【リグミの解説】
特定秘密保護法案の審議開始-新聞の論調の比較(サードビュー)
特定秘密保護法案の国会審議が始まりました。同法案について社説や批評記事を掲載した新聞の論調を比較します。
<読売新聞>
読売は社説で「国の存亡にかかわる安全保障上の機密は、守られなければならない」としたうえで、「重要なのは、一定期間を過ぎれば、原則公開し、後世の歴史的検証を受けるという視点である」と指摘しています。
<朝日新聞>
朝日は、1面の論説主幹の解説で、「『特定』とうたいながら、法案は秘密にする情報をきちんと『特定』していない」と指摘。同記事で、「情報統制が行き渡った独裁国家は、何が問題にされるかわからない不安と、だれが味方で敵かわからないという相互不信でよどんでいた」とふりかえっています。
そして社説では、「米国では、公文書館の情報保全監察局長に機密解除の請求権を与えるなど、政府の恣意的な運用に幾重もの歯止めがある。こうした手立てのない特定秘密保護法案はまず取り下げる」と主張。社を挙げて、特定秘密保護法案は廃案にすべきと主張しています。
<毎日新聞>
毎日は社説で「重ねて廃案を求める」と掲げ、「この法案は、憲法で国権の最高機関と位置づけられる国家が、『特定秘密』の指定・更新を一手に行う行政をチェックできない」と指摘。「法案概要が公表されたのが9月で、今から議論を始めてこの国会で成立を図ろうとすること自体、土台無理な話だ」と批判しています。
<東京新聞>
東京新聞は、特定秘密保護法案に反対するキャンペーンを張っており、連日関連記事を1面を中心に掲げています。本日は「国民の目、耳、口をふさぐな」というタイトルで、官邸前での市民の抗議運動を大きな写真つきで載せています。社説では「何よりも深刻なのは国会議員さえ処罰し、言論を封じ込めることだ。特定秘密については、国政調査権も及ばない。行政権のみが強くなってしまう」と、毎日と同種の指摘をしています。
<ニューヨークタイムズ>
海外に目を転じると、米ニューヨークタイムズ紙が「
日本の反自由主義的な秘密保護法」というタイトルの社説を掲載。「何が秘密に当たるかのガイドライン(定義)を欠くため、政府は不都合な情報は何でも秘密にできる」「厳しい罰則規定により、官僚は情報開示のリスクを冒すより、書類に機密のラベルを貼るだろう」「同法案が通ると、特定秘密の秘匿期間は無限に延長されてしまう」と批判しています。
元改革派知事の意見
昨日、元官僚で知事と国務大臣を経験された方の講演を聞く機会がありました。知事時代は「情報公開」を掲げて改革に取り組んだのですが、このミッションを職員と共有し理解を得るのに半年ぐらいかかったと言います。今般の特定機密保護法案に懸念を示す出席者からの質問に、つぎのように回答されました。
・ 県政には、警察など一部を除き基本的に機密はないが、国政に外交、防衛、治安など、秘密にすべき情報がある。問題は誰がチェックするかだ。法案は大臣がするから問題ないという立場だが、実際は大臣にチェックする力はない
・ 法案の建前は、官僚を罰する規定になっているが、現実に運用を始めれば、官僚が政治家や国民を排除し、官僚自身を守る法律になっていく
・ 対策としては、第三者機関を設置し、特定秘密の設定の仕方をチェックすべきだ。またどのよう秘密情報も、30年後には全部出すことが肝要だ
・ 課題の多い法案なので、「5年の時限立法」とすることを提案したい。そして5年後に運用を検証し、あるべき姿を再考するのが現実的だ
上記は傾聴に値する意見だと思います。
与野党の活発な討論を
与野党には、国会で同法案の活発な討論をすることを期待します。賛成・反対を主張するだけでなく、同法案をどうすれば役に立ち、後顧の憂いのないものにできるか具体的に徹底して議論じてもらいたいと思います。以下は討論のための案です。
(1)特定秘密の定義と設定ガイドラインの明確化、(2)第三者機関のチェックが二重三重に働く機構の設計、(3)どのような情報も例外なく秘密期間を有限とすること、(4)行政情報の書類は秘密のレベルにかかわらず破棄せずアーカイブ化する、(5)特定秘密の定義・運用と情報公開の定義・運用をセットで法案化する―。「時限立法」も、現実的な選択肢であると思います。
(文責:梅本龍夫)
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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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