【リグミの解説】 本日の1面トップ記事に共通する隠れたテーマは、「手続きの妥当性」です。原発の安全性、オスプレイの安全性、線量調査の正確性、国民の意見の聴取法の妥当性など、テーマは違いますが、きちんと手続きをし、情報を公開し、説明する、という基本が求められています。間違いがあれば認め、迅速に対応し、レベルアップを図る。人間は間違いを犯す、ということを前提に、どうやったら間違いを減らせるか考え、同時にゼロにできない間違いが発生したときを想定し対応策を考えておく。そういう実践的なアプローチを取ることで、組織全体も個々人も、鍛えられていくのだと思います。
讀賣新聞
【記事】 原子力規制委員長、田中氏
- 政府は19日、9月に新たに発足する新たな原子力規制組織である「原子力規制委員会」の委員長を含む5人の委員の人事案を固めた。
- 初代委員長には、放射線物理が専門の田中俊一氏(高度情報科学技術研究機構顧問)を起用する。任期は5年。他の委員は、中村佳代子氏(日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査:任期3年)、更田豊志氏(日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長:任期3年)、大島賢三氏(元国連大使:任期2年)、島崎邦彦氏(地震予知連絡会会長:任期2年)。
- 規制委の委員は、原子力発電所の新たな安全基準を策定し、原発再稼働の適否を判断する重責を担う。政府は、原子力事業者などとのしがらみのない実務派をそろえた。20日に国会に提示し、衆参両院で同意が得られれば、首相が任命する。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【リグミのコメント】 「原子力ムラ」という表現が示唆するものは、国と専門家と事業者の談合です。「利益誘導」「異物の排除」「隠ぺいと操作」といった心象も与える言葉です。
18日には、全国の18人の弁護士が、内閣府原子力委員会による秘密会議問題で、最高検公安部に告発状を提出しました。告発人の弁護士は、「反対派を封じ込めるために秘密会議を開いていた。民主主義の根幹である『手続きの適正さ』にかかわる問題」、「告発は5人の原子力委員を解任しない政府への抗議だ」と述べています(毎日新聞)。
原子力エネルギー政策を決める上で、最低でも3つのことをする必要があると思います。
①「原子力ムラ」を解体すること、②原発事故当事者の責任を徹底追求すること、③核燃料サイクル政策のあるべき姿を根本から見直し、核廃棄物の最終処理方法を決定すること。
今回の原子力規制委員会の設置と委員の選定によって、独立性と専門性と見識を備えた組織が機能しだし、「原子力ムラ」を解体する最初の一歩となることを期待します。
朝日新聞
【記事】 オスプレイ事故58件
- 内容沖縄への配備が予定されている米軍の新型輸送機オスプレイに関連する事故が、量産決定後の2006~2011年の5年間に58件起きていた。米軍の資料で判明した。内訳は、クラスA(重大事故)が4件、クラスB(中規模事故)が12件、クラスC(小規模事故)が42件。
- 防衛省は、地元自治体に過去の重大事故については説明していたが、全体の件数は明らかにしていなかった。
- オスプレイは23日にも岩国基地に陸揚げされる予定で、沖縄県は政府に詳細な説明を求める方針だ。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 線量ネット調査、活用せず
- 東京電力福島第1原発事故を受け、独立行政法人・放射線医学総合研究所(放医研)が福島県民向けにインターネット経由で被曝線量を推計できるシステムを開発したが、県側が「不安をあおる」と反対し、導入が見送られていた。毎日新聞が情報公開請求で入手した情報で判明した。
- 公害の調査に詳しい津田敏秀岡山大学院教授(疫学)は、「インターネットを使う調査は大量のデータを早く集めるメリットがある。今回の事故は被災地が広大で、対象者も多数に上る。記憶が鮮明なうちに早く調査する必要があり、ネット調査は有効だっただろう。『不安をあおる』などという理由で有効な調査を実施しないようでは、むしろ不満や不信を高める結果になる」と指摘し、県側の対応に強い疑念を示している。
- 「住民の不安をあおるような説明会は遠慮願いたい」と発言した福島県保健福祉部の幹部は、毎日新聞の取材に対して「説明会に反対する発言はしたが、システム自体に反対する発言はしていない。何と発言したかは覚えていない」と回答している。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 国内造船、10年ぶり能力減
- 内容三井造船や川崎重工など造船大手が建造能力を削減する。削減規模は、大手4社で120万総トン程度となる。これは昨年の国内建造量の約7%に当たり、造船業界の能力削減は10年ぶりとなる。
- 世界的に船舶の過剰感が強まったことに円高が加わり、受注環境が厳しい背景がある。
- 造船各社は今後、国内生産は付加価値が高い船に特化し、海外は新興国企業と組んでグローバル生産体制を構築するなど、事業構造の転換を急ぐ。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 原発聴取会、業者任せ
- 政府のエネルギー・環境会議が将来の原発比率をどれぐらいにするか国民の意見を聴く会をめぐる問題で、よく検討しないまま、運営を業者に外注した政府のずさんな対応が浮かんだ。発注者は経済産業省資源エネルギー庁で、広告代理店の博報堂が7854万円で落札した。
- 入札仕様書からわかった主なことは5つある。①全国20ヵ所程度の開催が11ヵ所に半減、②1ヵ所の参加者300人程度が100~200人程度、③会場アンケート集計、分析は広告代理店任せ、④予定していた手話通訳の配置はなし、⑤新聞報道の内容を報告するように広告代理店に依頼。
- エネ庁の担当者は、「発注時はどのくらいの規模にするのかきちんと決まっていなかった。20ヵ所なら予算が足りなくなることはないだろうと判断した」と、見切り発車的に発注したことを認めた。定員が大幅に減ったことについても、「契約後に会場の確保のしやすさなどを考慮し減らした」と説明する。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【リグミのコメント】 未来のエネルギー政策について、「国民的議論」をすることは不可欠であり、その手法のひとつとして意見聴取会を開催しようという政府の意図は、良いと思います。代表者の意見表明と、参加者のアンケート調査をするという考え方も、概ねだ妥当といえます。ただ、国論を二分する大きなテーマであり、「国民的議論」を標榜する以上は、もう少し周到な準備が必要でした。今からでも遅くありません。やりながらどんどん修正を図り、納得性の高い「場づくり」を進めてもらいたいと思います。
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