2013.09.26 thu

新聞1面トップ 2013年9月26日【解説】JR北海道復活のカギ

新聞1面トップ 2013年9月26日【解説】JR北海道復活のカギ


【リグミの解説】

JR北海道脱線事故の続報
本日も、JR北海道の脱線事故の続報が紙面を占めています。そんな中、昨日の毎日新聞3面「クローズアップ2013」でのJR北海道の企業体質の分析記事が参考になりました。
 
・ 旧国鉄各社の中で過疎地域を走る路線が多く、除雪など膨大な費用がかかり経営基盤が弱い
・ このため国は経営安定基金という持参金を持たせた。基金投入という第三セクター的な経営に慣れ切り、経営責任があい  まいになっている
・ 赤字経営が人材採用にも影響し、現場の責任者となるべき40代が9.5%と極端に少ない
・ ベテランが退職する中、若手人員の採用が抑えられ、技術の伝承がされにくい
・ 安全軽視の企業風土があり、設備の老朽化を放置し、メンテナンスに十分な費用を充ててこなかった
・ 北海道内唯一の鉄道会社であるため、過信、慢心があった
 
これを読むと、JR北海道は、「困難なマーケットである北海道を任された」という特殊性にあぐらをかいてきたことがわかります。民営化当初は、強く健全な企業になろうという動機を持ったと思います。それが長引く困難の中で、いつか漫然とした経営が組織全体に浸透していったと想像されます。
 
国策会社の体質問題
旧国鉄は国策会社でした。それが分割民営化で、私鉄や他の交通手段と競争する民間企業への転換を迫られました。民営化当初、JR東日本、西日本、東海以外は、ローカルマーケットの状況から、黒字化が難しいのではないかと心配されました。結果は、たとえばJR北海道とほぼ同じ営業キロ数のJR九州は、営業黒字を確保しています(毎日新聞)。
 
JR北海道には、経営再建前の日本航空や、電力会社の原発事業に共通する体質問題があるように見えます。自分たちの競争力のなさを他人のせい(マーケットの特殊性など)にし、組織体質の問題を見ようとしないことです。そして国策会社(国の事業を行っている、国が責任を負っている)という立場が、ゆがんだプライドやおごりを生んでいる面もあると思います。
 
一人のヒーローではなく
東京新聞の本日の1面トップは、「リアル!?『半沢直樹』」です。「理不尽な上司」「派閥」「出向」といった番組の内容は、結構リアルで「ノンフィクションの近い」という中堅行員のコメントを載せています。「銀行員は正論を言いにくい」中、主人公が「倍返しだ!」の決め台詞で銀行の不正をあばくヒーローものに人気が集まりました。
 
実際の企業組織に必要なものは何でしょうか。JALを再建に導いた京セラの稲盛和夫氏は、次のように語っています。
 
「幹部の中には高学歴の方が多かったが、経営者としての誠実さとか一生懸命さが薄いような気がした。頭が良くてスマートだが、それだけでは経営者として上手くいかない。会社経営というのはトップの人だけがいくら頑張っても上手く行くものではない。全社員がいかに気持ちを一緒にすることが出来るか。全従業員の心を掴む。これが会社経営」(「カンブリア宮殿」より、引用:torisedo.com)。
 
 
経営理念という「夢」を一緒に実現する
稲盛氏は、経営者塾の盛和塾で、経営者たちに「理念から絶対にぶれるな」と教えるそうです。JALでも、フィロソフィー(理念)の大切さを常に説きました。新生JALは、企業理念の冒頭に「全社員の物心両面の幸福を追求する」と掲げています(引用:jal.com)。
 
 
誰かひとりがヒーローになるだけでは企業は再生できません。トップがまず変わること。そしてトップが自己犠牲と献身の姿勢を自ら示し、全従業員を巻き込む活動を展開する。その理念、哲学の軸を決してぶらさない。こうすることで、疑心暗鬼や不正や諦めが蔓延する職場は、徐々に、そして確実に、変化していきます。
 
企業の理念とは、企業に所属する人たちが共有する「夢」です。北海道のために鉄道人としての誇りをかけて、「JR北海道の大きな夢」を実現したい。そう思えるようになったとき、JR北海道は復活します。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【政府広報】 「集団的自衛権、海上輸送も 中東で機雷除去想定 政府、解釈見直しで 案件ごとに国会承認」
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130926-OYT1T00042.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「脱線レール幅37ミリ拡大 JR函館線 枕木が劣化か」
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130926-OYT1T00135.htm?from=ylist
  3. 【企業広報】 「汚染水漏れ箇所、特定か 福島第1 タンク底、隙間2ヵ所」
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130925-OYT1T01060.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「レール幅拡大、基準の倍 JR北海道 脱線現場、37ミリ 国交省、事業改善命令」
    http://www.asahi.com/national/update/0925/TKY201309250263.html
  2. 【政府広報】 「車取得税軽減も検討 消費増税の経済対策案」
    http://www.asahi.com/politics/update/0926/TKY201309250624.html
  3. 【司法広報】 「元特捜部長ら再び有罪 大阪高裁判決 FD改ざんを隠蔽」
    http://www.asahi.com/national/update/0925/OSK201309250038.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【政府広報】 「バルサルタン 厚労省、製薬会社調査へ 論本操作 誇大広告の疑い」
    http://mainichi.jp/select/news/m20130926k0000e040148000c.html
  2. 【政府広報】 「介護保険 50万人、2割負担に 厚労省提示 利用者の1割」
    http://mainichi.jp/select/news/20130926ddm001010046000c.html
  3. 【独自取材】 「防潮堤の3割、基準より低く 被災3県・要望反映に差」
    http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130926ddm001040056000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【政府広報】 「介護保険、2割負担に上げ 夫婦年収360万円メド 厚労省案 高齢者、5人に1人対象」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2503W_V20C13A9MM8000/?dg=1
  2. 【連続企画】 「賃金伸びず需要膨らむ 沈まぬ100円ショップ ~物価考 眠れるヒント3.」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDF1300O_T10C13A9MM8000/
  3. 【企業広報】 「大和証券、70歳まで雇用 個人向け営業 NISAにらみ拡大」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGD2503Y_V20C13A9MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「理不尽な上司、派閥、出向 リアル!?『半沢直樹』 銀行員 『正論は言いにくい』」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013092602000138.html
  2. 【連続企画】 「屈しない、一人でも ~憲法と、 第6部 福島の希望6.」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013092502000111.html
  3. 【独自取材】 「浜岡再稼働申請へ 中部電 4号機、年度内に」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013092602000137.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ