戦争に反対する者を、愛国心がないと批判すればいい」
毎日は、積極的平和主義とは「米国の相対的な力の低下を日本の役割拡大で埋めようということ」と指摘しています。それは戦略判断です。戦略の元にあるのは国家の理念です。国家を愛することを強要する前に、どのような国家をめざすのか、おおもとの理念を国民に正直に語るべきではないでしょうか。
(文責:梅本龍夫)
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