【リグミの解説】
エレキブーム
日本のエレキギターが一大ブームになったのは、1960年代でした。「ザ・ベンチャーズ」の来日に刺激され、テレビ番組『勝ち抜きエレキ合戦』や映画『エレキの若大将』も生まれました。エレキとは、言うまでもなくエレクトリックの略で、電気のことです。「エレキ業界」は、日本の高度成長をけん引した産業のひとつです。
昨日の「
リグミの解説」で触れた、高度成長期に一般家庭に一気に普及した三種の神器「テレビ、洗濯機、冷蔵庫」も「エレキ製品」です。
高度経済成長の黎明期の語感にあふれる「エレキ」という単語を、電機業界で指導的役割をはたしてきた経営コンサルタントが使うのを聞いたことがあります。1990年代初頭のことでした。
高度成長も、安定成長も、バブル景気もすべて終わり、長い構造不況に突入し始めた時期に聞いた「エレキ」という言葉には、隠語めいた業界用語の響きがありました。自分たちが達成してきたことへのプライドと、これから先が見通せず、過去を懐かしむニュアンスとが混じっているように感じました。
「エレキ業界」の業績底入れ
本日の日経新聞1面トップ記事は、「電機大手、業績底入れ」です。電気8社のうち6社が営業利益の今期見通しで増益となります。日立5000億円(前期比18%増)、東芝2900億円億円(前期比50%増)、パナソニック2700億円億円(前期比68%増)、三菱電機2200億円億円(前期比45%増)、富士通1400億円(前期比59%増)、シャープ800億円(黒字転換)。ソニーとNECも黒字ですが、前年は下回る予想です。
この記事で注目したのが「最高益」を達成した時期です。日立1990年度、東芝1989年度、パナソニック1984年度、三菱2007年度、ソニー1997年度、富士通2000年度、NEC1995年度、シャープ2006年度―。パナソニック、日立、東芝といった大手はそろって日本経済が頂点を打った時期と重なります。ソニーやNECなどはもう少しあとにピークアウトしました。一方、日本の猛追に怯えていた米国経済はIT化などで復活し、日本からの技術と経営手法を学んだ韓国の「エレキ業界」が台頭しました。
電気8社の業績回復の理由は、「リストラで体質改善」「国内外の景気持ち直し」「円安の追い風」と日経の記事は解説しています。行き過ぎた円高が日本の輸出産業を苦しめ、体力を奪っていったのは事実です。大胆な戦略転換を図るよりも、こつこつと努力を続け、なんとか現状を維持しようとする日本的経営の負の側面も出ました。いよいよ現状維持がむつかしくなると、雇用に手をつけました。経営の三種の神器だった「年功制、終身雇用、企業別労働組合」を手放し、大胆な人減らしをしました。韓国企業の躍進をかげで支えたのは、日本企業から移籍した「助っ人技術者」でした。
「エレキ」は日本社会の縮図
「エレキ業界」は、戦後日本の社会の縮図です。国を復活させる一点突破の分野にみんなで集中し、力を合わせてみんなでがんばり、経済成長の果実をみんなで分け合い、気づくと「世界一」になっていました。そこで有頂天になり、同時これからどうしていいかわからなくなりました。バブル後の長期低迷は、ある意味、社会的な「燃え尽き症候群」でした。
しかし、企業は永続を前提としており、燃え尽きるわけにはいきません。そこで雇用に手をつけました。しかし、米国流のドライなやり方はとれず、「追い出し部屋」と称される人員削減部署をつくるなど、ここでも「日本的な手法」を取りました。非正規雇用という便利な調整弁を多用し、正規雇用を前提とした企業別労働組合の存在意義も骨抜きになりました。
「みんな」から「一人ひとり」へ
ザ・ベンチャーズのリーダーのドン・ウィルソンは今年80歳です。若大将シリーズを演じた加山雄三は76歳。「エレキ」も年を取りました。エレキ企業は、エレキがエレクトロニクスに代わり、さらに新しいものへと進化していくのに合わせ、若返りと革新を続ける必要があります。その原動力は「人」です。
「新エレキ業界」は、再び日本社会の縮図になるのでしょうか。もう一度「人」を大切にすることを思い出す必要があります。しかし今度は、横並びの「みんな」ではありません。多様性をもった「一人ひとり」の内なる創造性を開花させる組織に再生させること。それが「エレキ業界」が「新エレキ業界」になる基本条件です。
(文責:梅本龍夫)
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